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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第36回 セカンド・オピニオンを求めたい患者の気持ち

解説 北澤京子(きたざわ きょうこ)

医療ジャーナリスト 京都薬科大学客員教授/認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン理事

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。
そこで、患者の病いの語りをデータベースとして提供しているDIPEx-Japanのウェブサイトから、普段はなかなか耳にすることができない患者の気持ち・思い・考えを紹介しながら、よりよい看護のあり方について、読者の皆さんとともに考えてみたいと思います。


治療方針などを決めるにあたって、患者が主治医以外の別の(第二の)医師の見解も聞くこと――これが、セカンド・オピニオンです。乳がん患者は特に、乳房を失うかもしれないという重大な判断を迫られていること、複数の選択肢が考えられる場合があること、さらに、一分一秒を争うほど急を要するわけではなく、ある程度の時間的余裕があることから、セカンド・オピニオンを求める人がめずらしくありません。

「腑に落ちる」説明が欲しい

セカンド・オピニオンを得たいと思ったとき、乳がん患者はどのように行動し、また、それをどのように受け止めているのでしょうか。

27歳で乳がんの診断を受けた女性(インタビュー時33歳)

患者さんの声

最初行った病院に「セカンド・オピニオンをとりたいので、検査結果を貸してください」って言いに行ったんです。そしたら先生が明らかに嫌な顔をされて(笑)、「僕じゃ信用できないですか?」みたいなことを言われて、検査結果を貸してくださらなかったんです。「もう1度全部調べてください」って言われて。…
――「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン >乳がんの語り」より


セカンド・オピニオンを得るために検査結果を貸してくれるよう依頼したこの女性は、医師から貸し出しを断られてしまいます。それでも諦めずに別の病院で検査を一から受け直したところ、結果は最初の病院と同様、手術が必要との判断でした。

ですがこの女性は、二番目の病院の医師が、気がかりだった妊娠・出産のことも含めて丁寧に説明してくれ、納得できたという理由で、この病院で手術を受けることにしました。この語りからは、医療者の説明に得心がいくことが、患者が治療に向かって一歩踏み出す力になることが伝わってきます。

 自分ではセカンド・オピニオンを得なかった女性は、インタビューではセカンド・オピニオンを得ることを強く勧めています。

乳がんのため両側の乳房を全摘した女性(インタビュー時42歳)

患者さんの声_セカンドオピニオンについて

私が一番言いたいのは、(自分の)体験から。最低でも2件はセカンド・オピニオンを受けてほしいなって思うんですよ。なぜかと言いますと、私が全摘を納得して受けたのはいいんですけれども、後で乳がんのセミナーに行ったら、「5センチでも温存にできる自信があります」って言う先生がいたのです。うーん、すごいショックだったかな。私自身は、無理して温存するより、きれいに取って後から再建した方が、再発率も少ないんじゃないかなって思っているんですが、後悔しないためにも、後から後から引きずる人生を送るよりも、最低でも2件の先生のお話を聞いて・・・
――「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン >乳がんの語り」より


この女性は当初、乳房を温存することを希望していましたが、主治医の勧めに従って全摘出手術を受けました。そのこと自体には納得しているものの、これから患者になる人には「腑に落ちないことから、腑に落ちることをモットーにしてほしい」と語っています。

 セカンド・オピニオンに限らず、患者への説明は、看護職を含むあらゆる医療者にとって日常的な業務です。しかし、単に内容を分かりやすく伝えることから一歩進んで、患者が「腑に落ちた」と感じられるような説明を目指してもらいたいと思います。


「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)
英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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