【連載】この心電図をみたら何をすべき?

第10回<読み方・対応編⑧> トルサード・ド・ポアンツ(TdP)

解説 大八木秀和

JCHO大阪病院循環器内科医長/日本循環器学会認定循環器専門医

トルサード・ド・ポアンツ。舌がもつれてしまいそうな名称ですよね。
読み方もトルサード・ド・ポアントとかポアンなどいろいろあます。

もともとの意味は、「棘波の捻れ」を意味するフランス語のようです。
私にはポアンと聞こえますが、特徴的な発音なので、だいたいどれでもみな同じことなのだと思ってください。

(1)心電図波形の特徴

多形性心室頻拍と呼ばれていることからもわかるように、心室性頻拍の一種です。波形をみるとQRS波がらせん状(捻じられたよう)にその極性と振幅が周期的に変化しています(図の赤線)。TdP波形が出たあと、すぐにもとの波形に戻ることも多いのですが、まれに心室細動に移行し、突然死の原因となるため注意が必要です。

トルサード・ド・ポアンツの波形図
図 トルサード・ド・ポアンツの波形

(2)どんな病態?

原因はいまだに解明されていませんが、徐脈や電解質異常、薬剤などによりQT延長を来すことがきっかけとして考えられているようです。QT延長を来すと、心筋の相対不応期の時間が長くなり、その結果、PVCが相対不応期に起こる確率が増えます。相対不応期は一般に心電図波形のT波の頂上あたりに差しかかった時間帯であり、このタイミングでPVCが起こるとR on Tから容易にTdPが起こります。

相対不応期と絶対不応期とは

筋肉が電気刺激を受け、収縮している状態で再度刺激を与えても、反応できない時間があり、これを不応期といいます。この不応期には、絶対不応期と相対不応期があり、絶対不応期とはどんなに大きな電気刺激を与えても筋肉が全く反応しない時期をいい、相対的不応期とは、ある一定以上の刺激なら筋肉が反応する時期をいいます。

なぜこんなことが起こるかというと、筋肉はさまざまな大きさのものが集まって1つの塊になっていますが、個々の筋肉はそれぞれ少しずつ性質が異なるからです。

すべての筋肉がいったん刺激で収縮する(これを脱分極という)と、今度は再度筋肉が収縮できるように細胞が分極して、もとの状態に戻ります。このもとの状態にすべてが一斉に同時に戻ればいいのですが、それぞれ個々の筋肉の性質の違いから、あるものはなかなかもとに戻らない、あるものはすぐにもとに戻るなど、これらの状態が混在する時期があります。これを相対的不応期といって、ある一定以上の刺激なら再度心筋が収縮してしまう状態です。

つまり、不安定な状態で刺激を加えられると、本来一斉に収縮するはずの筋肉がバラバラに収縮を始めます。すると、うまく収縮する細胞としない細胞が混在するため、心臓全体的にはうまく収縮できず、心室細動などが起こりやすくなります。

R on Tとは?

心筋が一度収縮して再分極する際に、心筋のあるものはすでに刺激で収縮できる状態であり、あるものはそうではない状態が混在し、万一ある一定以上の刺激が加わると不完全な収縮を始めるのですが、その相対不応期の時期が心電図ではT波の頂上あたりのときになります。このときに心室性期外収縮(PVC)など刺激が重なることをR on Tといいます。

(3)緊急度と看護師としての対応

見つけた際はすぐに医師を呼びましょう。知らせるときは、「○○さんに先ほどから心電図でTdPがみられています。いまのところ意識は清明、バイタルは特に問題ないのですが、今すぐ来ていただけますか?」と伝えましょう。

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