【連載】看護学原論に立ち戻って考える!KOMIケアで学ぶ看護の観察と看護記録

第16回 KOMIケアを実践しよう―患者さんへの「質問の仕方」と「何を観察するのか」―

執筆 金井 一薫(かない ひとえ)

NPO法人ナイチンゲールKOMIケア学会 理事長/東京有明医療大学 名誉教授

そもそも「看護」って何だろう? 何をすれば看護といえるのだろう? 本連載では、看護とはどのようなことであり、どのような視点で患者を観察し、また記録するのかについて、ナイチンゲールに学びながら解説します。


前回の第15回までKOMIケアの実践法を解説しました。今回は、KOMIチャートシステムを使用する際の患者さんへの「質問の仕方」と「何を観察するのか」をナイチンゲール思想とあわせてお伝えします。

6月25日(土)、6月26日(日)の2日間は、
ナイチンゲールKOMIケア学会 第7回学術集会 20周年記念集会」を開催します。本連載では伝えきれない部分もありますので、ぜひこの機会にKOMIケア理論を反映させた現在の看護実践の情報を得ていただきたいと思います(記事の最後にまたお知らせします)。

患者さんへの「質問の仕方」

患者さんの状態の真実を知るために一般的に行われるのは「質問」という方法です。しかしこの質問の「仕方」こそが問題になるとナイチンゲールは言います。

「事実の把握が援助計画に影響する」ナイチンゲールの言葉

“病人に向けて、あるいは病人に関して、現在(一般的に)行われている質問では病人に関する情報は、ほとんど得られないであろう。そうした質問は一般に誘導的な質問なのである。”

“例えば患者に『よく眠れましたか?』と尋ねるとする。ある患者は途中全く目覚めないで10時間続けて眠らなければ、自分はよく眠れなかったと思うかもしれない。別の患者は時々うとうととまどろみさえすれば眠れなかったとは思わないかもしれない。そして実際には、この二人の患者に関して同一の答えが返ってくる。”
-F.ナイチンゲール著(湯槇ます、薄井坦子ほか訳)『看護覚え書』/「十三、病人の観察」P182

このナイチンゲールの指摘は、性質や習慣が違うそれぞれの患者さんが同じ扱いの看護を受けてしまうと述べています。そしてこう続けています。

“いったいなぜ『何時間眠りましたか? それは夜の何時頃でしたか?』と尋ねていないのであろうか。これは重要なことである。なぜなら、その答えによって不眠への対策が異なってくるからである。”(改行)
-F.ナイチンゲール著(湯槇ます、薄井坦子ほか訳)『看護覚え書』/「十三、病人の観察」P182

これはまさに的を得た指摘です。患者さんに起こっている事実を適切で具体的な質問によって把握できれば、その後の援助計画に役立てられるからです。

質問の基本は「5W1H」で

患者さんに質問する時は、下記の「5W1H」を基本にして尋ねると看護師が知りたい答えが得られやすくなります。

【質問の「5W1H」】
Who(誰が) 対象の患者さん
What(何を) 質問の主題
When(いつ) いつ起こったことか
Where(どこで) まわりの状況・環境
Why(どうして) 原因・理由
How(どのように) 原因・理由を踏まえての対策

この「5W1H」にのっとって下記のように具体的に質問をすると、患者さんに必要な看護が見えてきます。

※例)患者さんの昨晩の睡眠について知りたい時の質問の仕方

患者さんへの質問の仕方

患者さんの状態を知る要点を押さえた質問方法

患者さんの心身に起こっている状態を正確に把握するには、観察に加えて患者さんが答えやすい的確な質問をすることが必要です。

患者さんのイラスト

【避けるべき質問】
⚫︎誘導的な質問
⚫︎患者さんが頭を使わなければならない質問
⚫︎遠回しな質問

質問の仕方を間違えたり、思い込みによる質問を繰り返したりしたとしたら、患者さんの真実はいつまでもつかみ取れませんし、患者さんの生命力を消耗させてしまう結果になってしまいます。

患者さんに起こっている真実を把握するためには、遠回しの質問をしたり、答えを誘導したりせず、聞きたい事柄を患者さんの置かれた状況に合わせて正確に質問することが重要です。

