【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第5回 1日に必要なたんぱく質量は?摂取時の注意点は?

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

たんぱく質制限は画一的に行わない

 人間の身体になくてはならない栄養素のうち、特に重要なものと位置づけられている「たんぱく質・炭水化物・脂質」を『三大栄養素』といいます。この中で、炭水化物と脂質は身体を動かすエネルギーとして使われた後、呼気(二酸化炭素)や汗(水)や尿となって排泄されます。
 
 しかし、たんぱく質は分解されると7~8割は窒素を含んだ老廃物となり、この老廃物を除去し体外に排泄するのが腎臓の働きです。腎機能が正常であれば、それを処理するのに十分な糸球体の濾過機能があります。しかし腎機能が低下していると、残った糸球体1つ1つがその能力を超えて処理をしようとするため負担がかかります(糸球体過剰濾過)。この状態が長く続くことで徐々に糸球体の濾過機能も落ちてきてしまうため、CKDではたんぱく質の摂取制限が必要となってきます。
 
 

 一方、低たんぱく食が腎機能低下の進行自体を抑制するかどうかについては、以前より議論されており、日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では「たんぱく質制限は、腎代替療法が必要となるまでの時間を延長するが、腎機能の低下速度を抑制する効果には乏しい」としており、さらに「高齢者では、低栄養などにも注意が必要となる」と記されています。それらを踏まえ「画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク、アドヒアランスなどを総合的に判断して、たんぱく質制限を指導することを推奨する」と述べています。
 
 そこで同ガイドラインで推奨されるたんぱく質制限は、0.6〜0.8 g/kg・ 標準体重/日、また軽度の腎機能障害では、0.8〜1.0 g/kg・ 標準体重/日から開始し、CKDステージなど、患者個々の病態に合わせながら指導をしていきます。各ステージでの目安は、表1:CKDステージによる食事療法基準を参考にしてください。

CKDステージによる食事療法基準表

 また、たんぱく質は体に不可欠な栄養素でもあり制限する際、注意しなくてはならない事がいくつかあるため、以下に注意点をお話します。

①効率良く良質なたんぱく質を摂る

 私たち人間の体をつくる20種類のアミノ酸の中で、体内で合成できない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。必須アミノ酸は食物によって外部から摂らなければ不足し、体の機能を正常に保てなくなります。この必須アミノ酸の割合が高い食品は、「良質なたんぱく質食品」と呼ばれ、一般的に動物性の食品はアミノ酸の割合が高く、植物性の食品は低い傾向があると言われています。食事療法としてたんぱく質制限をしていると、この必須アミノ酸不足に陥り、栄養障害を起こす危険性があります。効率よく良質なたんぱく質を摂ることが重要となります。

②たんぱく質制限に伴うエネルギー不足

 単にたんぱく質の量を減らしただけでは、適正エネルギー量を満たすことができなくなります。そこで、たんぱく質を減らす分は、その他の三大栄養素である、炭水化物や脂質の比率を増やして補います。エネルギーが不足すると低栄養状態となり、筋肉がエネルギー源として使用されるため、その代謝産物(老廃物)が、糸球体に過剰な負担をかけます。腎臓を守るためにも十分なエネルギー摂取は重要と言えます。
 また脂質の摂取には、動脈硬化予防の観点から気をつけなくてはならない点があります。どんな脂質をどれくらい摂れば良いのでしょうか? まず、量としては全エネルギー比の20〜25%が望ましく、脂質の種類としては、胡麻や青魚に多く含まれるn−3系多価不飽和脂肪酸を積極的に取り入れることが推奨されています。

 また、透析患者の場合、日本透析医学会から報告された「慢性透析患者の食事療法基準2014」によると、「維持透析患者(腹膜透析患者含む)では、たんぱく質摂取量の基準は 0.9〜1.2 g/kg・標準体重/日」を推奨するとしています。いずれも、患者個々の病態や生活習慣を尊重した個別対応が重要となります。


【引用参考文献】
日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013
日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版
日本透析医学会:慢性透析患者の食事療法基準 委員会報告より 2014

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