【連載】500人のギモン&お悩み徹底解決

負担の少ない体位変換の方法・手順

解説 熊谷祐子

現・自治医科大学看護学部 講師

患者さんの体位変換は重要なケアであるとともに頻繁に行われるケアです。今回は、患者さんにも看護師にも負担が少ない体位変換の方法を解説していきます。

Q 患者さんにも看護師にも負担の少ない体位変換の方法を教えてください。特に拘縮や片麻痺のある患者さんへの楽な体位変換について知りたいのですが。

A 体位変換や移動は、てこの原理、作用・反作用、重心移動の3つをうまく利用することで、だれでも楽に実施することができます。

体位変換は患者さんにとっても大変な作業

患者さんの体位変換や移動は看護師にとって重労働で、特に腰への負担が大きいといわれています。それを軽減する体位変換の技術にはさまざまなものがありますが、ここでは「てこの原理」「作用・反作用」「重心移動」といった物理的な原理を応用した方法を紹介します。

この3つの力を利用することで、これまでのように看護師が腰を曲げて患者さんを持ち上げる負担がなくなるだけでなく、介助される患者さんにとっても楽な動作となります。実は体位変換や移動は、患者さんの協力があってこそ成り立っています。患者さんにとっても大変な作業なのです。

体位変換は筋力低下を防ぐ効果も

拘縮に関しては、理学療法士などが在籍する病院では、急性期を脱するとすぐに拘縮予防のために運動を開始するようになってきています。これは筋力低下を防ぎ、病状の安定とともに立ち上がれるようにするためです。

それには臥床時期から健側のトレーニングを行う意識が大切で、その意味でも腰の筋肉や腹筋を使うこの体位変換は効果的な方法だといえます。

なお、点滴やカテーテルが挿入されているなど患者さんの状況によっては、チューブの抜去や屈曲が生じたり、バイタルサインが変動しやすいなどのリスクが生じます。体位変換はリスク評価をしたうえで安全に行うことが大切です。

身体に優しい体位変換の手順

[片麻痺のある患者さんでの基本動作(殿部を浮かせる)]

*患者さんの健側の筋力低下を防ぎ、排泄ケア時に応用できます。

  1. 健側の膝を立てる 膝の高さの位置がその後の動作に影響を与えるので、踵はできるだけ殿部に引きつけ、膝が高い位置にくるようにします。 ※もし下肢の筋力が低下して足底部に力が入らないときには、背屈(足底にあてた前腕を中枢側にゆっくり倒す)を繰り返し行うことで筋力も回復します。
  2. 患者さんの殿部の下に補助の手を差し込む
  3. 患者さんに足底でベッドを踏んでもらうよう声かけをする

[仰臥位から側臥位への体位変換]

  1. 胸の上で両腕を組む 側臥位になる際に下方側になる上肢が側臥位への移動を妨げてしまうため、身体の下にならないよう胸の上で両腕を組みます。側臥位にする方向の腕、麻痺がある場合には麻痺側の腕を健側の腕で支えて下にします
  2. 看護師は、重心移動で患者さんの膝を手前に持ち上げ、元の位置に戻る その際、踵はより殿部の近くに着地させます。膝を高く持ち上げるようにすると、トルクの原理を利用して容易に側臥位にすることが可能になります。 ※看護師は、前足に重心移動を行い、重心を移して膝を持ち、そのまま足の重心を元に戻します。こうすると負担なく行えるので、これまでの「よいしょ」という言葉は聞かれません。
  3. 踵を殿部により近づけ、位置を固定する 膝の高さの位置がその後の動作に影響するので、踵はできるだけ殿部に近づけ、膝の位置を高くします。
  4. 踵を固定したまま両膝を手前に倒す 殿部がてこの支点となり、身体全体が回転して(トルクの原理)、側臥位になります。
  5. 患者さんが安楽と感じる姿勢に整える

[仰臥位から端座位への体位変換]

  1. 看護師より遠い腕を胸に上げる (ここでは左側の腕を胸に上げた設定で以下の手順を説明していきます)
  2. 看護師は、左腕の肘を患者さんの首下に入れる 枕と患者さんの肩の間に、肘まで深く差し込みます。患者さんが肩や首に負担を感じない位置にあることが重要です。
  3. 患者さんの左肩を看護師側に引き寄せる いったん右手で患者さんの肩を支持します。
  4. 左手で患者さんを抱き起こす 左手で肩甲骨下部を支えて起こします。 ※患者さんが起き上がる際の軌跡を追って、看護師の右足は、起き上がりと同時に患者さんの膝の位置へ着地させます。このとき患者さんは座位になります。
  5. 膝の下に手を入れ、殿部を軸にして身体を回転させる
  6. 上半身を完全に起こして両足をベッドから降ろし、端座位にする

(「ナース専科マガジン」2010年5月号より転載)

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