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【連載】看護学原論に立ち戻って考える!KOMIケアで学ぶ看護の観察と看護記録

第10回 KOMIケアを実践しよう―①「持てる力」を観察する方法とは―

  • 公開日: 2016/1/8
  • 更新日: 2021/1/6

そもそも「看護」って何だろう?何をすれば看護といえるのだろう?本連載では、看護とはどのようなことであり、どのような視点で患者を観察し、また記録するのかについて、ナイチンゲールに学びながら解説します。


KOMIケア理論では「看護の目的論(看護のものさし)」「看護の対象論(対象の性質を明らかにする)」「看護の方法論(実践)」の3つの構成要素を全体像とする看護学原論を提唱しています。前回までお話した、5つの看護のものさしは目的論のベースになるものです。

さて今回からは、実際にその看護のものさしを頭の中に入れながら実践を始めてみましょう。第8回で紹介したKOMIケアシステム=KOMIチャートシステムがすべての指針になっていきます。

観察をするためのKOMIチャートシステムの使い方

KOMIチャートシステムとはいわゆる「記録システム」のことです。看護実践の経過と結果を記録しておくための一連の記録用紙セットですが、同時にKOMIケア理論に基づく看護過程の展開が、より的確にまたスムーズに展開されるように導いていく実践プログラムでもあります。

この記録システムにそって看護実践を進めていけば、情報収集、アセスメント、記録や評価までの一連の看護過程を迷わずに展開できるように設計されています。

「観察に始まり観察に終わる」看護過程図

看護過程図

  1. 観察・アセスメント:患者を観察し、患者の状態を看護的に読みとる。ここが「看護過程」の始まりであり、終わりでもある。
  2. 課題の抽出:観察された事象から解決すべき課題を明確にして優先順位を見極める。
  3. 援助計画の立案:上記で抽出した解決すべき課題の解決策を考える。
  4. 実践・実施:援助計画に沿ってケアを行う。
  5. 記録・評価:ひとつのケアを実施したら、ケアの状況や患者の状態を記録する。課題を解決できたかを評価する。

KOMIは、Kanai Original Modern Innovation の頭文字をつなぎ合わせたものですが、そこにはナイチンゲール思想を継承し、ナイチンゲールが発見した看護の原理を主軸にすえた「金井独自の革新的かつ最新のもの」という意味が込められています。ですから「KOMIチャートシステム」という記録システムは金井方式による「看護過程展開」のシステムであるといえるのです。

KOMIチャートシステムで「持てる力」や「消耗している事柄」を観察する

第1ステップ「基本情報シート」を使ってフェイスシートを作る

入院時や入所時に必要な「フェイスシート」は、どこの施設でも使用されていると思いますが、KOMIケアの「基本情報シート」(図1)は、学生が基本情報を把握しやすいことを主眼に作成されていますから、これを使用します。

基本情報シート 基本情報シート②

「基本情報シート」の作成が終了した段階で、得られた情報を整理することになりますが、この段階で「看護の5つのものさし」を使ってアセスメントしていきます。つまり得られた情報について、下記の質問に答える形で「基本情報シート」の下半分の欄に整理して記載します。

①その人の生命力を消耗させている(第5回第6回)要因はないか?(これはマイナス情報であり、同時に「解決すべき課題」に相当します)

②その人の「持てる力」「健康な力」が今、どのような形で現れているか?(これはプラス情報であり、同時に「ケアに活用できる要因」に相当します)

「基本情報シート」から得られた情報の中にも、プラス方向の情報とマイナス方向の情報は存在しますので「看護の5つのものさし」の頭で「フェイスシート」の中の情報を整理しておくのです。

患者の観察方法の基本

前回も解説したようにナイチンゲールが考える基本的技術とは「観察の技術」です。「観察の技術は、現代の看護教育においても、とても大切なものとして教えられています。それは看護過程を展開するにあたっての土台となる技術だからです。

>しかしナイチンゲールが看護改革を始めた当時は“観察力を身につけた看護師”は、ほとんどいなかったようです。

そこで、ナイチンゲールは次のように述べています。

看護師に課す授業のなかで、最も重要でまた実際の役に立つものは、何を観察するか、どのように観察するか、どのような症状が病状の改善を示し、どのような症状が悪化を示すか、どれが重要でどれが重要でないのか、どれが看護上の不注意の証拠であるか、それはどんな種類の不注意による症状であるか、を教えることである

『看護覚え書』(現代社)p.178,2011.

これらすべては、看護師の訓練のなかの最も基本的なものとして組み入れられなければならない

『看護覚え書』(現代社)p.178,2011.

この観察方法の基本は、『看護覚え書』第13章に書かれていますが、本書が出版された1860年には、世界ではじめての看護訓練学校として「ナイチンゲール看護学校」が創設されました。当時の看護学生たちもこの『看護覚え書』の第13章を読んでいました。

次回は、KOMIチャートの使い方「第2ステップ」と「観察の目的」を解説していきます。

ナイチンゲールKOMIケア学会」同学会は、理事長である金井一薫がナイチンゲール思想を土台にして構築した「KOMIケア理論」により、現代の保健医療福祉の領域において21世紀型の実践を形作り、少子高齢社会を支える人材の育成に寄与することを目指します。

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