【連載】がん患者さんを感染から守る!

第4回 がん治療中の皮膚障害とスキンケア

執筆 横山弘一

千葉大学大学院薬学研究院

分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤や、放射線治療の副作用による皮膚障害は、皮膚のバリア機能を低下させ、感染のリスクを高めます。皮膚障害のあるがん患者さんにおいて、どのような対策が必要なのかを解説します。


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皮膚障害をもつがん患者さんの感染要因

「全身的要因」と「局所的要因」

 がん治療を受ける患者さんの皮膚感染の要因として、全身的要因、局所的要因などが挙げられます。

全身的要因

 年齢や基礎疾患などはもちろんのこと、がん治療に伴う副腎皮質ステロイド薬の長期投与、抗菌薬の投与に伴う菌交代現象、抗がん剤治療に伴う骨髄抑制などによる免疫能の低下が挙げられます。

局所的要因

 分子標的治療薬の皮膚障害に伴う皮膚乾燥症やひび割れ・爪囲炎などの爪甲周囲の炎症、皮膚障害に対して長期にステロイド外用薬を使用している場合などが挙げられます。

その他

 多汗、不衛生な環境や患者さんのスキンケア不足、それに伴う掻破も要因となっています。

 分子標的治療薬による皮膚障害で最も頻度が高い、ざ瘡様皮疹が悪化して掻痒感や疼痛が生じることで、掻破による二次感染を伴うこともあります。

 また、皮膚乾燥症では数カ月にわたり症状が持続し、魚鱗様のひび割れや指尖部・踵の亀裂が生じるため、二次感染のリスクが高まります。

皮膚感染を起こす3つの病原微生物

 皮膚感染症の病原微生物としては、細菌、真菌、ウイルスなどが挙げられます(表)。

 EGFR阻害薬に代表される分子標的治療薬が投与されていると、正常な皮膚が障害を受けているため、皮膚が本来もつ柔軟性、紫外線防御、物理的遮断性などのバリア機能が低下しています。そのため、皮膚の損傷部位などから病原微生物が侵入しやすくなっているのです。

 また、感染が起こってから発症に至るには、菌量や毒力といった病原微生物側の要因と、宿主の防御機能の間の力関係がかかわっています。

 がん患者さんは易感染状態にあるため、皮膚感染症の発症リスクは高いといえます。
皮膚感染症の原因と発生機序の表
表 皮膚感染症の原因と発生機序

がん治療中のスキンケア

保湿・保護、清潔保持がポイント

 がん治療中の皮膚感染症の予防には、皮膚のバリア機能を保つことと清潔保持が重要です。

 具体的には、湿潤な環境を避けて皮膚の浸軟を防ぐ一方で、皮膚の乾燥がみられる場合には乾燥による亀裂が生じないよう保湿・保護します(図)。

 皮膚の状態を観察して、入浴・シャワー浴・清拭、さらには足浴や洗髪など、患者さんの状態に合わせた清潔ケアを行います。皮膚と皮膚が接触しやすい部位は、発汗による汚染が目立つ箇所です。特に注意して、毎日清潔ケアを行いましょう。

患者さんに合った洗浄剤を選択

 弱酸性で低刺激の洗浄剤を用いて、泡で包み込むように洗います。抗真菌成分や保湿剤を配合したものなど、さまざまなタイプの洗浄剤がありますので、患者さんに合うものを選びましょう。

 皮膚のバリア機能が低下している状態では、高温多湿な環境により皮膚が浸軟し外力でたやすく損傷して、病原微生物の侵入を受けやすくなります。

 清潔ケア後は、水分を軽く押さえるようにして、きちんと拭き取りましょう。また、発汗が多いときは寝衣にも配慮して、通気性、吸水性、速乾性に優れたものを選びます。

 爪囲炎などテーピングの処置を要する場合、テープで密着された皮膚はアルカリ性に傾いて細菌の繁殖が促進されます。テープは同じ位置に長時間貼らないようにしましょう。

 皮膚乾燥症では、数カ月症状が持続することから、ひび割れ、亀裂が起きないよう保湿ケアを継続していくことが大切です。
皮膚感染予防のポイント説明図
図 皮膚感染予防のポイント

手足症候群のケア

医師・薬剤師と連携したケアを

 手足症候群は、分子標的治療薬と従来の抗がん剤いずれにもみられる皮膚障害ですが、発生機序の詳細は、いまだ明らかになっていません。

 手足症候群の治療は、まず抗がん剤の休薬が必要となります。日常生活に支障をきたすような疼痛、知覚過敏がある際は回復するまで休薬し、症状が軽減してから再開します。

 日常生活においては、荷重や擦過により症状が悪化するため、手足の圧迫を避け安静を心がけます。またヘパリン類似物質、尿素製剤、ビタミン含有軟膏などの皮膚外用薬で保湿し、抗炎症目的でステロイド外用薬の塗布を行います。

 疼痛、知覚過敏が強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬の内服を行います(図)。化学療法中は患者さんの手指・足趾などをよく観察し、訴えに耳を傾け、医師や薬剤師と連携したケアを行うことが大切です。
手足症候群のケア説明図
図 手足症候群のケア

(『ナース専科マガジン』2015年10月号より転載)

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