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【連載】呼吸器に強くなる!

CO2ナルコーシスとは? 原因について知ろう!

解説 宮本 毅治

東邦大学看護学部成人看護学助教

CO2ナルコーシスは臨床でよく耳にする言葉ながら、どんな病態か十分に理解されていないこともあるようです。しかし、CO2ナルコーシスは、COPDのような患者さんの酸素投与中でしばしばみられ、緊急対応が必要となることもあります。ここで、しっかりとCO2ナルコーシスについて理解しておきましょう。


【目次】

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CO2ナルコーシスって?

CO2ナルコーシスとは、簡単にいうと高二酸化炭素血症によって意識障害などの中枢神経障害を呈した状態を示します。書籍などによっては、CO2ナルコーシスに至るプロセスも含めて定義されていることもありますが、ナルコーシスというのは「昏睡」という意味ですので、一般的には、高二酸化炭素血症によって生じた中枢神経障害と捉えて間違いありません。
意識障害などの中枢神経症状を呈し、放置すると呼吸停止や低酸素血症に至るという緊急性の高い病態であるため、看護師はCO2ナルコーシスが起きないように、また、起きてしまったら早期に発見し、対処する必要があります。

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なぜ起きるの?

私たちの呼吸は、二酸化炭素と酸素の状態を感知して調整されています(ここでは二酸化炭素による調節を二酸化炭素チャンネル、酸素による調節を酸素チャンネルと呼ぶことにします)。

正常人の場合、呼吸調節のメインは二酸化炭素チャンネルによるもので、体内の二酸化炭素量を正常に保つために、「二酸化炭素がたまったから呼吸を促進しよう」という働きが生まれます。酸素チャンネルは、簡単にいうとバックアップ機能のようなもので、酸素が著しく低下した時に優先して「低酸素だから呼吸を促進しよう」という働きが生まれます。呼吸器に問題のない人はこの2つの調整機能がうまく働いて、呼吸が正常に保たれています。

しかし、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など慢性的な高二酸化炭素血症の病態では、体内の二酸化炭素量がもともと高いため、二酸化炭素チャンネルがうまく機能していません。さらに、慢性的に酸素不足であるため、酸素チャンネルがメインで働いて呼吸をしています。つまり、「二酸化炭素がたまったから呼吸を促進しよう」という働きがうまくできず、「低酸素だから呼吸を促進しよう」の働きを中心として呼吸を調整しています。

 ではもし、そうした患者さんに大量の酸素が投与され、体内の酸素が増えすぎてしまうとどうなるでしょうか。酸素チャンネルがメインで呼吸が調整されていますので、脳は「酸素が十分にあるから呼吸はそんなにしなくてよい」と判断し、呼吸を抑制してしまいます。
 
呼吸が抑制されると、体内にどんどん二酸化炭素がたまっていきますが、二酸化炭素チャンネルはうまく働きませんので、呼吸抑制状態が続き、低酸素血症に移行します。そして、体内のpHが酸性に傾き、呼吸性アシドーシスによりアシデミア(酸血症)の状態になります。慢性的な高二酸化炭素血症の場合、通常でも呼吸性アシドーシスとなっていることが多いのですが、さらにアシドーシスが進むことにより、意識障害などの中枢神経症状を呈するようになります。そのまま過剰な酸素が投与されれば、呼吸が抑制されていることから低酸素血症に陥ることがあり、さらに二酸化炭素が蓄積することで中枢神経障害も悪化するため、生命の危機を招くことにもなりかねません。

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どんな患者さんに注意が必要?

 前述したCOPDや神経筋疾患のようなⅡ型呼吸不全、つまりもともとPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)が高い患者では、酸素投与時にCO2ナルコーシスの危険性を考慮する必要があります。そのため、病歴、既往歴、喫煙歴をよく確認します。
動脈血ガスの検査結果があれば、PaCO2の値から高二酸化炭素血症の有無を確認しておきましょう。
 身体所見からの情報も重要です。ビア樽状の胸郭やばち指、気管短縮(short trachea)、胸鎖乳突筋の肥厚、フーバー徴候などはCOPD患者によくみられる身体所見です。

Ⅱ型呼吸不全……PaO2≦60Torr PaCO2>45Torr

ビア樽状

ばち指

気管短縮

フーバー徴候

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