【連載】よくわかる! 気管切開の大事なところ!

気管切開患者さんの誤嚥はカフで防げる?

執筆 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事


▼気管切開についてまとめて読むならコチラ
気管切開とは? 気管切開の看護


カフが誤嚥防止に役立つわけ

 嚥下する際に、喉頭部で気管の入り口を閉鎖できないために、食物や飲み物が気管に流れ込んでしまうことを誤嚥といいます。経口挿管の場合には喉頭をチューブが通っているため気管の入り口を閉鎖することができず、唾液などが常に下気道に流れ込む状態です。そこでカフを適切に膨らませることでカフより下部の下気道に流れ込むことを防いでいます。

 気管切開の場合には、喉頭にチューブ等が接しているわけではないので、喉頭の機能が正常であれば気管の入り口から唾液などは入ってこないはずです。しかし、意識レベルや嚥下機能の低下があると問題になります(図)

 ここでは気管切開チューブのカフより下に唾液などが垂れこんでしまう原因について説明します。

垂れ込と誤嚥
(図 垂れ込と誤嚥)

唾液が垂れ込む原因は主に3つ

 唾液などが垂れ込んでしまう原因は下記の3つです。

1.カフが緩む
2.チューブが細すぎてカフを膨らませても気管にぴったりしない
3.カフがない

1.カフが緩む場合

できるだけカフ圧を一定に保つ

 一般的な気管切開チューブはカフにパイロットバルーンが付いており、付属しているばね付きの弁により、注入した空気がすぐに抜けないようになっています。カフに入れる空気の圧力は気管壁の毛細血管の血圧を超えないように20~25mmHgくらいが適切です。

 ただし、強すぎる圧がずっとかかるのを防ぐために、徐々に空気が抜けるようにできています。すると気管壁とカフの間に隙間ができ、そこから唾液などが垂れこんでしまいます。

 カフ圧が下がってしまった場合には速やかに空気を注入して圧を元に戻しますが、この際、残っている空気を一度抜いてから追加するのは間違いです。カフの空気を抜くとカフの上部に貯留している液体が下気道に垂れこんでしまいます。カフ圧が低下したときには追加して目的の圧力に戻しましょう。

2.チューブが細すぎる場合

チューブの太さが適切か確認する

 人工呼吸器で陽圧呼吸を行っている場合には、カフを適切な圧で膨らませた状態で聴診します。吸気で気道内圧が高くなっているときにプツプツ、ブルブルと空気が抜ける音がすればチューブが細すぎる可能性があります。また、カフ圧を適正圧よりも高くしないと「一回換気量低下」のアラームが鳴るという場合も、チューブが細すぎる可能性があります。

 人工呼吸器が必要ない患者さんは陽圧呼吸をしないので、カフから空気が漏れるかどうかを確認するためには蘇生バッグで深呼吸をさせ、バッグを押しているときにカフから漏れる音がするかどうかをみます。

 意識のある患者さんで明らかに唾液の垂れこみが疑われる場合には、食用色素などで色づけしたものを嚥下してもらい、気管から吸引されるかどうかを確認する方法もありますが、医師の指示のもとに行います。または、摂食嚥下のエキスパートに依頼するのもよいでしょう。

 対策としては適切な太さのチューブに入れ替えを行います。気管切開を行ってから年数が経過していると、瘻孔が狭くなっていて太いチューブへ入れ替えることが難しい場合もあります。そのような症例では切開が必要な場合もありますので、入れ替えの前にはあらかじめ主治医と十分検討し複数のサイズを準備したり外科的処置の準備をしておく必要があります。入院が必要な場合もあるかもしれません。

3.カフがない場合

場合によってはカフ付きチューブに変更

 気管切開を受けても、嚥下機能が正常で吸引目的だけの患者さんであれば、長期に使用する気管切開チューブにはカフがないものを使用していることがあります。このような患者さんでも、嚥下機能が低下した場合には、誤嚥が生じます。

 嚥下訓練をして回復を期待しますが、誤嚥がひどい場合にはカフ付きのチューブに変更したほうが安全です。


「ナース専科」マガジン2016年2月号より転載


この記事を掲載した2016年2月号についてはこちら
2016年2月号

ページトップへ