【連載】検査早わかりファイル

胸腔穿刺・ドレナージの目的と看護のポイント

執筆 堀之内秀仁

国立がん研究センター中央病院  呼吸器内科 医長/医療連携室 室長 国立がん研究センター 人材育成センター副センター長/専門教育企画室長

胸腔穿刺・ドレナージとは

呼吸器系疾患の検査のなかで、最も頻繁に実施される侵襲的検査が胸腔穿刺です。悪性腫瘍、肺炎、結核、心不全などさまざまな病態で胸水が貯留し、その原疾患の診断のために胸水を採取するのが胸腔穿刺です。比較的安全に実施でき、ベッドサイドで、研修医などでも実施することが多い検査です。

 一方、胸水貯留に対する処置に胸腔ドレナージがあります。胸腔穿刺とは異なり、より太く、薬剤投与なども可能なチェストチューブを挿入・留置します。胸腔穿刺に比べると侵襲的で頻度も少ないのですが、胸水検査ができるだけでなく、治療的な意味合いで胸水を除去することが可能となります。また、胸腔内に抗がん剤、癒着剤などを注入し、がんや気胸などに対する局所治療を実施することも可能です。

どんな検査?

検査を行う目的

胸腔穿刺では、胸水を取り出し、各種検査に提出することが目的となります。一方、胸腔ドレナージでは、胸水検査ができるだけでなく、挿入部付近から胸膜生検と呼ばれる組織検査を追加することができ、さらにそのままチューブを留置して胸水治療にもつなげることができます。

胸腔穿刺・ドレナージの禁忌
* 患者さんの状態:処置の最中に体位を保つことができない、強い出血傾向がある
* 穿刺に関する条件:穿刺部位に感染がある場合、胸水がエコーで安全に確認できないほど少ない場合

どこを見るか?

検査によって取り出される胸水は、通常、外観チェック、細胞数検査、生化学検査、病理細胞診検査、各種細菌検査に提出されます。

どんな器具を使う?

1 胸腔穿刺に用いる器具

肋骨の間に穿刺し、胸水を抜き取ります。

穿刺針(サーフロー)

2 胸腔ドレナージに用いる器具

肋間を切開し、チェストチューブ(写真上)を挿入します。挿入したチューブをドレナージバッグにつなぎます(写真下)。

チェストチューブ

ドレナージバッグ
ドレナージバッグ メラサキューム®
排出液や分泌物などを持続的、または間欠的に体外へ吸引する電動式低圧吸引器にドレナージバッグをつないだ図

どう見える?

1 外観

健常者では胸水は穿刺できるほど貯留していません。心不全や腎不全に伴う胸水は淡黄色透明です。何らかの悪性疾患や炎症性疾患がある場合には、多くの場合、血性になります。細菌感染がある場合には、白色混濁が強まり膿のような外観になります。稀な病態として乳び胸などではミルクのような乳びが貯留する場合もあります。

2 細胞数・生化学検査

胸水に含まれる細胞の数や分類をチェックすることにより、その原因に迫ることが可能です。細胞数が増加していることは何らかの炎症性(感染、外傷) ・腫瘍性疾患の存在を示唆します。細胞のなかでも、好中球が増加する場合には細菌感染が疑われ、リンパ球が増加する場合には結核、悪性疾患などの可能性が高まります。

また、生化学検査では、pH、糖、蛋白、LDH(乳酸脱水素酵素)、ADA(アデノシンアミナーゼ)などが重要です。細菌感染ではpHや糖が低下し、蛋白やLDHが増加します。一方結核感染ではADAの上昇を伴います。

3 病理細胞診

悪性疾患を疑う場合に実施されます。胸水内に含まれる細胞をパパニコロー染色などでチェックし、がん細胞が混入していないかをチェックします。

4 細菌検査

感染性疾患を疑う場合に実施されます。胸水中には通常細菌は存在せず、一般細菌が顕微鏡で確認できれば、病原性が疑われます。一方、結核性胸膜炎などに伴う胸水の場合は、細菌感染と異なり結核菌が検出されないことが多いのが特徴です。

5 滲出性か漏出性かの鑑別

胸水だけでなく、腹水などでも、性状が滲出性か漏出性かがその後の診断を大きく左右します。

■滲出性胸水と漏出性胸水の鑑別ポイント

滲出性胸水と漏出性胸水の鑑別のポイント

Nursing Point

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胸水検査の結果は、患者さんの臨床情報と同時に吟味する必要があります。心不全や腎不全を疑っている場合には、胸水の外観は黄色透明で、漏出性胸水を呈することが多いといえます。

 一方、感染性や悪性腫瘍に伴う胸水では、滲出性となることが多く見られます。そのため、滲出性胸水か漏出性胸水かの鑑別は非常に重要となります。その基本情報に加え、細菌感染であれば病原体の検出が、結核であればリンパ球増加やADA上昇などの所見が、悪性であれば細胞診でのがん細胞検出が診断のポイントとなります。

検査前にこれだけは注意

処置前には、処置に必要な物品の準備と患者さんのコンディショニングの確認が重要となります。特に穿刺針やチェストチューブは、必要に応じて使い分けられるように複数のサイズを準備し、さらに清潔野を確保するための覆布などもセットで用意することが多いでしょう。

一方、患者さんには可能であれば座位をとってもらうので、1時間程度は同じ姿勢が維持できるように枕や食事用のテーブルなどで体を支えられるように準備します。ほとんどの患者さんにとって初めての検査であることが多く、あらかじめ処置の概略を話し、疼痛に対してどのような対処をするかについてや局所麻酔の使用などの説明を行っておきましょう。

検査後はここに注意

胸腔穿刺、ドレナージの合併症で、頻度の多いものとして出血や局所の感染があり、頻度は少ないのですが重篤なものとして再膨張性肺水腫があります。出血や局所の感染については、処置当日から穿刺部の状態を観察することで早期発見、対処が可能です。

一方、再膨張性肺水腫は、長期間貯留していた胸水を、1時間当たり1000~1500mL以上のペースで、特に陰圧をかけてドレナージした場合に発生します。咳嗽や呼吸困難が出現し、SpO2低下や胸部X線写真での肺水腫が存在すれば確定的です。残念ながら発症してしまった場合には、酸素投与といった呼吸管理などのほか明確に効果を示す治療法がないため、胸水を急激にドレナージしないように観察を行うことと必要に応じたチェストチューブのクランプが特に大切になります。

胸腔穿刺・ドレナージのナーシングステップ

Step1 胸水の外観、各種検査結果から、滲出性胸水、漏出性胸水を鑑別する

Step2 滲出性、漏出性の鑑別に加えて、追加検査(細菌検査、ADA、病理細胞診)などを実施し、確定診断につなげる

Step3 診断に基づき、原疾患の治療の実施や、胸腔ドレナージの適応・胸腔内局所治療の適応について検討する

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