【連載】よくわかる! 気管切開の大事なところ!

喀痰が多い気管切開患者さんにはどう対応する?

執筆 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

▼気管切開についてまとめて読むならコチラ
気管切開とは? 気管切開の看護


原因別に対応策を考える!

 喀痰が多くて困ったという質問をよく受けます。まずはその状況から考えてみましょう。痰が多いのは気管の中ですか? 気管切開チューブのカフ上部ですか? それともチューブから噴き出した胸元ですか?

 気管切開チューブの中から喀痰がどんどん出てくる場合について原因別に対応策を考えてみましょう。

気管支に喀痰が貯留している、またはもともと喀痰が多い患者さんの場合

水分が多すぎないか注意する

 慢性気管支炎や気管支拡張症があるため気管支にもともと喀痰が貯留している、今回入院して気管挿管・気管切開となる以前から、もともと喀痰が多いほうだった、という場合について考えてみましょう。

 慢性気管支炎や気管支拡張症は、緑色や灰緑色の粘稠性の高い喀痰が多いことが特徴の疾患です。気管支拡張症では、その名の通り気管支が何らかの影響で太くなり、喀痰が貯留してそこに常在細菌がいることが多いのです。

 このような患者さんの場合、喀痰が多いのが元来の病態ですから、気管切開後も喀痰が多いのは、ある程度は仕方がありません。逆に痰が出せないことのほうが問題となります。

 このような病態の患者さんで気をつけなければならないことは、水分出納のバランスと喀痰が出せず溜まってしまうことです。緑色や灰緑色の喀痰があまり粘稠でなく水っぽい部分がたくさんある場合には、水分量が多すぎるという可能性もあります。患者さんの水分出納を見直してみることも大切です。

 ちなみに、人工呼吸器を使用している場合、呼吸器回路内で人工的に加温加湿された空気を吸っていると、不感蒸泄量はかなり少なくなりますので注意が必要です。脱水症状の患者さんの喀痰が乾燥して硬くなるのとは反対に、水分出納がプラス過ぎると喀痰は水っぽくなります。

体位変換を行ってから吸引する

 仰臥位安静が続くと、重力で喀痰が流れ込む背側の気管支が、痰詰まりを起こしやすくなります。体位変換を行って、重力で喀痰が気管チューブ近くに移動してくるようにして、吸引することが大切です。咳嗽力がある患者さんであれば、咳動作をさせることで自然に喀痰が移動してきます。

心疾患の影響で喀痰が増える場合

急性期はこまめに吸引し、加湿は人工鼻で行う

 心不全だけが原因で気管切開が必要という患者さんはあまり多くないかもしれませんが、気管切開で生活している人が心疾患になることはあるでしょう。

 喀痰が水っぽくなる代表的な心肺の状態として、心不全や肺水腫があります。この場合は感染症ではありませんから、喀痰はさらさらで透明または白色であることがほとんどです。聴診で粗なクラックルが聴こえることもあります。

 診断には、バイタルサインの他、心電図や各種血液データ、胸部X線写真による心胸比の拡大などをチェックし、CPAP(持続気道陽圧)や利尿薬・強心薬等で治療となります。早めに主治医に相談しましょう。

急性期は喀痰をこまめに吸引し、治療の効果が出て喀痰が少なくなることを期待しましょう。肺や気管支が水っぽい状態ですから吸入気の加湿は人工鼻が基本です。加温加湿器や大容量ネブライザーによる過剰な加湿は、分泌物を増やすだけになるため注意します。

(「ナース専科」マガジン2016年2月号より転載)


この記事を掲載した2016年2月号についてはこちら
2016年2月号

ページトップへ