お気に入りに登録

【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第16回 せん妄の治療やケアはどうするの?④薬物治療について―内服薬―

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

Drinoue yubi3

大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

せん妄への内服薬はどう違う?

井上先生:「いよいよ今回が最後の講義になります」

看護師さん:「しっかり勉強します!」

井上先生:「では、今回はせん妄の薬物治療のうち、内服薬について解説します」

せん妄への内服薬説明表

井上先生:「薬剤を選択する上で、まず興奮の程度を評価します。興奮が軽度な場合、例えばゴソゴソと落ち着きがなかったり多弁傾向を認める程度であれば、レスリン(デジレル)を用います」

看護師さん:「レスリン(デジレル)は第11回の講義でも出てきた薬剤ですね。あの時は、せん妄ハイリスク患者の不眠に用いるという話でした」

井上先生:「よく覚えていましたね。レスリン(デジレル)はせん妄ハイリスク患者の不眠だけでなく、実際にせん妄を発症した場合でも、興奮が軽度であれば有効と考えられます。本来は抗うつ薬ですが抗うつ効果は少なく、むしろ適度な鎮静効果を有する薬剤です」

看護師さん:「半減期が短いため翌日への持ち越しを避けることができるのですよね。では、興奮が決して軽度でない場合の薬剤選択について教えて下さい」

井上先生:「興奮が中等度以上の場合、例えば易怒的で暴力が出るなどのケースでは、抗精神病薬を用いることになります。臨床現場では、セロクエルかリスパダールのいずれかを使うことが多いようです」

看護師さん:「うちの病棟でもよく使われていますが、今ひとつ違いがわかりません。ぜひ教えて下さい」

井上先生:「では、順に説明しましょう。 いずれも抗精神病薬ですが、セロクエルは鎮静効果が強く、リスパダールは幻覚・妄想に効果を発揮する薬剤です。ですので、興奮が強いせん妄の場合は、十分な鎮静効果を有するセロクエルを第一選択とするのがよいでしょう」

看護師さん:「セロクエルの特徴を教えて下さい」

井上先生:「セロクエルは鎮静効果は強いのですが半減期は短いため、翌日への持ち越しを避けることが可能です。ただし、糖尿病の患者には投与が禁忌ですので、確認しておく必要があります」

看護師さん:「では、リスパダールの特徴も教えて下さい」

井上先生:「リスパダールは幻覚・妄想に対する効果が強いので、そのような症状が目立つせん妄に特に有用です。幻覚症状の確認は第3回の講義で説明しましたね。
あと、液剤は口腔内でも一部吸収され、即効性が期待できるため、頓服として大変有用です」

看護師さん:「なるほど。それぞれ薬の特徴について、よく理解できました。副作用についてはどうでしょうか?」

次ページは薬の副作用について解説します。

ページトップへ