【連載】輸液製剤がわかる! なぜ、その輸液製剤が使われるのか?

欠乏輸液と維持輸液の違いとは?

協力 飯野 靖彦(いいの やすひこ)

日本医科大学名誉教授

輸液の目的である欠乏輸液維持輸液について考えてみましょう。

[欠乏輸液]

欠乏輸液は不足している物質を補い、内部環境を維持するために行います。不足する物質とは、水分のほか、Na、K、Ca、P、$\rm{HCO}_{3}^{-}$といった電解質、ビタミンや微量元素です。

例えば、高度の下痢を起こしているときには、細胞内液、細胞外液から水・電解質が失われます。この欠乏量を補い、体液を正常化するのが欠乏輸液です。

欠乏輸液で大切なことは、「何が欠乏しているか」の見極めです。その判断は臨床症状(水分量の低下を示す身体所見など)と検査所見(NaやKの濃度など)から行い、喪失している物質やその欠乏量を推定して、輸液製剤および投与量を決定します。水分欠乏量は計算式によって算出することができます。

ただし、欠乏量を一度に体内に投与すると、心臓などの内臓器官への負担が大きく、心不全やショック症状に陥ることがあります。1日の投与量は、欠乏量の1/ 2から1/ 3(安全係数)にして、2~3日かけて補っていくのが原則です。そして、欠乏量が補正された時点で、欠乏輸液は終了します。

なお、低Na血症はNaが水分に対して少ないことを示しますが、低Na血症を合併した心不全ではNaが多い以上に水が多い状態と考えられるので、欠乏輸液は中止します。

ひとくちMEMO

水分欠乏量は計算式によって算出することができ、推定には次の式が用いられます。

※ヘマトクリット(Hct)45%、血清総蛋白(TP)7mg/dl、全体水分量を体重の60%と仮定して計算。

(1)体重から推定する方法

    水分欠乏量=健常時体重-現在の体重

(2)Hctを用いる方法

    水分欠乏量=(1-45/Hct)×体重×0.6

(3)TPを用いる方法

    水分欠乏量=(1-7/TP)×体重×0.6

(4)血清Na濃度を用いる方法

    水分欠乏量=(1-140/Na濃度)×体重×0.6

また、Na欠乏量の推定に用いる計算式は次の通りです。

    Na欠乏量=(140-現在のNa濃度)×現在の体重×0.6+140×体重減少量


維持輸液]

体液に欠乏がなくても経口摂取ができない場合、生命維持のためには、細胞が活動できるだけの内部環境を維持していく必要があります。そこで1日に必要とされる最小限の水・電解質、ビタミン、エネルギー量を補うのが維持輸液です。

特に、水・電解質は過剰分を体内に貯留することが困難で、生存には1日に100~400mLの水、10~20mEqのNaおよびKが最低限必要とされます。

ただし、この量は腎機能が正常な場合であり、腎機能が低下して尿を濃縮できない人や透析をしている人などでは違ってきます。必要量は、尿量、体温、食事量、体重、性別、活動性、疾患などから推定されます。

維持輸液は欠乏輸液とは異なり、経口摂取が開始されない限り継続することになります。

基本的には免疫機能が高まるなど、腸からの吸収のほうが生理的には適しているので、腸の機能に異常があったり、経口摂取が不能あるいは不十分でなければ、できるだけ経口摂取への切り替えを行います。

維持輸液での1日必要量の目安

水分:1500~2000mL、Na:50~80mEq、K:40~60mEq、Ca:10mEq

Mg:10mEq、P:15mmol、ブドウ糖:約100g

ひとくちMEMO

維持輸液の投与量は、次の式で求められます。

維持輸液量=( 尿量 + 便 + 不感蒸泄 )-( 経口摂取 + 代謝水 )

        500mL 200mL  1000mL     0mL   200mL

最低限必要な輸液量は、経口摂取ができない場合でおおよそ1500mL/日になる計算です。

発熱、嘔吐、下痢、ドレーンなどの排液がみられたときは、この式によって算出された量にその量を加算します。


ココをおさえる!

  1. 水・電解質の欠乏があり、経口摂取ができない→欠乏輸液+維持輸液
  2. 水・電解質の欠乏はないが、経口摂取ができない→維持輸液のみ
  3. 水・電解質の欠乏がなく(Naの量、濃度に異常なし)、経口摂取できる→輸液不要

(ナース専科マガジン2013年10月号より転載)

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