【連載】Newsのツボ

感染症が発症したときに重要なことは?

解説 小林寅喆

東邦大学看護学部感染制御学 教授

新興感染症と再興感染症の流行の理由

社会の近代化により、重篤な感染症はほぼ制圧されたと考えられていた1970年代初頭。しかし、その数年後には、人類がかつて経験したことのない感染症の病原体が発見され、それによる流行が起こりました。

この感染症を新興感染症といい、これには、現在西アフリカで驚異的な感染拡大をみせているエボラ出血熱をはじめ、腸管出血性大腸菌性感染症(O157)、高病原性鳥インフルエンザ、重症急性呼
吸器症候群(SARS)など、近年人々の生命を脅かしている疾患が名を連ねます。2013年から国内で確認され、現在も注意が促されている、フタトゲチマダニを媒介とする重症熱性血小板減少症候群(SFTS)もこれらに含まれます。

一方、一度制圧されていた感染症が再び流行した再興感染症もあります。結核やジフテリア、黄熱、新型インフルエンザ、マラリアなどがあり、いま社会を騒がせているデング熱や、13年に大流行した風疹も、この再興感染症です。

これらの感染症が流行に至った経緯はおもに2つ。まず1つが、年々急増している人・物の移動です。デング熱やSFTSなどは昆虫を媒介として感染します。この昆虫は、荷物に紛れ込んで海外から国内に上陸し、気候の温暖化で生息適地になった場所に住み着き、感染をもたらしたとされます。海外で感染した人が発症前に帰国し、国内で発症、感染が広がるケースもあります。

2つめは、ワクチン接種戦略の失敗。典型的な例が風疹です。ワクチンの定期接種が継続的に行われず、また男性への接種が後回しになったことなどにより、抗体を持たない層(30~40歳代・男性)が増えたところに、再流行が発生。感染者を急増させることになったのです。

病原体に応じて感染経路の遮断を徹底

これら感染症が発症した場合、その拡大を防ぐために最も重要なことは感染経路の遮断です。感染経路には、空気感染、飛沫感染、接触感染、昆虫媒介感染があります。例えば、MRSAなら接触感染、SARSコロナウィルスは飛沫感染、風疹も飛沫感染。インフルエンザの場合は飛沫感染と接触感染の両方です。

このように病原体ごとに経路が異なるため、それに合った遮断が必要になります。例えば、飛沫感染に対しては、マスクの着用が第一で、感染源との間隔の保持も必要。接触感染であれば、手袋の着用とともに手指衛生が最も重要になります。ですから、今話題になっているデング熱やSFTSなどは、昆虫媒介感染なので、たとえ感染者が来院したとしても、特別な感染対策は必要ないということになります。

また、病原体ごとの特性を知っておくことも大切です。ご存知のとおり、毎年流行が起こるノロウイルスは、他の病原体と異なり、アルコールによる消毒では効果が期待できません。次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いる必要があります。

感染症の原因となる病原体ごとに感染経路や特性を正確に把握し、それを遮断・除去するために何が求められるかを考え、行動することが重要です。さらに感染対策を行う上で、看護師のみなさんに気に留めてほしいのは、「身体で覚える」ということです。例えば、手指衛生なら、何か処置をしたら手を洗う──これが一連の動作となることが大切。

「手を洗わなければ気持ち悪い」という感覚になってほしいのです。手順の一つとして頭で覚えても、忘れてしまいます。感染対策は、身体で覚えて、頭でその根拠を考えるものと認識してください。

病原体は目に見えないだけに、普段はその存在を忘れてしまいがちです。しかし、見えないものを見るという気持ちをもてば、自ずと感染対策に関心が向くはず。私の講義では、学生たちが自分の手に付着している細菌を培養し実際に見ることで、「見えないけれど、確実に存在する」ことを認識し、手指衛生を習慣化しています。

感染症について困ったこと、知りたいことはある?

●患者さんや家族など感染する人がいるかもしれないので、やっぱり関心はあります。(神奈川県 けいちゃ)

●感染管理担当者なので、アウトブレイクが発生したときや、結核患者さんが入院していたときには苦労しました。感染予防策をスタッフに遵守させるポイントが知りたいです。(大阪府 suzu)

●再興感染症について、知識としては学んでいるが、まだ実際に患者さんに対応をしたことがないので困りそう……。(愛知県 まあち)

●デング熱は、今まで聞いたこともなければ、日本で罹った人にも遭遇したことがなかったので、関心をもっています。(兵庫県 トマト)

●とりあえずデング熱が日本に入ってきた感染経路が気になりますね。(千葉県 はっちゃん)

●エボラ出血熱も気になる。こちらも詳しく教えて欲しい。(埼玉県 へリコプ)

●病室に空きがないときに、感染症に対応するため隔離が必要になり、とても困ったことがあります。(奈良県 金魚)

●デング熱の感染はどこまで拡大するのでしょうか。殺虫剤を散布することによる健康被害が心配で、心臓などに悪影響が出たり、呼吸状態も悪化する恐れがある
ことに対して、なんら注意喚起がされていないことが疑問です。(東京都 mana)

●身近な場面で感染者と接触する機会が、いつあってもおかしくないと思う。そのため、感染者が出た都道府県と人数は注意して見るようにしている。(滋賀県 桜花)

●感染症が発生した場合、拡大させず最小限に留めようと努力しても、避けられない……どうしたらよいのかと毎回悩む。(秋田県 EIGHT∞)

●過去に家族の中からデング熱感染・発症者が出たことがあるので他人事ではない。気になる。(愛知県 ZR400)

●デング熱が広がり免疫力の弱い患者さんが感染したことを考えると、重症化の恐れもあり、怖いなと感じています。(静岡県 さき)

●以前SARSの問題が発生したとき、小規模なクリニック勤務だったので、大きな病院ほどの装備や設備もなく、経費もかけられず、対応・対策に困った。事務職との連携にも苦労した。(東京都 kuma)

●エボラ出血熱のような致死率の高い感染症についても、その潜伏期間、対処方法、最新の医学情報などを合わせて知りたいです。(岡山県 ヒッキー)

●感染管理認定看護師なので、職員や患者さんの質問などに答える立場。今回のニュースには関心をもっています。(山口県 山陰の人)

(ナース専科マガジン2014年11月号より転載)

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