【連載】知っておきたい! 在宅での必要な手技と医療機器・医療材料の取り扱い

在宅での吸引器の使用と指導について知っておこう!

監修 Life On Vital Element株式会社

LE在宅・施設 訪問看護リハビリステーション

執筆 千葉宏紀(ちば ひろき)

LE.O.VE株式会社 学芸大学店 管理者

地域包括ケアの推進により医療依存度が高い方が在宅へ

今までは入院、施設入所が一般的であった状況の患者さんでも、超高齢化社会、2025年問題、地域包括ケア病棟の新設など、病院から在宅へ戻るという選択肢が近年増えて来ました。国としても2025年に向け、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築(厚生労働省Hpより転載)」を推進しています。

そのため、在宅の現場でも多くの医療機器を使用されているご活用者様(弊社ではご利用者様をご活用者様と呼んでいるので、以後ご活用者様とします。)が病院から在宅へ戻ってきており、今後はますます増えていくと予想されています。医療依存度が高いご活用者様とその家族が安全にそして安心して在宅生活が送れるように支える役割の一端を訪問看護が担わなければなりません。そこで、今回は在宅の現場でよくみられる医療機器の一つである吸引器について取り扱いや観察ポイント、指導方法について「看護師以外が機器を取り扱う」という視点でご紹介させて頂きます。すべての医療機器に通じることですが、在宅では、「看護師以外が機器を取り扱う」という視点をもつことが必須です。


吸引の適応とは

 在宅において吸引機はよく扱われる機器の一つです。ASLや先天性疾患により常時吸引が必要な場合から、肺炎やがんの終末期等により急な状態悪化等となり急遽吸引が必要となる場合もあります。
 一般的な適応では、痰の自力喀出が困難である、痰の量が多い、全身が衰弱している、意識レベルが低下している(傾眠状態である)、喀出のために有効な咳嗽ができないといった場合が考えられます(参考文献1参照)。

吸引機器について

各メーカーより吸引圧やバッテリー内臓、吸入器一体型であるもの、災害用等さまざまな種類の吸引器が発売されています。

吸入器の一例

残念ながら介護保険、医療保険は利用できません。実費での購入か、レンタル(消耗品はレンタル不可)が選択できます。金額は最大吸引圧やバッテリーの有無、吸入器一体型などより値段はまちまちです。レンタルは4000~6000円/月程度となっています(病院や訪問看護ステーションによっては一時的な貸し出しを行っている場合もあります)。購入・レンタルの判断は、どの程度の使用期間が予測されるかで選択します。また吸引時に使用する衛生材料(吸引チューブ、アルコール綿等)は一般的に「在宅時医学総合管理料」から包括されているため、クリニックから提供されます(参考文献2参照)。さらに最近は地震などの災害時に備え、電源がなくても使用できる手動式や足踏み式の吸引器の準備も提案しています。

吸引関係物品の交換頻度って?

在宅では経済性と吸引頻度によってもまちまちですが、LEとしては、
①吸引カテーテル:1回/1週間・・新しいカテーテルと交換
②吸い上げ用水道水:1回/日・・新しいものと交換
③消毒用(ミルトン):1回/日・・新しいものと交換
④吸引チューブ:1回/1週間・・ミルトンで消毒したものと交換
⑤吸引瓶:1回/日・・毎日洗浄し、1回/1週間は消毒
で指導を行っています。

吸引方法は「統一した」内容で行う

在宅では看護師だけではなく、家族、一定の研修を受けた介護職等が吸引を行います。そのため、誰であっても同一の手技で実施できることが必要です。指導においては、ご本人の苦痛が少なく、かつ実施者がやりやすく、そして何よりも確実な吸引ができる方法を考え統一するようにします。余談ですが、LEでは全スタッフが統一した指導や手技を獲得するために、入職後すぐの研修として実技を含めた勉強会を必須で行い、会社として許可を得たスタッフのみが訪問時に吸引を行うことができるようにしています。

吸引手技は「吸引するだけ」ではない!

吸引とは、吸引前の感染予防行動(手洗い、マスク・手袋装着)から吸引後のご活用者様の観察、感染管理(口腔ケア等も含む)、そして吸引を行うべき環境整備(部屋の整理整頓)までが一体として指導すべき内容です。また在宅では当然家々で環境が異なり、病院のような十分なスペースがあるとは限りません。そのご自宅に合わせた機器の配置、立ち位置、吸引時のご活用者様の体制など統一手技の指導が必要です。

訪問をしていないときのことを考えた指導がポイント

 「何かあればいつでもステーションにお電話ください」という言葉をよく使うと思います。しかし訪問看護は、緊急時には病院のようにすぐに駆けつけることはできません。最も大切なのは、トラブルに応じた適切な対処法を指導することです。吸引においては、痰による気道閉塞時の対応、痰の性状に応じた報告相手とタイミング(今すぐなのか、次回の訪問時、往診時でもいいのか)、吸引による出血時の対応等をしっかり伝えておくことが大切です。24時間対応を行っている訪問看護ステーションであれば、緊急度に応じた連絡先を主治医と相談してあらかじめ決めておくこともスムーズな対応を可能にするといえます。

主な吸引時のトラブルと対処法
痰による気道閉塞時の対応
痰の性状に応じた報告相手とタイミング
吸引時の出血の対応

目先の訪問だけではなく、未来の日本のことを考えた訪問を目指すべき

在宅における指導の目標は、看護師がいない時に安全にかつ確実に、トラブルもご家族本人が対応できるまでを目指すべきです。具体的な指導をすることが、本人、家族、そして、我々訪問看護師、そして、先々には医療費、社会保険料抑制につながるということまで考えた指導が必要であり、LEではそれを目指しています。


参考文献
1)斎藤恵美子:知識が身につく!実践できる!よくわかる在宅看護.角田直枝 編.学研メディカル秀潤社,2012, p.60-68.
2)佐々木淳,監修:在宅医療 多職種連携ハンドブック.法研,2016, p.302.


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