【連載】泣いて笑って訪問看護

第16回 『頑張れ!』―現場でのもどかしさと利用者様への思い

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

医療の場が在宅へと比重が高まるものの、まだまだ知られていない訪問看護。ここでは訪問看護の実際について、エピソードを通じてご紹介します。


利用者様の状態が悪化した

私の大好きなYさんを今日、この手で救急搬送した。

訪問時、血圧が58しかなく、体内酸素も85%で意識朦朧。

朝から二回も吐いており、娘さんもただならぬ気配を感じ、仕事もお休みして看病して下さっていた。

脚はいつもに増して浮腫み、ところどころに内出血がひろがっていた。

血圧をあげるために、いろいろ体位を工夫しても変わらない。

メインの疾患はイレウスであるが、便は出ているからイレウスではない。

ろくに食べれていないため、かなりの低栄養と貧血があり、何がおこってもおかしくはないと覚悟はしていたが、こんなに急に落ちる原因がわからず、頭が混乱していた。

ともかく、先生に報告。 バイタルが在宅レベルではないからと病院搬送の許可をもらい救急車を呼んだ。

わかっていても入院が実現できない

結局入院して採血とCTをとったところ、低栄養からくる浮腫で胸水と腹水がかなりたまっており、かなり貧血も進んでいたため急変したことが判明。

とりあえずアルブミンの点滴をして、明日の朝一で中心静脈栄養をいれることとなったが、「『このまま状態が悪化することもあるため、覚悟はしておいて下さい』と先生から話があった」とお孫さんから泣きながら電話が入った。

もっと早くに入院させてあげられていたら・・・。 悔しくて涙が出た。

在宅では病院ではないため、大きな検査が簡単にはできない。

血液検査から、貧血と低栄養が進行してるのは分かっていた。

お腹が張ってしまい、口から思うように栄養がとれないこと。 悪化の一途を辿る大きな褥瘡から栄養が失われて行くこと。 当然のように身体は着々と衰弱していくのが分かっていながら、どうしようもできなかった。

前に、褥瘡が酷いからそれを理由に入院させて欲しいとかなり強引に大きな病院に受診できるようセッティングしたが、結果はNOだった。 皮膚科の先生は「こんな低栄養では褥瘡は切開をしても改善の余地はない。入院しても今の家にいる栄養状態とたいして変わらない。入院したら寝たきりになるから、もっと身体が動かなくなるだろう。それならば家に戻った方がいいだろう」と帰されてしまったのだ。

なんで?

どうしてこんな酷い状態で入院できない?と憤りを通り越し、愕然とした。

前に一度家族は中心静脈栄養をいれることを拒んでいたから、帰されてしまったのかもしれない。

でも、家族や本人の気持ちは時と情況により変化する。 なんで、再度中心静脈栄養を考慮してくれなかったのかと悲しくなった。

情況も変化して・・・

今、Yさんはやっと入院することができ、全身状態の管理を受けることができるようになった。

良かったね。やっと入院できて良かったね。 心の底からそう思う。

それと同時に、ここまで悪化しないとどこにも入院できない現実にやり場のない怒りを感じ、悔しくて涙が出てくる。

Yさん。頑張れ!

もう充分に頑張ってるのは知ってる。でも、ごめん。やっと入院できたんだから、もうちょっと頑張って下さい。

救急車に乗る直前、

「Yさん、頭ボ〜ッとしてない!?大丈夫?」と声かけをしたら、

「あたしはいつもボ〜ッとしてるから(笑)」とうっすら笑った。

「もう!そんなことが言えるなら大丈夫だね!」と肩を叩いて救急車に乗せた。

大好きなYさん。 どうか、頑張れますように。 また、あの、たまらない笑顔がみたいです。

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