【連載】実践!エンゼルケア

第7回 エンゼルメイクの目的③「体温低下」と「死後硬直」

解説 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


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エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など


 第6回でお話した「腐敗」のほかに起こる死後変化として「体温低下」と「死後硬直」があります。

死後の身体変化「体温低下」について

 体内循環のなくなったご遺体は、体温が保てなくなります。温度環境に影響をうけながら体温低下が進行していきます。全身が同時に低下するのではなく、外気にふれている顔の表面や手足は早く体温低下していきます。

 前回で解説した、腐敗進行の中心部分は腹部・胸部です。その体幹部分には、手足を温めても循環がないことで熱が伝わりにくいため、腐敗の助長につながりませんから手浴・足浴(お湯につける)することをおすすめします。看取りの場面を意識して、ご家族が行えるようにサポートするのもよいでしょう。

死後の身体変化「死後硬直」について

 死後1時間~3時間、早い方は1時間位から筋の硬直がはじまり進行します。進行速度や度合いに個人差あり、急死した方、若い方などは“早く・強い”硬直傾向があります。


 「死後硬直」は、身体の上から下方向に徐々に全身に広がるように硬くなっていきますが、臨終前の筋肉内のATP(アデノシン三リン酸)量や、環境などの状況も関係して、進行の速度や度合いに個人差があります。下記の表1は「硬直の速度や強さの要因の目安」としてご覧ください。表中の赤字の要素の多いほど硬直の速度や強さが増します。

表1 臨終直前、臨終時の状況

性別 男性 > 女性
年齢 青年期・壮年期 > 小児・高齢者
筋肉量 筋肉の多い体型 > 痩せ
体温 高体温 > 低体温(平熱)
周囲温度 高い > 低い
季節 夏 > 冬
経過 急死 > 長期療養
全身痙攣 あり > なし
下顎呼吸 あり > なし

※ご遺体を冷却すると、その分筋硬直の出現を遅らせて長引かせることになります。

 以上のように死後硬直の進行は性別、体質や環境によっても異なってきます。ここで重要となるエンゼルケアが「保清」を行なうタイミングです。

 次回は「保清」のうちの『口腔ケア』と『眼内ケア』について解説します。

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