【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第3回 糸球体濾過量(GFR)で腎機能を評価する!

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

腎機能の指標として濾過量を見る

 まず腎機能とはどういったものか? 腎臓は、電解質や血圧の調節、また造血ホルモンなど内分泌器官としての役割を担うなど様々な機能を持っていますが、簡単に言いますと、「腎臓が血液をどれだけきれいに濾過できるか」ということです。一般的に腎機能をみる指標として、血清クレアチニンや血中尿素窒素(BUN)があります。クレアチンは筋肉を動かした後にできる老廃物ですが、食事の影響を受けず、腎臓からのみ排泄されるため腎機能の評価として用いられています。
 
 また、BUNは、体内でエネルギーとして使われたタンパク質の老廃物で、腎機能が低下すると排出されず、数値が上昇するため腎機能評価をみるうえでのひとつの指標となっています。しかし、クレアチニンは筋肉量、BUNは摂取したタンパク質の量に左右されるという欠点があります。そこで、腎臓の機能である、血液をどれだけきれいに濾過できるかを、正確に数値化できないかという考えから「糸球体濾過量(GFR)」が使われるようになりました。
 
 


 
 まず、腎臓の構造の一部である糸球体は、片方の腎臓に10万、両腎で約20万個存在し、血液を濾過しています。この濾過の量のことを糸球体濾過量(GFR)と言います。このGFRの測定には、”イヌリン”という物質が基準とされます。イヌリンは糸球体基底膜を自由に透過しますが、その先の尿細管で再吸収・排泄されないため、糸球体のみの濾過量が測定できます。またこのイヌリンは血漿蛋白と結合せず、クレアチニンの様に体内で代謝されないという特徴があり、GFRを測定するのに最適な物質とされています。
 
 しかし、イヌリンは本来身体には存在しない物質のため、実際に測定するためには、イヌリンを体内に投与する必要があります。イヌリンを持続的に静脈血管に注入し、その間の尿を採取してイヌリン濃度を求めます。しかし、この手技が非常に複雑なため、実際に日常検査で行うことは困難です。そこでもっと簡単にGFRを推測する方法、推算糸球体濾過「eGFR」が使われるようになりました。“e”はestimatedを表わしており「推定」や「推算」という意味です。推算したGFRという意味でeGFRと表記します。これによりGFRを簡易に代用できるようになりました。eGFRは血清クレアチニン値と年齢と性別から計算できます。計算する推算式を下記に記します。

【日本人向けGFR推算式】
eGFR(mL/min/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287(女性の場合は 0.739 をかける)
Cr:血清Cr濃度(mg/dL)
注 1:酵素法で測定されたCr値を用いる。血清Cr値は小数点以下2桁表記を用いる。
注 2:18歳以上に適用する。小児の腎機能評価には小児の評価法を用いる。
eGFR男女年齢別早見表

eGFRによる腎機能の評価法は、血清クレアチニン値と年齢、性別などが考慮されており、より正確に腎臓の機能を把握することができます。ですが、eGFRはあくまで推定値ですので、筋肉量が少ない症例(四肢切断、長期臥床例、るいそうなど) ・筋肉量が多い症例(アスリート、運動習慣のある高齢者など)は、より正確な検査が必要となります。その場合は、イヌリンを使ったイヌリンクリアランスや、24時間蓄尿によるクレアチニンクリアランスなどの実測検査が必要となります。

 従来はこのGFRを使い、慢性腎不全(CKD)の病期分類の評価をしてきましたが、近年多くの研究結果から、CKDの心血管障害や末期腎不全に至るリスクは、原疾患や蛋白尿(アルブミン尿)の有無で大きく異なることが示され、新しいガイドライン「CKD 診療ガイド 2012」 では、原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、タンパク尿(アルブミン尿:A)によるCGA分類での、CKD重症度を評価するものに改訂されました。

CKDの重症度分類
日本腎臓学会,編:CKD診療ガイド2012,東京医学社,2012,:p.3 表2より一部転載

 近年、世界的にCKD患者の増加が指摘されており、CKDのために末期腎不全に進行し、腎代替療法を要する患者の増加も著しいことが知られています。そのためCKDの早期発見、早期治療開始による重症化予防にはこのような適切な腎機能の評価が必要不可欠となります。


【引用参考文献】
日本腎臓学会,編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013,東京医学社,2013.
日本腎臓学会,編:CKD診療ガイド2012,東京医学社,2012.

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