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【連載】看護に役立つ生理学

第31回 脂質 LDL・HDLと動脈硬化

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

臨床的には動脈硬化の危険因子として否定的に語られることの多い脂質は、本来は生体に不可欠な構成要素であり、重要なエネルギー源でもあります。今回はこの脂質について理解を深めましょう。


【目次】


「脂質」と「脂肪」

脂質に関連する用語には「脂質」「脂肪」「脂肪酸」など、紛らわしいものがいくつかあります。

最も広い範囲を指す言葉は「脂質」(lipid)であり、水と混じり合いにくい物質の総称です。この中に、中性脂肪やコレステロールを初めとしたさまざまな物質が含まれます。

「脂肪」(fat)は狭い意味では中性脂肪のみを指しますが、「脂質」と同様の意味で用いられることもあり、やや適用範囲の曖昧な用語です。「脂肪酸」も脂質のひとつですが、脂質を分解して得られる物質(誘導脂質)であり、さまざまな脂質に共通する構成要素となっています。

疎水性と親水性

「脂質」とひとくちに言っても多種多様な物質が存在し、その生体における機能もかなり異なっています。

それでもしばしば一括して扱われるのは、この「水と混じり合いにくい」という共通の性質が、脂質の生理学を理解する際に、どこまでもついて回るためです。

この性質を、「水を疎んじる(うとんじる)性質」という意味で「疎水(そすい)性」呼び、逆の性質を「親水性」と呼びます。個々の物質の細かい化学構造に深入りする必要はありませんが、脂質の疎水性がどこから来るのか、そこだけは詳しく見ておきましょう。

水の分子式がH2Oであることはご存知でしょう。水分子は全体としては電気的に中性ですが、Hのあたりがプラス気味に、Oのあたりがマイナス気味に、電気的に偏った状態になっています(もっと極端に偏ると、NaClのようなイオン性物質になります)。

これを「極性」と呼び、水に溶ける側の物質も、この極性が大きいほど溶けやすい傾向があります。C・H・Oなどのごく少数の元素で占められる有機物質について言えば、「O-H」の結合部は親水的に、「C-H」の結合部は疎水的になります。

例えば脂肪酸は、図1のようにC・Hからなる鎖の先端に酸の構造(COOH)を備えています。

この図を眺めて、細かいことはわからなくとも、「この辺りは水と相性が良さそう(悪そう)だな」ということが読み取れれば充分です。

脂肪酸の場合は、先端部分だけは親水的であるのに対し鎖の部分は疎水的であり、鎖が長ければ長いほど先端の親水性はほとんど目立たなくなります。

注意すべきことは、親水性・疎水性は二元論で語られるものではなく、比較・程度の問題であるということです。「どれくらい疎水的であれば脂質と呼べるか」という明確な基準はなく、脂質の中でも疎水性の度合いはさまざまです。

また、一つの物質に親水的な部位と疎水的な部位が共存することも珍しくありません。

脂肪酸の構造

図1 脂肪酸の構造。どこが疎水性を持つのか読み取ってみましょう。

脂質を「部品」で整理してみよう

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