【連載】訪問看護ステーション起業物語

地域密着型の訪問看護リハビリステーションをついにスタート

解説 石川徳子(いしかわ とくこ)

一般社団法人空と花 訪問看護リハビリステーション 日本財団在宅看護センター 代表理事

「理想の訪問看護ステーションを開業したい!」という思いを実現した1人の看護師の物語です。そこには起業を目指す方に向けて、たくさんのヒントが詰まっています。


2016年3月30日、新しい訪問看護ステーション(以下、ステーション)が東京都荒川区町屋にオープンしました。

このステーションを立ち上げたのは、石川徳子さんという一人の看護師です。

病棟看護や教員などを経験してきて、「在宅看護」にこれからの希望を見出した彼女は、10年来の夢だったステーションの開業を実現するため、笹川記念保健協力財団(以下、笹川財団)の日本財団在宅看護センター起業家育成事業(以下、起業家育成事業)で開業スキルを磨き、準備を進めてきました。

その準備が実を結んだ開所日当日には、たくさんの研修仲間やかつての同僚、ステーションを支える仲間達が集まり、船出を祝いました。
今回は、その開所式の模様をレポートします。

空と花 訪問看護リハビリステーション2016年3月30日東京都荒川区町屋にて開所式が行われた

“空と花”に込められた在宅看護への想い

「この度、一般社団法人空と花 訪問看護リハビリステーション 日本財団在宅看護センターを立ち上げることができました」と始まった開所の挨拶。代表理事である石川徳子さんは、「空と花」という名前に込めた想いを次のように語りました。

「公益財団法人笹川記念保健協力財団(以下笹川財団)の「日本財団在宅看護センター起業家育成事業(以下、育成事業)」の受講中、私はこの荒川区で地区調査を行いました。ある朝、調査で回っているときに、高齢者の方が空を見上げながら花に水やりをしている姿をみて、一人でも多くの方にそんな生活を続けていただきたいなと思い、そんな願いをこめて、『空と花』という屋号をつけました」

スピーチをする石川徳子さんスピーチをする石川徳子さん

ママさん看護師が活躍できる場所へ

続いて、「わがセンターでは、子育て中のママさん看護師が、24時間365日この地域を守る活動をしていきます」と、ステーションのコンセプトを掲げました。そのコンセプトを決定づけたのは、娘さんのある一言だったようです。

「私の娘も看護師です。現在、結婚して夫の仕事の関係で、ベトナムで生活をしていましたが、出産のために帰国をしたときに『せっかく看護師の資格があるのに赤ちゃんがいるから働けない』とこぼしたんです。
その一言から、私は自分のステーションのコンセプトを“子育て中の若いママさん看護師が働けるステーション”にしようと思い立ちました。また、在宅看護師の高齢化が進むなか、若い在宅看護師が活躍するところも、わがセンターの特徴の一つといえます」


喜多悦子先生のメッセージ

「空と花」の代表理事である石川徳子さんは、笹川財団の起業家育成事業の第1期生で、同財団の理事長である喜多悦子先生より起業家マインドを学びました。

開所式では、喜多先生も出席され、これまでのご自身の経験と絡めながら、在宅看護に対する熱いメッセージを話してくださりました。

笹川記念保健協力財団理事長の喜多悦子先生笹川記念保健協力財団理事長の喜多悦子先生

発展途上国にみた看護師の重要性

喜多先生は、次のように語ります。

「私はもともと小児科医です。ですから高齢者とは程遠い仕事をしておりましたが、国際協力に入ったことで気づいたことがありました。それは発展途上国で働いてみると、どんな貧しい国であっても、それなりの病院はあるのですが、その病院に行ける人は、“歩いて行ける距離に住んでいる人”か“裕福な家の人”、また、女性にあっては“家や地域の長老が女性の受診を認めている人”だけでした。

そのような保健医療サービスが確立していない地域の人々の健康を守っていたのが看護師でした。日本のようにきちんとした看護教育を受けた人はほとんどいませんでしたが、それでも、ちょっと脈拍や血圧を測ることができる看護師が一人いるかいないかで、地域の人々の健康が大きく変わってくるのです。

その現状を目の当たりにして、日本行う国際活動に、もっと多くの看護師の関与があればと思ったことが、看護分野に情熱を注ぐきっかけとなりました。その後、看護教育に関与するようになり、いくつかの日本の地域社会を見せていただくなかで、ますます在宅看護の重要性を認識しました。

その後、ご縁をいただいた笹川記念保健協力財団で、2014年から、8カ月にわたる、日本財団在宅看護センター起業家育成事業のを立ち上げました。その第1期生が石川徳子さんでした」

看護師が表にたつ医療を在宅看護に

最後に、石川さんへエールを送った喜多先生の言葉には、石川さんだけでなく、これから在宅看護を目指す看護師すべてに向けられているようでした。

「死を受け入れること。それは今までの日本の保健医療教育には、ほとんどありませんでした。人々が安心して自分の生活圏で死を受け入れていく教育と申せば大袈裟ですが、そのお手伝いができるのも在宅看護師の重要な役割だと考えています。さらに、もう一つ重要なことは、高齢住民や病気を持った人(患者)のリハビリテーションなど多岐にわたるニーズをコーディネートする役割こそ、看護職に向いているということです。

看護師が、小さくとも、ある地域社会に安全と安心をもたらすということを念頭に、看護師が“表にみえる医療”となるよう、地域の人たちに認知され、感謝される活動をしていただきたいと思います」

「空と花」在宅看護師としての考え

まだ走り出したばかりのステーションですが、「地域の皆さんが安心して住みなれた家で暮らしていけるケアを提供すること。そして、在宅看取り、在宅での小児ケアにも寄与していきたい」と考えている石川さんは、未来もしっかりと見据えています。

最後に、思い描くステーション像を石川さんに聞いてみると、情熱を込めた強い想いで次のように一言。
「礼節をわきまえ、品格を備え、感謝の気持ちを忘れないステーションにしたいですね」

この開所式を迎えた3月30日は、石川さんの誕生日。石川さんにとって、一生忘れることのできない日になりました。

石川さんの娘さんとお孫さん開所式に参加した、石川さんの娘さんとお孫さん


次回からは、全10回にわたって、石川さんの開業までの足跡を辿ります。

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