【連載】山内先生の公開カンファランス

第26回 うまく痰を喀出できない患者さん

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

今月の事例
うまく痰を喀出できない患者さん
[かーこさんから提供された事例]
肺炎で入院してきた70歳代の男性患者さん。痰が絡まっているような音がし、咽頭までは上がってきていますが、口から喀出できない状態だったため、吸引を行い痰を排出していました。
ベッド上臥床での生活が長く、腹筋などの筋力が低下しているため、口から喀出できないか、病室や人前で痰を出すことに抵抗があるという患者さんの気持ちの問題ではないかと考えられました。また、痰を飲み込むことで、菌を飲んでいるという認識もなかったようです。

→こんなとき、あなたならどう対応する?


事例の患者さんがなぜ排痰できないかをアセスメントするために、どのような情報を集めるかを答えてもらいました。ナース専科コミュニティ会員にアンケートを実施。回答者数は97人。

みんなの回答

痰の性状やin-outバランス、患者さんの普段の生活を見る

  • 家族や本人からその人の性格や生活習慣、排痰への考え方を聞く(catsさん)

  • 痰を出さなければいけないという認識があるか? の確認と、なぜ痰を出せないのか、腹筋や体位などを確認する。また生活歴の確認も行う。痰の性状の確認も行う(CITYさん)

  • 画像所見や咳嗽の状況、スパイロメーターによる呼吸機能の評価。精神面で排痰できない状況をどう思っているのかなどを聞く(ミミさん)

  • 痰がらみしているときの行動や音の変化をみます。あとは、とりあえず、吸引してみます。吸引してみると、どこまで痰を上げられているかわかりますし(Mさん)

  • 痰が固くて上まで上がってこれないかもしれないので痰の性状を観察。普段の食事でむせたりしていないか飲み込みの状況を観察。去痰剤等使用しているか、脱水から痰が固いかもしれないのでインアウトバランスなど。あと、肺の疾患があるか、喫煙者か。認知症の症状がないか(yumejiさん)

  • 筋力の程度、本人が普段どのように出しているのか、必要性の認識、過去も繰り返しているのか(に。さん)

  • 肺炎による倦怠感や高齢による喀出力の低下などがないか確認する(まーみーさん)

  • 水分出納、バイタルサイン、呼吸音、活動性や普段の体位、室内の乾燥の程度、口腔の乾燥、上肢や腹筋の状況、ティッシュの位置や同室者等環境の問題の有無、内服薬や点滴等の治療内容、検査や画像、吸入薬の有無、患者の訴えや自覚症状(デラックスさん)

  • 普段の生活(清潔観念)状況、肺炎の知識(痰とは何かなど)、ADL、周囲環境(ティッシュやごみ箱は手に届くところにあるか)、筋力・咳嗽する力、既往歴(soさん)

  • XP。呼吸機能検査(していれば)。栄養状態。体重なども。認知レベル。日ごろの呼吸状態の全般。ADL状態。咳嗽方法や、嚥下の機能の状態など。(Yさん)

  • 呼吸筋の疲労具合と肺音(かづきさん)

  • 痰の性状をみる。粘調か、サラサラか。痰の貯留時に、喀出の努力は見られるか。また、その時、腹筋は動いているか。(まるさん)

  • 咳嗽する力をみること。普段痰が絡んだときどのように対応しているかをきくこと。口腔内が乾燥していないかをみること。(yuiさん)

山内先生の解説

排痰のアセスメントについて考える

今回は事例をとおして、普段、排痰のアセスメントをどうしているのかを聞きました。また、どんな原因があって痰を出すことができないのかをどう探っていくかも考えてもらっています。

 まずは、痰が貯留しているかどうかをどうアセスメントするかですが、多くの人が書いてくれたとおり、呼吸音の聴診が一般的ですね。そのほか、X線で確認するといった方法もあります。吸引ができたかどうかのアセスメントも同様で、呼吸音がどう変わったか、ゴロゴロと聴こえていたものが聴こえなくなるかどうかが吸引ができたかどうかの一番の指標となるのではないでしょうか。

