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狭心症の種類・症状と診断と治療

解説 船﨑 俊一

埼玉県済生会川口総合病院 循環器内科 部長(兼務) リハビリテーション科 主任部長

Hunazaki sensei

Heart

狭心症は心臓の表面を走る冠動脈の閉塞動脈硬化の進展による狭窄などによって起こります。病態の緊急性からは、安定狭心症と不安定狭心症に分かれます。症状の出現様式からは労作性狭心症と安静時狭心症に分けられ、安静時狭心症の主体は冠攣縮性狭心症です。


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狭心症の症状

狭心症は動脈硬化によって心臓に栄養を運んでいる冠動脈に閉塞狭窄が起こるため、必要な酸素を送ることができなくなり、キニン、ヒスタミンなどの物質が放出され、それが下心臓神経を介して刺激となって痛みが出てきます。胸痛は前胸部に広く感じることが多く、時に放散痛といい、左肩から左上肢、首から喉頭部などに放散する痛みも感じます。なお、私たちの体は虚血が刺激となることでアデノシンを分泌し冠動脈を拡げることで痛みを軽くしようとします。繰り返しの労作で徐々に胸痛が軽くなることがありますがその理由と考えられています。

狭心症の種類

安定狭心症

同じことをした時や、同じような時間に同程度の発作が起こる狭心症を安定狭心症といいます。さらに、安定狭心症は以下の2つに分けられます。

労作性狭心症

 労作性狭心症は、体を動かしたことがきっかけで痛みが生じる狭心症です。体を動かした時に急激に酸素が必要となり、血管が狭くなっている領域に酸素不足が起こることで痛みが生じます。冠動脈の狭窄が50%以上(アメリカ心臓協会(AHA)の規定によると75%以上)に狭まると狭心痛が起こるとされています。

冠攣縮性狭心症(安静狭心症)

 冠攣縮性狭心症は、じっとしているときに痛みが出る狭心症です。副交感神経の末端から放出される神経伝達物質のアセチルコリンが軽度の動脈硬化を起こしている血管に作用すると、血管が痙攣し、血液の流れが悪くなって酸素の不足が起こります。また、動脈硬化によって、血管を拡張させる一酸化窒素(NO)が放出されにくくなることも原因のひとつです。冠攣縮性狭心症はAHAによると、冠動脈の狭窄が50%以下のものと定義されています。また、このタイプの狭心症では副交感神経が優位に働く、夜中寝ているときや明け方などに症状が出やすいことが知られています。

不安定狭心症

急性心筋梗塞、心臓性急死とともに急性冠症候群(ACS)に含まれるのが不安定狭心症です。これらの疾患はすべて冠動脈の急性血栓症が原因と考えられています。不安定狭心症では、冠動脈壁に存在する脆弱な粥種(不安定プラーク)によって血管が閉塞に近い状態になり、心筋梗塞と紙一重の状態になっています。体には自然に血栓を溶かす機序が働くので、ある一定の割合までは自分の力で血栓を取り除くことができます。自分で溶かせる血栓の量を超えて血管が閉塞し続けた状態が心筋梗塞です。完全閉塞状態までいかず、冠動脈の閉塞状態と、開存状態が繰り返されることが不安定狭心症だといわれています。ただし、いつ心筋梗塞に移行してもおかしくないので、入院治療が必要になります。

狭心症の検査と診断、治療

狭心症はどのタイプであっても動脈硬化を背景としているので、冠動脈だけでなく全身の血管病管理も重要となります。

狭心症の診断

自覚症状を聞いて、患者さんの背景をしっかりと聞き取ることが重要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の有無、狭心症や心筋梗塞によって治療を受けている家族がいないかどうかの確認など臨床スコアのチェックが重要です。これらの問診後に疑いがあれば運動負荷試験などを行います。

検査をする際には、まずはスクリーニング検査をし、疑いのある患者さんを抽出し、その後、なるべく侵襲の少ない検査を行い診断します。狭心症は、発作が起こってない時には調べても異常が出ないので、負荷を加えて心電図に異常が出るかどうかを調べます。なお、急性心筋梗塞に近い病態の不安定狭心症では運動負荷は禁忌です。

狭心症の治療

狭心症の治療は、狭心症の発作を起こしにくくすることを目的としています。

冠攣縮性狭心症は、血管が痙攣して起こる病気なので、カルシウム拮抗薬などを使用し、血管が痙攣しにくくなるようにします。一般的には手術の対象とはなりません。

労作性狭心症の場合は、動脈硬化が進行し、冠攣縮性狭心症に比べ、狭窄の割合が高くなっています。高度の動脈硬化を起こしていると、自然と元の状態に戻ることは期待できないので、服薬による治療には限界があります。その場合には、冠動脈バイパス手術や、冠動脈インターベンション(PCI)というカテーテル治療が行われます。現在、日本では狭心症の手術適応症例の9割以上はPCIによって治療されています。

急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症)の場合は、不安定プラークの破綻がきっかけの冠動脈内血栓症ですので、血栓を溶かすか除去しなければいけないので、血栓溶解療法やPCIなどが行われます。PCIを前提にした場合、原則抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)がカテーテル治療に伴う冠動脈内血栓症予防の目的で行われます。

狭心症は、いずれのタイプも動脈硬化があり、たばこを吸うなどの習慣が背景にあります。そのため、生活習慣を改善させる治療も重要になります。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの治療をしっかりとすることが狭心症の進行を予防することにつながります。こういった生活指導については、医師よりも患者さんとの距離が近い看護師の役割が期待されます。

冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)
冠動脈の治療を行う場合カテーテルを用いますが、そのカテーテルを挿入する部位として、手首(橈骨動脈)、肘(上腕動脈)、ももの付け根(大腿動脈)の3カ所があります。患者さんの病変や病態などに応じて、穿刺部位を選択します。治療の方法として、細くなった血管の部位を風船によって拡張するバルーン拡張や、網目状の金属を留置して血管を広げるステント留置などがあります。

狭心症患者さんを見るうえでの注意点

不安定狭心症や心筋梗塞になってないか鑑別することが重要です。また、胸の痛みが狭心症らしい特徴を持っているかどうかも確認してください。一瞬起こって、すぐに消えるような胸痛の場合は狭心症ではありません。治療学的診断として、ニトログリセリンが使われます。狭心症であった場合、ニトログリセリンの舌下スプレーを使用すると1分程度で著効します。

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