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【連載】認知症の基礎知識

4大認知症の特徴・症状・経過

解説 一宮 洋介

順天堂大学医学部附属順天堂東京高等高齢者医療センター 副院長・メンタルクリニック 教授

Ninchi

代表的な認知症とその特徴

代表的な認知症には、発症率の高い順からアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があり、これらを4大認知症といいます。

特にアルツハイマー病は脳変性疾患の約60%を占め、現在日本で最も頻度の高い認知症となっています。もともとは脳血管性認知症が日本における認知症の代表格でしたが、1990年に逆転しました。これは人口の高齢化、生活様式や食生活の欧米化、高血圧治療の普及などによる脳血管障害のリスクファクターの減少などが影響していると考えられます。

アルツハイマー病

どんな認知症?

 1906年、ドイツの精神科医であるアロイス・アルツハイマーが、死亡した51歳の女性の脳に、老年痴呆と同じ老人斑や、神経原線維変化を認めた症例を報告しました。その後も同じような症例がいくつか報告され、クレペリンによって教科書「精神医学」の中で初老期に痴呆を生ずるアルツハイマー病と命名されました。当初は、初老期痴呆のアルツハイマー病と老年痴呆に区別されていましたが、最近ではこれらをまとめてアルツハイマー病といい、そのなかで早発性と晩発性に分類しています。

 アルツハイマー病の病理所見では、神経細胞の変性・脱落と老人斑、神経原線維変化が認められます。加齢に伴い、β蛋白の分解・除去よりも生産が上回ることで、β蛋白が脳に沈着し、シナプスの障害によって酸化ストレスを起こしたりします。現在はこのβ蛋白の沈着がアルツハイマー病の原因だといわれています。β蛋白の沈着が大脳全体に広がっていくと、神経細胞のなかのタウ蛋白が過剰にリン酸化されて神経原線維変化が起こります。これは神経細胞が毛筆の先のような細い線維状の構造物に置き換わってしまう状態です。そして、神経細胞は次第に機能が低下して死滅します。

症状と経過は?

アルツハイマー病は慢性、進行性の疾患で、徐々に進行していくのが特徴です。臨床経過は第一期、第二期、第三期の3つに分けられます。

第一期はいわゆる初期の段階で、最初の症状としては物忘れが出現しますが、日常生活は自立できています。しかも初期には物忘れを自覚する人もあり、「こんなはずではなかった」と落ち込んだりするので、うつ病との鑑別が難しい場合もあります。

 第二期は中期で大脳の萎縮が進み、頭頂葉が障害されます。着替えなどの身の回りのことが一人でできなくなるといった行為の障害(失行)が生じ、介助を要する状態になります。認知の障害や失語などの言語障害も起こってきます。

 第三期は末期で、高度な知的機能の低下がみられ、話しかけに応じない、意思を伝えられない状態になります。食べる、歩くなどのADLも顕著に低下し、ほぼ寝たきりになります。

 全過程は5~15年くらいで緩徐に悪化するので、急に悪くなることはありませんが、肺炎や骨折などの合併症を起こすと、それを契機に認知症が急激に悪化することがあります。そのため身体症状の変化や転倒には十分に気をつける必要があります。

脳血管性認知症

どんな認知症?

 現在、アルツハイマー病に次いで多いのが脳血管性認知症(血管性認知症)です。脳卒中発作後、1カ月ないし3カ月を超えないうちに認知症が急激に進行するものを急性発症の血管性認知症といいます。これは、脳卒中の発作が起きることで脳の神経細胞が部分的に死滅し、認知症が出現するもので、認知症を発現した時期
が比較的はっきりしているのが特徴的です。

 これに対し、脳血管の動脈硬化をもとにした軽症の脳梗塞(一過性脳虚血発作)を繰り返し、徐々に発症するものを多発梗塞性認知症といいます。検査をすると小さな脳梗塞がたくさん認められますが、麻痺など明らかな脳梗塞の症状はみられません。「最近、物忘れがひどい」ということで検査をしてみると、このような脳梗
塞が発見されることがあります。この場合、アルツハイマー病に脳血管障害が合併しているのか、脳梗塞による認知症なのかを見分けるのはなかなか難しくなります。

症状と経過は?

 脳血管性認知症の症状は、脳の障害された部位によってさまざまな症状を示すので、アルツハイマー病のように全般的に一様に起こるわけではありません。そのため、障害されている部分とされていない部分が混在し、まだら状の機能低下がよくみられます。ただし、進行していくと全般的な知的機能低下の状態に至ります。
急に泣き出したりする感情失禁を伴うこともしばしばあります。

 臨床経過については階段状に悪くなり、ある程度は機能を保っていても、何かの拍子に急激に悪くなることがあります。高血圧、糖尿病、高脂血症など、脳血管障害の危険因子に対する注意も重要です。



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