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【連載】看護に役立つ生理学

第38回 アラキドン酸カスケードってなに?

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

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ケミカルメディエータとは、抗原抗体反応や炎症反応があった際に遊離される化学物質のこと。今回はその中でも、多くのケミカルメディエータに共通する材料となる物質、アラキドン酸とアラキドン酸カスケードについて解説していきます。


多くのケミカルメディエータの原材料となるアラキドン酸

ここでは、種々のケミカルメディエータの産生過程のうち、臨床で多用される抗炎症薬と密接に関連する「アラキドン酸カスケード」について学びましょう。

アラキドン酸とは、多くのケミカルメディエータに共通する材料となる物質であり、ここから滝(cascade)が落ちるように一連の反応が進んでいきます。アラキドン酸は不飽和脂肪酸のひとつであり、細胞膜のリン脂質に結合して存在しています。

組織の傷害が起こると、ここに酵素が働いてアラキドン酸が遊離してきます。つまり、このカスケードの原材料は「細胞膜から切り出してくる」という形で調達されるのです。


ここからさらに、どのような種類の酵素が作用するかによって、アラキドン酸の代謝物はいくつかの系統に枝分かれしていきます。そのうちのひとつが、プロスタグランジン(以下PG)と呼ばれる一群の物質です。


この物質は、たまたま最初に発見された場所が精液中であったために、前立腺(prostategland)に由来するのだろうと考えられ、このような名が付けられました。


ところがその後、同様の物質がさまざまな臓器から発見され、全身に普遍的に存在することが明らかになりました。組織ごとの酵素の分布の違いなどから、カスケードはさらに枝分かれし、細かな構造の違いによって分類された各種PGが合成されることになります。PGはその種類によって作用が異なり、さらには同じタイプのPGであっても受容体によって作用が異なることもあり、組織によって多彩な効果を及ぼします。このうち、炎症の際に最も目立った役割を果たすのはPG-E2 というタイプで、血管拡張や血管透過性亢進など、おなじみの徴候を引き起こす作用があり、さらには痛みの増強作用も有しています。


 アラキドン酸カスケードによって合成される物質には、PGの他にトロンボキサン類、ロイコトリエン類などがありますが、ここでは詳細には触れません。
 

図1 図 アラキドン酸カスケード


(「ナース専科」マガジン2013年12月号から転載)