【連載】実践!エンゼルケア

第21回 部位別のエンゼルメイク(3)気道切開部やペースメーカー

執筆 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

臨終を迎えた患者さんの人格や尊厳が失われないよう、ご遺体がみなさんの手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


▼エンゼルケアについて、まとめて読むならコチラ
エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など


 今回は「気管切開部」と「ペースメーカー」の対応についてです。気管は、胃腸とともに腐敗が進む肺と直結している部分であり、切開部から異臭がもれる可能性があるためしっかり密閉します。また、目にふれやすい場所であることを意識してカバーします。

気管切開部への対応のポイント

・気切部の皮膚とともに気管も刻々と脆弱になっており、いたみやすい部分です。痰など分泌物の吸引は、粘膜を傷つけないように配慮して行います。
・生命と直結するイメージである「呼吸」に関わっている部分の器具を外すときなどは、ご家族にはとくにていねいな言葉かけをします。
・衣類の準備の際に、気管切開部がカバーできるようなスタンドカラーやワイシャツ、スカーフなどの提案を事前に看護計画に入れておきます。

気管切開部のカバー説明イラスト

気管切開部のメイク後のカバー案イラスト

気管切開部の対応手順

1)気切部をカバーしていたガーゼを外す:お過ごし(お別れ)の時間の直前に、気管切開部のチューブを外した上に乾燥防止として覆ったガーゼを外します。ご家族へは、「のどの部分をきれいにしてテープなどで閉じたいと思います」などと伝えましょう。


2)静かに痰を吸引する:粘膜を傷つけないように静かにそっと痰を吸引します。
3)創部およびその周囲をアルコール綿で清拭:腐敗の進行によって肺から臭気がもれる可能性がありますので、気切部を密封します。
4)切開の創部を合わせて皮膚接合用テープを貼る(イラスト(1)):傷口に対して垂直に貼ります。
5)4)の上にフィルム剤を貼る(イラスト(2)):密封を強化し、創部を外気から遮断して乾燥を防ぎます。
6)肌色の不織布か絆創膏を貼る(イラスト(3)):創部を目立たなくするため肌色に近い不織物テープか絆創膏などを貼ります。そうすることで、そのあとにファンデーションを使う場合にも整えやすくなります。
7)スカーフなど準備されていれば活用する(イラスト(4)):場合によってスカーフなどでカバーしましょう。

ペースメーカーがある場合の対応

ペースメーカーがある場合の対応説明イラスト

 ペースメーカーは、火葬炉内で音をともなう「破裂」(爆発ではなく破裂)が起きる場合がありますが、破裂したとしても実害はありません。ですから、火葬のためにペースメーカーを取り除く必要はありません。

 ただ、火葬を担当する方たちは対応の際に配慮すべき点がありますから、ペースメーカーが入っている場合には、ご家族から火葬場の方に伝えていただくよう、必ず説明します。その旨を、ご家族へお渡しするパンフレットに記載しておくのもよいでしょう。

鼻出血などの体液もれへの対処法

 臨終後の血液は、止まりにくい状態になっています。そのため鼻・耳やほかの部位からの出血はなかなか止まりません。もれのあるところにガーゼやティッシュペーパー、紙おむつをカットしたものなどをあて、汚れたら適宜取り換えて対処します。

鼻出血などの体液もれへの対処法説明イラスト

1)ガーゼ・ティッシュペーパー・カットした紙おむつなどで血液を吸収させます。こすらずにそっとあてるようにします。血液が流れ落ち、衣類や寝具を汚染する心配があるときは、紙おむつやタオルを敷きます(イラスト(1))。
2)肌に付着した血液は、肌に負担のないように水を湿らせたガーゼや脱脂綿、柔らかい布などで静かにやさしく拭います(イラスト(2))。
3)使用したもの(拭ったガーゼなどや手袋)は、手袋を装着したままビニール袋に入れ、装着した手袋を袖口のふちの部分を持って裏返しながら外し、ビニール袋に入れて口を閉じて捨てます。

※写真付きで解説している「小林光恵,著:ナースのための決定版エンゼルケア(学研メディカル秀潤社)」でも詳しくご紹介しています。

 次回は「部位別のエンゼルメイク(4)皮膚に赤黒さや黄疸などがある場合」について解説します。


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