【連載】廃用症候群を知ろう

第2回 【廃用症候群】発症のメカニズムと臨床的特徴

解説 奈良 勲

金城大学大学院リハビリテーション学研究科長

廃用症候群の発症要因の一部については第1回目に解説した。ここでは、局所性、全身性、精神・神経性に分類して記述する。

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第1回 【廃用症候群とは?】発症の要因

1.局所性

局所性には、関節拘縮(以下、拘縮)、筋萎縮、骨萎縮、褥瘡などがある。拘縮(contracture)とは、関節可動域の角運動(angular movement)が制限された状態であるが、その程度が強固であり、通常の関節可動域運動だけでは、なかなか正常に戻らないケースである(運動は最終的に関節の角度の変化で生じる)。

関節角運動には、関節の構造、関節包、軟骨、骨格筋、靭帯、皮膚、血管、神経、ほかの結合組織などが関与している。それらの組織が単独で変調を来して拘縮が生じるケースもあるが、脳卒中、パーキンソン病、脳性麻痺、頭部外傷などの中枢神経系の疾患の多くは、固縮と痙縮(強剛と痙牲)を伴うことから、本質的に拘縮が生じやすい。

しかし、この症状自体の回復は困難であるため、不動の生活時間帯を短縮することや関節可動域運動あるいは自己ストレッチングの頻度を意識的に増やすことが必要である。

①関節拘縮

局所性の拘縮は、外部固定・内部固定であれ、骨折後に生じやすい。下肢の骨折や膝の人工関節、股関節全置換術などでは、歩行時の体重免荷の期間によっても生じることがある。中でも骨格筋では、不動による筋の伸張性低下に起因する。

前者は1週間の不動で起こり、後者は不動期間の延長に比例して顕著になるといわれている。不動による筋性拘縮発症メカニズムは、筋線維化や筋内膜のコラーゲン線維の伸縮性減少などに起因している。線維化については、不動1週間から徴候が認められ、不動4週間後からは、その期間の延長によって拘縮が顕著になる。

②筋萎縮

筋萎縮は、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症などで起こる。疾患自体の徴候であり、現代医学でも完治は不可能であるが、筋萎縮を最小限度に抑える筋力維持の対応は必要である。ギランバレー症候群は、末梢神経麻痺であるが、身体上位まで麻痺が進むと呼吸機能低下も生じ、回復が遅れる傾向がある。過度な筋力強化運動は、筋疲労を起こし、逆効果になり得るので要注意である。

③骨萎縮

骨萎縮の要因も多岐にわたり、骨粗鬆症、長期臥床、加齢、関節リウマチ、ステロイド服用などが挙げられる。女性の生涯における骨量の変化は、30歳頃にピークに至り、閉経後には骨代謝に関与しているエストロゲンが低下するため、骨量は急激に低下し、骨粗鬆症のリスクが高くなる。女性は男性よりも長寿の傾向があるが、転倒では大腿骨頸部骨折、尻もちでは腰椎の圧迫骨折、尾骨骨折が起きやすい。

骨の形成には、古い骨を新しい骨に置き換えるリモデリングが必要である。そのためには、カルシウム、リン、サイトカインなどが必要であるが、筋収縮によって生じる骨へのストレスや適度な負荷をかけることも大切である。

④褥瘡

褥瘡の要因には、長期臥床で良肢位を保たない、体位変換を行わないことにはじまり、皮膚の衛生状態の悪化、寝具の素材やその通気性、皮下脂肪の減少による皮膚と骨の凸との組織が少なくなり、皮膚の毛細血管の血流が低下することなどが挙げられる。したがって、体位変換や栄養状態への配慮、皮膚状態の観察を通した早期対処などに努めることが重要である。

2.全身性

全身性では、前頁に示した局所性の廃用症候群が混在しているケースもあるが、ここではその他の症候群について記述する。

①心肺機能低下

長期臥床では心臓のポンプ機能の衰弱に加えて、筋肉の収縮の減少から静脈還流が減少し、結果として心拍出量の減少が起こる。これにより浮腫などを生じやすくなる。

肺の換気量と血液量の関係は、体位により大きく変化する。これは体位により、肺気量および重力の影響を受ける肺血液量が変化することに起因している。安静臥床が続く状態では、換気血流のバランスがくずれ、酸素運搬能の低下を招く。

②起立性低血圧

起立性低血圧は、血圧の調整にも関与している自律神経の変調に起因すると考えられている。発症の原理としては、一次的には重力によって血液が下肢にたまってしまうことで、静脈還流が低下し、心拍出量が減少して動脈圧が低下することによる。

③消化器機能低下

食事を含めた生活上の関心事が少なくなり、さまざまな意欲の減退がみられる。食欲不振により、栄養摂取量不足の状態が続くことで低栄養が進行する。消化器を使用しない期間が長期に及ぶと消化吸収力は低下する。

3.精神・神経性

精神・神経系への影響としては、生活を他人に委ねなければならないことが増え、心理的な負担を感じたり、あるいは依存的になったりする状態が考えられる。これにより、下記のような症状が生じやすくなる。

・意欲の減退や喪失
・集中力の低下
・感情鈍麻
・うつ
・知的活動の減退
・認知症
・不眠
・せん妄

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