 また、SpO2を挙げている人も多くみられました。これには少し注意が必要です。SpO2が低下している理由の1つに痰の貯留があるわけで、“SpO2が低下している=痰が貯留している”ではありません。吸引後、低下しているSpO2が上がったということであれば、排痰の効果があったと考えられますが、SpO2が下がっているから痰が貯留しているとは言い切れません。それを忘れないでほしいです。

SpO2を見ることは、痰が貯留しているかどうかをアセスメントする方法として悪くはないですが、直接的な指標となるものではないといえるでしょう。やはり、呼吸音を聞くのがよいですね。

身体的機能以外にも目を向ける

この事例の患者さんがなぜ痰を喀出できないのかアセスメントするために、どんな情報を集めるかを聞きました。この質問では、どれだけ想像力が豊かか、また、次に紹介しますがこの後の質問で「この患者さんが排痰をできるようになるために、どのようなアプローチをしますか」と聞いているように、次の行動に繋げるための確認ができるかを聞いています。

次に事例の患者さんが排痰をできるようになるために、どのようなアプローチをするかを聞きました。ナース専科コミュニティ会員にアンケートを実施。回答者数は131人。

みんなの回答

●ADLのアップを検討。起座位の状態が維持できるか?または車いすレベルに改善できるかなど、体位による換気機能の改善。また咳嗽の効果的方法の指導。嚥下機能の改善。誤嚥がなさそうならば水分補給。加湿。最終的な喀出の指導。口腔ケアの充実など。肺理学療法による換気補助。(Yさん)

●呼吸理学療法を取り入れて、ドレナージやタッピング、筋力増強訓練などを行う。口腔ケアを取り入れて、口腔内の清潔保持をする。(ミミさん)

●まず排痰ができないのか、しないのかを把握する。家族など入院前の様子を知る人に話をきいたり、本人とゆっくり話し、気持ちに寄り添えるよう援助する。(ななさん)

●湿度、口腔乾燥を改善させ、肺音を聞いて痰の貯瘤状態を説明し、必要時は体位ドレナージ、排痰マッサージをする 。( えりりんさん)

●気持ちで出来ないなら、排痰の重要性の説明。腹筋が弱くなっているなら、OTやPTなどと協力して、排痰の練習。(catsさん)

●感染による痰であれば主治医に報告し適切な薬剤投与の検討、室内の乾燥が強いならば湿度を上げる、痰の吸引を拒否しているのであれば手技を適切に行い苦痛の少ない様に行う、とか。(Ksannさん)

●痰が固くてだせないなら吸入で柔らかくしてから排痰してもらう。自立した人なら、痰をださないと、肺炎は改善されないことを説明する。床上リハの計画を立案。嚥下評価をする。(yumejiさん)

●まず排痰ができないのか、しないのかを把握する。家族など入院前の様子を知る人に話をきいたり、本人とゆっくり話し、気持ちに寄り添えるよう援助する。(ななさん)

●腹圧をかけられるようなリハビリ(呼吸リハビリ)の開始。(松子さん)

●一緒に排痰法の練習をしてみる。出た痰は患者さんの前では観察しない。ネブライザーをしてみる。(でさん)

●まずは気持ちの問題なのかどうかをきちんとアセスメントする。痰の粘度をアセスメントし、吐き出しやすいか困難なのか考える。一人でいつでもだしたいときに出せるようにティシュなどを近くに置く必要があるか、ハフィングなどを一緒に実施する。(あこさん)

●心理的か身体的かによって対処は変わるが、前者なら理解を促す。後者なら、ベッド上でも行える程度の運動(筋トレ)を行う。(RYUさん)

●痰がだせないことでのリスクを説明する、あなたによくなってほしいことを伝える。(admさん)

●腹式呼吸の練習、更なる筋力低下を防ぐため床上リハや車イス移乗し起きている時間を増やす。(よだれむしさん)


次は、山内先生の解説を紹介します。

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