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【連載】がん化学療法による副作用のケア

がんの化学療法による口腔粘膜炎とは?

解説 関谷秀樹

東邦大学医療センター大森病院 栄養治療センター嚥下障害対策チーム長、がんセンターがん口腔機能管理部長、口腔外科、東邦大学医学部口腔外科学教室

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口腔粘膜炎はどうしてできる?

抗がん剤の投与で口腔粘膜炎が起こるのは、抗がん剤によって発生したフリーラジカルが口腔粘膜の組織を破壊するのが原因です。
免疫機能の低下、粘膜に歯の尖った部分があたる、口腔内の衛生不良や粘膜の乾燥、全身の栄養不良などは発症や悪化の要因です。
さらに頭頸部がんで口腔・咽頭に放射線療法を併用した場合は、口腔粘膜炎を増悪させます。
 
がん化学療法開始から数日で口腔粘膜に発赤が生じ、酸味や塩味がしみるようになります。
1週間程度で炎症とびらんが起きると食べものが触れるだけで痛みます。
2週間程度で潰瘍が形成されると痛みはピークに達し、通常の形態の食事は食べられなくなります。
また抗がん剤の作用で唾液が減少し、嚥下が困難になったり、口腔内の自浄作用が低下して清潔が保てなくなったり、口腔粘膜も傷つきやすくなります。
そして、口腔粘膜炎発症→経口摂取困難→全身の栄養障害→口腔粘膜炎の増悪という悪循環に陥ります。
さらに潰瘍形成の段階に、抗がん剤の作用による骨髄抑制で白血球数が最低値を示す時期が重なると、潰瘍部から細菌が侵入して血行性感染を起こし、敗血症に至ることもあります。

口腔粘膜炎の重症度は、治療や処置に際して観察される有害事象を定義したCTCAE v4.0-JCOG(有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG版-2016年3月10日)により、Grade1〜5に分類されています(下表)

口腔粘膜炎のGrade  
Grade1 症状がない、または軽度の症状がある、治療を要さない
Grade2 中等度の疼痛、経口 摂取に支障がない、食事の変更を要する
Grade3 高度の疼痛、経口摂 取に支障がある
Grade4 生命を脅かす、緊急処置を要する
Grade5 死亡

引用:有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳JCOG版より引用

口腔粘膜炎の特徴とは?

がん化学療法に伴う口腔粘膜炎は広く深くなるのが特徴です。
歯が接触する口唇や頬粘膜にできやすい傾向がありますが、歯並びなどの条件により発症部位は患者さんによって異なります。
舌や口蓋に生じると、食べものを舌で動かしながら咀嚼することが困難になります。さらに症状が進んで咽喉頭の粘膜にできると嚥下が困難になり、経口摂取が難しくなります。

もっとも口腔粘膜炎を起こしやすいのはシスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤で、これを含むレジメンによる口腔粘膜炎の発症率はおおよそ40%以上といわれています1)。
タキサン系のドセタキセルやパクリタキセル、内服薬のS-1、および分子標的薬のセツキシマブやベバシズマブなども口腔粘膜炎を起こしやすい抗がん剤です。
ただし同じレジメンでもまったく口腔粘膜炎が起こらない患者さんもいます。

がん化学療法による口腔粘膜炎に対しては、痛みをコントロールしてできるだけ経口で栄養を摂取し、悪化を防ぎつつ化学療法の治療期間をしのぐのが目標です。

引用文献
1)Eilers J,et al:Clinical update: prevention and management of oral mucositis in patients with cancer.Semin Oncol Nurs 2011;27(4):e1-16.