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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第39回 再発という困難をどのように乗り越えていくのか -がん患者のレジリエンス-

解説 高橋 奈津子(たかはし なつこ)

聖路加国際大学看護学科 助教 認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン 運営委員

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。
そこで、患者の病いの語りをデータベースとして提供しているDIPEx-Japanのウェブサイトから、普段はなかなか耳にすることができない患者の気持ち・思い・考えを紹介しながら、よりよい看護のあり方について、読者の皆さんとともに考えてみたいと思います。


がんの再発は、がんの告知よりも受け入れがたい面があります。しかし、ほとんどのがん体験者はその現実を自分なりに受けとめて、その後、繰り返される治療(緩和ケアも含む)に前向きに臨んでいるのではないでしょうか。このように困難に適応していく力を看護師はどのように引き出し支援していけるのでしょうか?


がん患者のレジリエンス(Resilience)とは?

39歳の時に乳がんと診断された女性(インタビュー時44歳)

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まず転移を覚悟していたというのと、自分の中で少しこう体調が良くなったので、気分が上がっていたので、多少それをいろんな角度で受け入れられる土壌があったっていうんですかね。それと、いろいろ民間療法やって、「再発しないように頑張ろう、頑張ろう。気持ちを前向きに持てば」とかって言ってたんですけれども、私の場合、もう転移してしまったので、「ほら、もう転移してしまったじゃないか。だから、これから転移するかもしれないっていう恐怖はなくなった」っていうか。まあ、「転移はいつかするだろう。でも、その中間が怖いなあ」というのがあったので、「ああ、もう転移しちゃったらしょうがない」って。次のターゲット、「じゃあ、次治療どうするか」とか。「次のターゲットに向かえばいいや」っていうふうに何か気持ちが思えたのは救いだったのかもしれないですね。
――「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン > 乳がん語り」より

32歳の時に乳がんと診断された女性(インタビュー時34歳)

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私は、こう…崖っぷちに立たされたというか、何かハンマーか何かで頭を殴られたような感覚というか。最初の告知のときよりもすごくショックでしたね。~中略~
でも、もうすっごい泣いて泣いて、車に戻ってお母さんにまず電話して、そしたら何か「代わってあげたいね」って母が言ってくれて。「でも、まず、負げねぇで頑張っぺぇし」って、訛りなんですけど、言ってくれて。~中略~(Rちゃんが)「転移性肝がんでいっぱいそのラジオ波でよくなっている人いっぱいいるよ」って。「だから、諦めなくていいんだよ」って。ああ、何か、こう生きる希望がまだあったんだっていうふうに、自分でちょっとこう落ち着いて。だんだんそのRちゃんと話をしていたら落ち着けましたね。
――「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン > 乳がん語り」より


看護へのフィードバック

レジリエンスという語は、もともと跳ね返る、跳ね返すという意味で使用されていましたが、その後、精神医療や教育分野において精神的柔軟性や回復力を示す概念として拡がりをみせています。十分なコンセンサスを得られた定義はありませんが、直面する困難に適応する力、しなやかな強さともいえ、がん看護分野でも近年、着目されています。

 がん患者さんは、がん告知から治療に伴い様々な困難な出来事に直面します。特に再発は、初発時に比べより生命の危険を感じ、不安が高まる場合が多いと考えられます。再発に対する受けとめ方は、人によって様々です。それまでの人生経験に加え、初発時の経験から得られたその人の強みが影響するでしょう。だからこそ、看護師はその人の経験を知ることが重要です。

最初の患者さんは、転移の覚悟はしていたものの、1年を待たずに再発したことにショックを受けますが、転移がわかったことで、今後、転移するかもしれないという恐怖はなくなったと気持ちを切り替えました。次の患者さんは思いがけない肝転移という現実に大きく動揺しますが、母や友人の言葉で精神的な落ち着きを取り戻し、次の治療に臨もうとしています。このような強さは患者さん一人ひとりの内にあるのです。

 看護師は、まず、患者さんの困難に適応する力を信じなくてはなりません。その人のうちにある強さを引き出すために、身体的・精神的苦痛の緩和につとめることや、患者さんがその人なりの新たな希望が見いだせるよう見守り、支援することが求められるのではないでしょうか。


「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)
英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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