【連載】看護学原論に立ち戻って考える!KOMIケアで学ぶ看護の観察と看護記録

第14回 KOMIケアを実践しよう―KOMIチャートの使い方「援助計画の立案」―

執筆 金井 一薫(かない ひとえ)

NPO法人ナイチンゲールKOMIケア学会 理事長/東京有明医療大学 名誉教授

前回の第13回では、患者さんの「生命力の消耗を最小にするため」の解決策を優先順位で見出し、患者さん本人の望むゴールを踏まえて、ケアの方向性を考えていく方法を解説しました。

今回は、その優先順位がつけられた「解決すべき課題」の1つひとつに対して、「解決策を立案」していく方法を解説します。Columnでは「観察の基本」をナイチンゲールの思想とあわせてお話します。

解決策を立案するために使う「援助計画表」

「援助計画表」はコチラからダウンロードできます。

期待される結果に基づいた具体策を

課題解決のためには「期待される結果」に基づいた具体策を考えられなければなりません。また「具体的な援助計画」を思考する段階においては「ケアに活用できるプラスの力」を念頭において立案します。

その人の「持てる力」や「健康な力」を活用する方法を考え出し、本人の意欲(やる気)を引き出し、前向きな姿勢で患者さんが看護師とともに取り組んでいくことができるよう計画するのです。
看護師が患者さんの動きを援助しているイラスト

さらに視野を広げて積極的で前向きな対策を考える

さらに加えて「社会過程の諸要因」や「自然過程の諸要因」にも目を向けて、視野を広げた実現可能な対策を考え出していきます。そうすれば「生命力」は、その方向に向かって伸びようとしますから何らかの変化が観察できるようになります。

Column「観察の基本」とナイチンゲールの思想

観察の基本は事実を把握すること

看護師の観察の対象となるものは患者さんであり、また患者さんが置かれた状況です。さらに看護師は「見る」「聞く」「触れる」「嗅ぐ」など、自らの五感を通して観察を行います。

ですから、看護の世界においては患者さんの訴え、または症状・病状などに関する「事実」や「真実」をつかみ、読みとることが観察の中心的課題となったのです。

しかしこの「事実」や「真実」を知ることは難しく、ナイチンゲールも下記のように述べています。

“真実を述べるということは、一般に人びとが想像しているよりもはるかに難しいことである。それは《単純な》観察不足による場合があり、また想像力のからみあった《複雑な》観察不足による場合がある”
-F.ナイチンゲール著(湯槇ます、薄井坦子ほか訳)『看護覚え書』/「十三、病人の観察」P180

見たこと、聞いたこと、触れたことなどによって明らかになる「事実」を正確に述べるためには、専門家としての一定の教育訓練が必要です。

“「すべて真実を」述べ「真実のみを」述べるには、観察力と記憶力とが結びついた多くの能力が必要とされる”
-F.ナイチンゲール著(湯槇ます、薄井坦子ほか訳)『看護覚え書』/「十三、病人の観察」P181

このことから、現代では「観察能力の育成」が看護教育の柱のひとつになっています。フィジカル・アセスメントの能力を養うとともに患者さんの身体的、精神的、社会的側面を把握するための学習をすることが大切になってきます。

五感による観察がポイント

ナイチンゲールが看護師とは何かについて語った言葉に、以下のような文章があります。「看護師は、患者の顔に現れるあらゆる変化、姿勢や態度のあらゆる変化、声の変化のすべてについて、その意味を理解すべきなのである。」
F−ナイチンゲール著・湯槙ます、薄井坦子ほか訳『看護覚え書』(現代社)、「十五、補章」p.228
これは観察の基本であるだけでなく、観察した現象の意味を読み取ることこそ、看護実践の出発点であることを教えています。

五感を働かせて変化の意味を読みとることが、看護師としての第一歩です。普段から「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」を研ぎ澄ませて観察を行い、患者さんの状態を把握するようにしましょう。

五感による観察項目

五感による観察項目①視覚②聴覚③触覚④嗅覚
1)視覚:顔色・つや、表情、皮膚の状態、排泄物、姿勢、栄養状態、四肢の麻痺や変形 など
2)聴覚:呼吸音、声質、部屋の騒音、患者さんの訴え など
3)触覚:脈拍、腹部膨満、体熱、疼痛の有無 など
4)嗅覚:部屋の臭気、食物のにおい、便尿臭、体臭 など


次回は、KOMIチャートの使い方最後の段階である「実戦の記録と評価」について解説します。

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