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【連載】第53回日本小児外科学会学術集会ランチョンセミナー レポート

第1回 小児在宅医療における適切な胃瘻栄養とは?ーこども病院・患者家族団体・医療機器メーカーが協同して行う小児在宅医療へのアプローチ【PR】

解説 高見澤 滋

長野県立病院機構長野県立こども病院 小児外科 部長

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共催:第53 回日本小児外科学会学術集会/第24 回アジア小児外科学会/ハリヤード・ヘルスケア・インク

2016 年5月 24 ~ 26 日、第53 回日本小児外科学会学術集会・第24 回アジア小児外科学会が開催されました。「『わ』をもって尊しとなす―小児外科医療の和・輪・倭―」というテーマのもと、24 日に行われたランチョンセミナー「こども病院・患者家族団体・医療機器メーカーが協同して行う小児在宅医療へのアプローチ」では、在宅での胃瘻栄養管理をスムーズに行うためのエッセンスが紹介されました。

※本記事における製品に関する記載内容につきましては、講師の個人的見解に基づくものです。ご使用の際は、該当する添付文書をお読みください。


小児在宅医療における適切な胃瘻栄養とは?

 講師の高見澤 滋先生は小児外科医として、病院での診療とともに在宅医療にも力を注いできました。その経験を踏まえた「小児の在宅医療において、治療の主体は病院にありますが、患者・家族支援団体や医療機器メーカーの協力があってこそ、よい治療が実現できると考えます」の言葉から、セミナーがスタートしました。
 
 まず、長野県立こども病院内にある患者・家族支援団体「長野こども療育推進サークルゆうテラス」が紹介されました。ゆうテラスは、情報誌「あしあとてらす」の発行、家族向け研修会の企画・運営、家族の語らいの場の提供、調査・研究などの活動を行っています。ゆうテラスが長野県と実施した調査では、長野県内の重症心身障害児の4割弱の人が胃瘻栄養を行っていることがわかりました(引用文献1参照)。
 
 さらに、特別支援学校の重度重複障害児学級と福祉事業所を対象に実施した「胃瘻からの半固形食短時間摂取法(ミキサー食注入)についての実態調査」の結果が報告されました。その中の胃瘻からの半固形状流動食投与法の技術・知識は習得されているかという質問に対し、注入法やつくり方の講習会が必要という回答よりも胃瘻全般の講習会が必要という回答が多かったことから「そもそも胃瘻とは何なのかというような胃瘻の基本的知識がまだ浸透していない」という胃瘻栄養の問題点が、この調査から明らかになっています。
 
 この問題点に対して、長野県立こども病院では胃瘻外来を開設し、胃瘻の管理法と栄養管理について指導を行っています。その際に用いているのは紙のパンフレットではなく、ハリヤード・ヘルスケア・インクが作成し配布しているDVDです。このDVDは周囲の医療機関や学校、福祉事業所にも配布され、指導を徹底していくための一助となっています。
 
 2012年に日本老年学会が発表した立場表明のなかに「胃瘻造設を含む経管栄養や、気管切開、人工呼吸器装着などの適応は、慎重に検討されるべきである」とあり、そのあとに、「患者さんの尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮する必要がある」と続きます。
 
 これをきっかけに胃瘻造設の見直しがなされるようになりました。新聞でも取り上げられたこともあり、胃瘻造設に関しては、患者さん家族からの不安が聞かれます。小児にとって成長も重要ですから、胃瘻栄養は患児と家族のQOLに配慮したものでなければなりません。ですから「造設後は効果を実感してもらえるよう栄養療法を適切に行う必要があります」と栄養療法の重要性も強調しました。
 
 適切な栄養療法とは、水分や炭水化物、脂質、タンパク質、微量元素といった必須の栄養素がきちんと摂取できること、そして小児の成長や患者さんと家族のQOLについても考慮がなされているものです。一方、経腸栄養剤を用いた胃瘻栄養では、胃食道逆流症、下痢・嘔吐、ダンピング症候群、高血糖、微量元素などの欠乏といった問題が生じます。
 
 経腸栄養剤の問題点を解決する方法としては、半固形状流動食が有用です。実例として、胃瘻外来で行っている「半固形状流動食(ミキサー食)短時間摂取法」が紹介されました。導入患者さんでは、便性・肌つや・髪質・表情の改善、入院回数の減少などがみられ、患者さんや家族のQOLが向上しました。こうした効果の理由として、高見澤先生は「経腸栄養剤に不足していた食物繊維や微量元素が補充されたこと、食事のにおいや味などにより表情がよくなったのではないか」と推察しています。

 さらに自験例として、「ミキサー食」と「栄養剤・ミルクのみ」を使用した群の栄養状態を比較した結果が紹介されました。ミキサー食のほうが血清セレンと血清プレアルブミン値が高値を示し、栄養状態の改善が示唆されました(図1)。高見澤先生は「この値の差が表情がよくなった、肌つやがよくなったことに繋がっているのではないか」と考察しています。

ミキサー食VS栄養剤のグラフ(血清セレン)

ミキサー食VS栄養剤のグラフ(血清亜鉛値)

ミキサー食VS栄養剤のグラフ(血清プレアルブミン値)

次回は、「在宅胃瘻栄養管理における問題点の検討について」です。


【引用文献】
1)長野県,長野県立こども病院:長野県重症心身障害児者全数調査.平成26年度小児等在宅医療連携拠点事業最終報告.2015.

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