患者さんの「何を観察するのか」

病気に向き合うときには「病気によって生じる生活の制限」に目を向け、患者さんに向き合うときには「患者さんの特徴と向き合う」ことに看護の鍵があります。

「患者さん固有のこまごましたことを観察する」ナイチンゲールの言葉

“看護師は患者の個別性を見分けなければならない。ある人は、なるべく他人の世話にならないで、苦しみを自分ひとりで苦しみたいと思う。”

“またある人は、絶えずいろいろ世話や同情をしてもらい、常にそばに誰かいてもらいたいと思う。こうした患者の個別性は、もっときちんと観察できるはずであり、またそれによって患者さんももっと満足させられるはずである。”

“というのは《ひとりでいる》ことのほかには何も願望がないという第一の患者に、にぎやかな付添人が押しつけられたり、第二の患者は放っておかれて、自分はないがしろにされていると思ったり、といったことがどちらもよくあるからである。”
-F.ナイチンゲール著(湯槇ます、薄井坦子ほか訳)『看護覚え書』/「十三、病人の観察」P196

これはとても大事な指摘で、患者さん(人間)には個別性があり、同じ痛みや辛さに対しても、患者さんの訴えは10人いれば10通りに異なります。我慢強い人、大げさにまくしたてる人、表現できない人、遠慮して言わない人など千差万別です。

看護師は患者さんの個別性とも向き合う仕事なのです。

患者さんは千差万別

患者さんの個性や性格はさまざまです。そのため、同じ痛みを感じている場合でも、患者さんの訴え方は異なります。ここでは「おなかが痛い」時の訴え方を比較してみます。

腹痛を訴える患者さん

【患者さんの個別性を把握する】
看護師は観察によって、患者さん一人ひとりに合った対応をすることが大切です。

病気に共通するこまごましたことを観察する

ナイチンゲールは「患者さん固有のこまごましたことを観察する」と同時に「病気に共通するこまごましたこと」を観察することで看護が成り立つと述べています。病気には、さまざまな種類がありますが、どのような病気になっても必ず生活に何らかの不自由が生じてきます。

看護師の援助を受け、ゆっくりと横になる患者さん

例えば痛くて寝返りがうてない、寝たきりで洗髪ができない、歩いてトイレまで行けないなど、症状が生活を脅かしていきます。看護では、こうした生活上の制限とその質について観察する必要があるのです。

患者さんを観察することは「病気の看護」でなはく「生活している人間の看護」であることに気づかされるでしょう。

看護を行うとき、患者さんの生活上の制限を観察して、患者さんを援助する必要があるのです。

「ナイチンゲールKOMIケア学会 第7回学術集会 20周年記念集会」のお知らせ

ナイチンゲールの銅像の写真
これまで「そもそも看護ってなんですか?ナイチンゲールから「看護」の原点を考えるKOMIケア」の連載をお読みいただきありがとうございます。ナイチンゲールKOMIケア学会では、6月25日、26日の2日間「ナイチンゲールKOMIケア学会 第7回学術集会」を開催します。

第7回学術集会は、本学会の前身であります“KOMI理論学会”の第1回目から数えて、ちょうど20回目に当たる記念すべき集会となります。

私たちは毎年、時代を半歩リードすることを目指して歩み続けてきました。第7回の学術集会においては、この20年の間に、ナイチンゲールKOMIケア理論がもつ理念を、様々な実践現場のケアの担い手たちが、どのように形作ってきたのかをお見せいたします。

ケアの実践は、優れた理念をかたちにすることによって進められていきます。理念の無いところには、優れた実践は生み出されません。ナイチンゲールKOMIケア理論を軸にした実践が、どのような展開を見せるのか、どうぞ存分に味わってみてください。

大会テーマ:理念をかたちに!-ナイチンゲールKOMIケア理論が創る実践のかたち-
http://komi.or.jp/gakkai-annai.html
会 期:平成28年6月25日(土)26日(日)
会 場:ソラシティカンファレンスセンター(東京・お茶の水駅:徒歩1分)

ナイチンゲールKOMIケア学会 第7回学術集会・集会長 金井 一薫

※KOMIケア学会2016パンフレットはコチラからダウンロードできます。

次回は、「KOMIケア学会2016」の模様をお伝えします。


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「ナイチンゲールKOMIケア学会」(http://komi.or.jp/index.html
同学会は、理事長である金井一薫がナイチンゲール思想を土台にして構築した「KOMIケア理論」により、現代の保健医療福祉の領域において21世紀型の実践を形作り、少子高齢社会を支える人材の育成に寄与することを目指します。

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