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【連載】下肢(あし)をみる!

深部静脈血栓症(DVT)の看護|原因・症状・予防法

解説 小島 淳夫

東名厚木病院 医務部長 血管外科 医師

大地震後に頻発したエコノミークラス症候群としても注目を集める「深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PTE)」。
実は、入院患者のほとんどが危険因子を有しています。原因・症状から治療・検査・予防法まで解説します。


【目次】

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深部静脈血栓症(DVT)とは?

深部静脈血栓症(deep veinthrombosis:DVT)は、四肢(通常は下肢)の深部静脈(筋膜下静脈)に血栓が形成される病態です。

この血栓が遊離して静脈血流にのって肺に移動し、肺動脈を閉塞すると肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)になります。肺血栓塞栓症は無症状の場合もありますが、呼吸困難やショック状態などに陥り心停止にいたることもあります。

急激に発症する重症の急性肺塞栓症(acute pulmonary embolism:APE)では致死率が32%にもなります。
しかも、死亡例のうち43%が発症後1時間以内の突然死です(文献1参照)。

APEは急性期診断が難しいため初期治療が遅れ、死亡率が高い要因となっています(文献2参照)。
そこで、前兆的な症状や症候を見逃さないこと、さらには発症を予防することが不可欠となるのです。

肺血栓塞栓症の塞栓源の多くは、下肢と骨盤内の深部静脈血栓症であることから、深部静脈血栓症を予防することが即ち肺血栓塞栓症予防につながります。

肺血栓塞栓症(PTE) :血栓が遊離して静脈血流にのって肺に移動し、肺動脈を閉塞する病態。原因のほとんどが深部静脈血栓症であることから、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は1つの連続した病態、さらには深部静脈血栓症の合併症が肺血栓塞栓症であると捉えられている。

原因は?

静脈血栓形成の3大誘発因子

血栓が形成される基本的な概念として、ウィルヒョウ(Virchow)が提唱した、

①血液の停滞
②血管内皮の障害
③血液凝固能の亢進

の3徴が知られています(文献3参照)。

これらの因子は、後天性因子と先天性因子に分類されます。

後天性因子として、各種手術・検査・治療・疾患、長期臥床などがあり、入院患者さんのほとんどが危険因子を有していることになります。

■フリーフロート血栓とは

すべての深部静脈血栓症が肺血栓塞栓症を起こすとは限りません。血管が完全に閉塞した場合、血栓はその場にとどまり、遊離しにくく肺まで飛ぶことは少なくなります。ただし、血流が停滞するため、さまざまな症状が現れます。

一方で、血管内に浮き上がっているような血栓では遊離しやすく、肺血栓塞栓症の原因になり得ます。

こうした血栓を非閉塞型浮遊血栓(フリーフロート血栓)といいます。この非閉塞型浮遊血栓では、血管を完全に閉塞しないため血流が保たれているので、症状はあまり現れません。

そのため、肺血栓塞栓症を起こしやすい深部静脈血栓症は無症候性のものが多くなります

■肺血栓塞栓症を起こしやすい静脈

深部静脈血栓症の好発部位は、下腿筋静脈、特にヒラメ筋静脈、そして左腸骨静脈です。なかでも、ヒラメ筋静脈などから中枢へ進展して大きくなったフリーフロート血栓は肺血栓塞栓症による突然死の塞栓源として多いことが知られています。

左腸骨静脈は肺血栓塞栓症に至るケースは少ないといわれています。左腸骨静脈は腰椎の椎体と右腸骨動脈に挟まれているため静脈還流が障害されやすく(腸骨静脈圧迫症候群:iliac compression)、血栓閉塞して下向きに血栓が進展し、その場でとどまっていることが多いからです。

肺血栓塞栓症を起こしやすいヒラメ筋静脈

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