【連載】訪看ステーション「よつば」の公開カンファレンス

CASE07 体重管理と家族指導の難しさを感じたケース

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

Kawakami02

Yotuba02

困難事例7 体重管理と家族指導の難しさを感じたケース

50歳男性。5年前に脳梗塞と脊椎梗塞を起こし下半身は完全麻痺。上半身は左側に不全麻痺がある。
発症当初は寝たきりの状態であったが、なんとか車椅子乗車を目指してリハビリを継続し、現在では1回に2時間は車椅子上座位を保てるようになってきている。
しかし、なんらかの発達障害または高次機能障害があるのか(診断はついていない)、すべてのことに無関心であり、他動的なリハビリにも拒否はないものの、自主練習をすることは困難な状況。
車椅子への乗車もリハビリも、医療スタッフが訪問したときの週3回のみに限られている。
そのため、体重はこの数年で10kg近くも増加し、健康管理のうえで体重増加が問題となっている。
母親と同居しているが、母親もパーキンソン病があり、手が震え、栄養バランスまで考えた食事管理は難しい状態である。

カンファレンスの目的

自発的なリハビリの実施がなく、体重増加を止めることができないため、健康管理上の問題となっているAさんに対し、今後どのように体重コントロールをしていけばよいか。
よつばスタッフが集まり担当ケアマネジャーさんを交えて、カンファレンスを開くことになった。


caremane
ケアマネジャー:Aさんの体重増加が気になります。このまま体重が増えてくると脳梗塞の再発や生活にも支障が出てこないかと心配です。
お母さんの協力のもと、なんとか栄養指導をしていただけないでしょうか。

kana
かな:お母さんも高齢でパーキンソン病をもっており、カロリーを計算しながら食事をつくるのは負担があるかもしれませんね。

caremane
ケアマネジャー:そうですよね。ではまずはお試しで、低カロリーのお弁当を購入してみましょうか。


こうして、まずは低カロリーのお弁当を試すことになった。
しかし購入を始めて1週間で中止することになった。


honoka
ほのか:Aさんお弁当を殆ど残していたみたいです。やはり若い人には介護食は口に合わないんですかね。

kana
かな:それもあるかもしれませんが、Aさんが食べないことを心配して、結局はお母さんがAさんの好きな肉料理などを追加してしまうようなんです。
さらにごはんもきっと足りないだろうって、追加してしまっているようで。。

caremane
ケアマネージャー:そもそもお母さんが、Aさんがダイエットする必要性をあまり理解されていないのかもしれませんね。これでは低カロリーのお弁当を購入する意味がないですよね。

kana
かな:どうしても母親だから、子供にはしっかり食べさせてあげたい気持ちが先に立ってしまうのかもしれませんね。ここはやはりまずお母さんに指導しなければいけないのでしょうか。

rin
りん:お母さんは、自分の疾患と毎日の介護で疲れきっていて、そのうえ食事の指導までは無理だと思います。
まずは私たちが、Aさんはどんな食事が好きで何が嫌いなのかをきちんと情報収集することから始めたほうがヒントになるのでは?

honoka
ほのか:Aさんは、訪問開始の当初に比べると、最低限必要なことはなんとか話してくださるようになりましたけれど、食事の好みを聞いてもほとんどが「別に」なんです。だから把握しにくいんです。

kana
かな:そうですね・・・。
リハビリのタジ先生、Aさんは字は書けましたか?
Aさんは他人とコミュニケーションをとることが苦手なので、食事日記をつけていただくのはどうかと思うのですが。その日に何をどれくらい食べて、それが好きか嫌いかを書くだけ。3項目だけ日記をつけることにしては。

taji
タジ先生:いいですね。Aさんは字を書けますよ。左利きだけど字は右で書くんです。最近、手首や肩周りも固くなってきているので、少しでも毎日継続してできる動きを日常生活に取り込むのはとてもいいと思います。

rin
りん:コミュニケーションが苦手な方には、何をどうすればいいのかを明確にしてあげることでコミュニケーションしやすくなることもありますね。
周りからいろいろな質問をするより、自分で書くという方法はいいかもしれませんね。

kana
かな:はい。それに、食事日記をつけることをきっかけに、座位になる時間を増やせたら一石二鳥かなと。
今は医療者が来るときしか座位をとれませんよね?
ただ下肢は麻痺で痙性もあり不安定なので、1人でもベッド上で安全に座位姿勢をとれる方法があれば理想的なのですが・・・。

taji
タジ先生:そうですね。頭部の方向へ自分でずり上がってもらってから仰向けになっていただき、そこから自分で下肢を胡座位にしてからベッドアップしていければ可能だと思います。やってみてしょう。

kana
かな:いいですね! では、リハビリメニューに早速それを追加してください。


こうして、Aさんには食事日記をつけることと、それに伴う座位保持のリハビリが追加されることとなった。
しかし、食事日記を始めて間もなく母親から、
「みんなに食事内容がわかると恥ずかしいため、頑張ってバランスのいい食事をつくらなければいけないと思うとプレッシャーだ」
という言葉が聞かれた。
そこで、再びよつばスタッフはカンファレンスを開くことになった。


次ページでは、Aさんに食事日記が開始になってわかったことについて、カンファレンスしています。