【連載】ストーマケア 皮膚トラブル解決法

【ストーマケア】どう指導する? 高齢患者さんのセルフケア

執筆 宗川 愛

東京勤労者医療会 東葛病院、皮膚・排泄ケア認定看護師

【目次】


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ストーマとは? ストーマケアについて


患者さんはどんな状態?

90歳代女性Eさん。貧血のため、精密検査を目的として入院。直腸がんの膀胱浸潤により膀胱直腸ろうを形成、S状結腸双孔式ストーマ造設術を行い、退院調整となりました。入院前より認知症があり、生活全般において介助が必要でした。手をつなぎ、屋内で数歩の歩行は可能でしたが、車椅子で生活していました。介護者である娘さんは仕事をしており、施設入所が検討されていました。


セルフケアの見極めは?

セルフケアの判断基準

 高齢だからといって、セルフケアができないと決めつけてはいけません。日常生活動作(ADL)や視力、手指巧緻性などを確認し、個々の能力に応じてセルフケアできる部分を尊重し、介入の範囲を見極めていく必要があります。セルフケアが可能かどうかは、主として「排泄物をストーマ袋から排出する操作ができるか」「ストーマ装具の交換ができるか」の2つの動作から判断します。

 Eさんの場合、認知機能の低下によりストーマの認識ができません。また、病状によりADLの低下がみられ、車椅子への移乗動作に対し軽度の介助が必要であり、端坐位についてもベッド柵につかまらなければ保持できません。このことから上記の2つの行為を行うことは不可能に近い状態であり、セルフケアは困難であると判断しました。

セルフケア能力に合わせたケアを実施

キーパーソンを明確に

 セルフケアが困難な場合には、誰がサポートできるキーパーソンであるかを明確にし、どこまでケアへの介入が可能であるかを確認します。そして、誰が、いつ、どこで、どのように装具の交換や便の排出を行うのかを決めます。

 Eさんの場合、認知機能の低下だけでなく、ADL面からみてもセルフケアが困難な状況だったため、医療ソーシャルワーカーに介入を依頼し、ケアマネジャーを含めて調整しました。また、もともと施設入所が検討されていたこともあり、どこで療養するのかについても、合わせての調整となりました。退院後は、自宅で1週間過ごしてから、施設に入所することになりました。そのため、自宅と施設の2カ所におけるケアへの介入者の調整を行いました。

自宅でのキーパーソンの調整

 キーパーソンは娘さんでしたが、娘さんは生活全般において介助を必要とするEさんの介護を仕事しながら行う必要がありました。Eさんが自宅で過ごす期間は1週間である点から、装具の交換は訪問看護師とし、便の排出を娘さんが行うこととしました。

施設でのキーパーソンの調整

 装具の交換は引き続き訪問看護師が行いますが、自宅から施設に移ったことで、別の訪問看護事業所に変更となりました。便の排出は施設の介護福祉士が行うこととしました。

 介入者が決まったら、それぞれの役割について説明と指導を行います。Eさんのケースでは、施設に入所する時点でケア提供者が変更となることが決まっていました。ストーマの状態は低栄養により、術後のストーマ浮腫が残っていました。また、今後病状が進行することでみられる全身の変化も予測されたほか、ストーマ浮腫・ストーマサイズ・腹部に変化が起こる可能性もありました。そのため、予測される変化に対応しやすく、かつケアがシンプルに行える、自在孔タイプで浮動型二品系装具を選択し、トラブルを未然に防ぐようにしました。

高齢者のセルフケア

全体像をとらえて介入を

 高齢者には、加齢に伴う身体的変化(肥満・痩せ、皮膚のしわ・たるみ・菲薄化・脆弱性、手指巧緻性・視力・記銘力の低下、円背)や、精神状態の変化(認知症や抑うつ症状)がみられます。そのため、これらの特徴をふまえ、ストーマへのセルフケア力だけでなく、ADLや社会的な問題・背景などの全体像をとらえて介入していく必要があります。

患者さんにどう指導する?

指導は介入者それぞれに

 キーパーソンである娘さん、訪問看護師、介護福祉士にそれぞれ指導を行いました。娘さんと介護福祉士には、主に装具の注文と管理の仕方、便の排出の方法について説明し、訪問看護師には、装具交換方法のほか、トラブル時や困ったときはストーマ外来へ問い合わせてもらうようお願いをしました。

 退院後Eさんは、自宅で1週間過ごした後、施設へ入所しました。ここで、訪問看護ステーションが変更になりましたが、事前の情報共有や、訪問看護師同士の連携により、トラブルは生じませんでした。

ケア方法の POINT

 高齢者は加齢に伴い、認知機能・視力・手指巧緻性の低下によりセルフケアが困難になります。皮膚の組織耐久性も低下しているため、皮膚障害が重症化しやすく、早期の介入が必要です。皮膚障害の状態によっては、連日の装具交換を必要とする場合もあるため、セルフケアが困難であればキーパーソンと、ほかに支援をしてくれる家族がいるのかを確認します。

 ストーマケア外来受診時に、皮膚障害を改善させるための指導を行いますが、キーパーソンへのサポートも含めて、訪問看護師の介入も考えます。訪問看護ステーションが決定したら、ケア内容を詳細に連絡します。また、問題が生じた場合は、ストーマ外来が窓口になることも明確にしておきます。

指導のPOINT

 ストーマ周囲の皮膚障害を改善させるために、装具を選び直したり、アクセサリーを使用するなど、ケアの変更caseや追加を行うことがあります。しかし、高齢者の場合、新しいことをなかなか受け入れられず、適応するのに時間が必要です。そのため、ストーマ患者さんの気持ちに寄り添うことが求められます。今までのケア方法で良い点を評価しつつ、問題点を共有し、解決のためのケア方法を提案します。この際、例えば面板のホールカットをはさみで行わなくてすむように、プレカットの装具を選択するとよいでしょう。

 患者さん一人ひとりのセルフケア能力をアセスメントし、必要に応じて家族の支援や社会資源の活用(訪問看護師、介護福祉士、ケアマネジャーなど)を考えます。そして、本人にもできるケアがあれば、それをサポートする体制を整えていくことが必要です。

(ナース専科マガジン2015年10月号より転載)

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