【連載】伊藤麻紀先生の『ストーマケアはじめの一歩』

第10回 ストーマ早期合併症・晩期合併症の種類とケア

執筆 伊藤 麻紀(いとう まき)

日本赤十字社医療センター 循環器・泌尿器科病棟/皮膚・排泄ケア認定看護師

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【目次】


早期合併症

ストーマの早期合併症は、循環障害、壊死、脱落、粘膜皮膚接合部離解、出血などがあります。また、ウロストミーでは、尿路の各種通過障害、尿路感染症、腎不全、尿路結石などが起こります。

ストーマの循環障害、粘膜脱落、壊死

循環障害はストーマ造設術直後から発生するリスクがあります。原因は、1)腹壁を通して腸管を体外へ引っ張り上げる際の緊張が強いとき、2)手術操作による腸管の辺縁血管の損傷や切離、3)術後ストーマ浮腫による腸間膜の圧迫、などが考えられます。
 
循環障害を起こしている範囲と造設した腸管によって経過や対処が異なります。イレオストミー(小腸ストーマ)の場合は、血流が豊富なため、全身状態が改善すれば数日で回復する可能性があります。

コロストミー(結腸ストーマ)の場合は血流が乏しく、粘膜全体に循環障害が生じた場合は腹腔内に粘膜が脱落し、腹膜炎を起こすため、再造設が必要となることがあります。血流障害が局所的で壊死した粘膜部分が剥脱しても、腸管の漿膜筋層部分と腹壁との癒合が保たれている場合は、保存的な治療が可能となります。

 循環障害の有無を確かめるには粘膜の色と硬さ、およびその変化を注意深くモニタリングします。循環障害が生じている場合は、術直後より粘膜が暗赤色あるいは暗紫色となり、硬さも増します。
 
特に変化が起こりやすい術直後は、ストーマ粘膜を観察しやすい透明な装具を使用し、短期間で装具交換を行います。排泄物で粘膜が見えにくい場合は、1~2日ごとに装具交換を行うことも検討します。

粘膜皮膚接合部離開

粘膜皮膚接合部離開は、ストーマ造設時の汚染による皮膚粘膜縫合部直下の膿瘍形成、循環障害による局所的な壊死、引き上げた腸管の直径に比較して腹壁にあけた皮膚の孔が大きく、縫合した腸管に著しい張力がかかる場合に発生します。

もともと、皮膚粘膜接合部は腸粘液や便の排出により汚染される汚染創であり、炎症や感染を起こしやすい環境にあります。糖尿病や低栄養などの基礎疾患があると、感染しやすく、肉芽形成がされにくい創傷治癒遅延が起こりやすい状態となります。

離開すると、皮下組織が排泄物で汚染されるため、治癒には時間がかかります。腹直筋腱膜と腸管は癒合しているため、再手術の必要性はありませんが、瘢痕を形成して治癒に至る二次治癒の経過をたどるため、将来的にストーマ狭窄となる可能性が高くなります。

観察のポイントは、装具交換時に粘膜皮膚接合部の癒合状態、発赤・腫脹・疼痛の有無を確認します。発赤・疼痛がある部分に腫脹や波動が生じている場合には、皮下膿瘍を形成している可能性があります。部分的に抜糸を行い、ドレナージを検討する必要があるため、主治医へ報告し、指示を仰ぎましょう。 

離開が生じた場合は、ストーマケアと創傷管理を並行して行います。粘膜皮膚接合部は洗浄し、排泄物からの汚染を防ぐ必要があります。創傷被覆材や薬剤を使用する場合もあるため、主治医の指示を仰ぎます。

装具は、ストーマおよびストーマ周囲が直視できるように、短期交換用装具で連日交換を行うか、二品系装具を選択します。離開部分を面板で覆ってしまうと、離開部分からの浸出液が漏れる原因となります。

そのため、炎症がある場合や浸出液が多い時期の面板のストーマ孔は、ストーマのサイズではなく、離開部分を含めたサイズでカットします。創部の肉芽形成が進み、離開部の深さが浅くなり、浸出液も少ない場合は、離開部分を面板で覆い、創傷治癒を促すことも検討します。
 

陥没

陥没はストーマが皮膚より下に落ち込んでしまう状態をいいます。ストーマの高さが不足している、術後早期に循環障害が発生した、脱落した、腸管と腹壁との固定が悪く、ストーマが腹腔内へ引き込まれてしまう、などといった場合に発生します。

陥没した場合、再手術等にはなりませんが、管理が困難になりやすく、装具やアクセサリーの選択に難渋する可能性もあります。

出血

ストーマは造設直後より浮腫が生じ、ストーマ粘膜も傷つきやすくなります。浮腫が増強することによりうっ血が生じたり、場合によっては粘膜から出血することもあります。

静脈性の止血可能な出血であれば圧迫止血を行うほか、粉状皮膚保護材による保護を行い、ストーマ袋や面板との接触による外傷が発生しないよう、愛護的ケアに努めます。

晩期合併症

退院後以降、社会生活を営むストーマ保有者に発生する可能性がある晩期合併症について解説します。

ストーマ狭窄(図1)

術後、粘膜皮膚接合部の離開やストーマ粘膜の血流障害が起こった後、周囲の皮膚や皮下組織に瘢痕が形成されて治癒します。瘢痕は、時間の経過とともに強固な肉芽組織となるため、ストーマ口も細くなります。便の硬さによっては出にくくなるほか、食塊で腸が塞がるフードブロッケージを起こすことがあります。

対処として、狭窄部位と状況を確認し、フィンガーブジー※を行います。患者さん自身が行えるように指導することが必要ですが、怖くてできない患者さんもいます。その場合は、排便時に適宜ストーマ口が広がるように食事などで便性を硬めに調整します。

※ストーマ口から指をゆっくり挿入し、狭窄部を徐々に広げていく方法。小指から挿入していき、小指の第二関節まで挿入できたら、第4指、第3指と変更しストーマ口を広げていく。

図1 ストーマ狭窄

ストーマ陥没(図2)

血流障害によりストーマ粘膜の一部が脱落し、ストーマ口が皮膚より低い位置になってしまった場合や、腹壁の脂肪層の中にストーマが埋まった状態となり、相対的に高さがなくなった状態を指します。

高さのないストーマは面板の下に排泄物が潜り込みやすく、漏れも生じやすいため、凸面装具を使用するなど、装具の選択を工夫します。

図2 ストーマ陥没

ストーマ脱出

造設時に比べ、ストーマが外翻して飛び出した状態です。原因としては、筋膜や腹部に開口したストーマ孔が大きすぎる、遊離した腸管が長すぎる、腹水貯留や腹腔内にがんが転移したことによる腹腔内圧の上昇などがあげられます。

係蹄式ストーマでは、他のストーマに比べて発生しやすくなります。また、一度脱出すると再発のリスクが高まります。腹圧がかからないように臥床することでもとに戻る場合もありますが、戻らない場合は、医師による処置が必要です。

脱出した粘膜は面板やストーマ袋と接触することで、損傷しやすい状態です。そのため、面板孔は脱出した時の大きさでカットし、露出する周囲皮膚は粉状皮膚保護材や練状皮膚保護材で保護します。さらに、粘膜そのものにも粉状皮膚保護材を散布し、ストーマ袋との接触による外傷を予防する処置を行い、経過をみていきます。

脱出を頻回に繰り返す場合は再造設も考慮されますが、腹腔内へのがんの転移など、状況により困難な場合には、保存的なケアを行います。