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【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識

経腸栄養剤の注入ー手順とケアのポイント

監修 犬飼道雄

岡山済生会総合病院 内科 医長

執筆 木村しのぶ

岡山済生会総合病院 看護部

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【目次】

経腸栄養剤注入前に行うこと

患者さんの状態を観察

状態観察する際は、意識障害が生じていないか、高熱が出ていないか、酸素飽和度が低下していないか、普段より明らかに血圧が低下していないかなどを確認します。

腹痛、悪心や下痢などの消化器症状を認める場合は、経腸栄養を行うかどうか医師に確認します。

体位の調整

座位が可能であれば、車椅子やテーブルに移動します。椅子に座る際は足底を床につけ、下半身を安定させます。

ベッドの場合は上体を30~60度のファーラー位とし、体幹を安定させるためにクッションを使い、ずれ防止のために腹部を圧迫しない程度に足元を30度上げた体位をとります(図)。


図 ベッド上での体位

頭を高くしたときなどに顔面が蒼白になったり、変わった様子がみられた場合には、声かけを行うとともに、患者さんが望む体位に変えることが必要です。

半固形栄養剤では、腹部を圧迫しない範囲で比較的自由な体位を取ることが可能です。ただし、栄養剤摂取中はしばらく同じ体位になるため、患者さんにとって安楽であることが大切です。

また、吸痰は嘔吐を誘発することもあることから、事前に行うようにします。

胃内留置の確認

栄養チューブの先端が胃内にあることを確認します

カテーテルシリンジをチューブに接続し、10mL~20mL前後の空気を素早く注入します。聴診器を右下肺野、左下肺野、心窩部の3カ所にあて、それぞれの部位で気泡音(ゴボッという音)が聞こえるか、また、最強点が心窩部であるかを確認します。

気泡音だけではチューブの位置を正確に確認することが困難な場合には、胃内容物吸引によるpHの測定や、胸部X線による確認を行います。

さらに、胃ろうの患者さんの場合は、胃ろうカテーテルを上下に動かしたときに適度な余裕があるかどうか、スムーズに回転するかも確認します。

減圧時の状態を確認

減圧時に多量の胃内容物や、褐色・黄色・緑色の胃内容物が引けた場合は、経腸栄養を行うかどうか医師に確認します。

経腸栄養剤注入時に行うこと

必要物品の準備と手洗いの実施

必要物品(表)を整え、流水と石鹸での手洗い、または、速乾性擦式手指消毒剤を使用して手指消毒を行います。


表 必要物品

手順に沿った注入の実施

栄養チューブのクレンメが閉じていることを確認し、イリゲーターと栄養チューブをつなぎます。

イリゲーターに栄養剤や白湯を指示通り注入し、高所につるします。RTH式の栄養剤の場合は、袋にそのまま栄養チューブをつなぎます。

栄養チューブの先端が不潔にならないように注意し、ドリップチェンバーを押してその中に栄養剤を適量(1/3~1/2)満たします。クレンメをあけ、空気が入らないように栄養剤で栄養チューブの先端まで満たし、クレンメを閉じます。

経鼻胃管または胃ろうに栄養チューブを接続後、患者さんに栄養剤を注入することを伝え、クレンメをゆっくり緩めます。

注入速度はドリップチェンバーの滴下で適宜調節します。半固形栄養剤は、胃ろう(場合によっては経鼻胃管)と栄養チューブをしっかり接続し、300~600mLを15分程度で注入します。

注入中の観察

注入速度が速いと、胃食道逆流による嘔吐、喘鳴や呼吸障害、ダンピング症状
(下痢・頻脈・低血糖など)などを起こすことがあります。これらの症状がみ
られたら、注入速度を遅くしたり、場合によっては注入を中止します。

滴下変動がある場合は、適宜滴下調整します。経腸栄養ポンプを使用する場合でも、きちんと注入できているかを観察します。注入中にチューブの自己抜去が起きると誤嚥の危険があるため、身体拘束を行うことを検討します。

ただし、身体拘束を行う場合は3原則(切迫性・非代替性・一時性)に基づき、最小限にとどめます。ほかに、胃ろう周囲からの漏れにも注意が必要です。

経腸栄養剤注入後に行うこと

水分・薬剤の注入

栄養剤がなくなったことを確認できたら、栄養チューブを外し、カテーテルチップ型シリンジで白湯を流します。このとき、細菌増殖を予防する目的で、食用酢を10倍程度に希釈(食用酢1ccに対して水10cc)し、注入することもあります。

内服薬がある場合は、薬の破石などがチューブに詰まることがあるため、簡易懸濁法を実施するとよいでしょう。

使用した注射器や栄養チューブ、イリゲーターなどはお湯で洗い流します。その後、80倍に希釈した消毒液に約1時間つけます。

注入後の対応と観察

注入が終了したら、経鼻胃管や胃ろうを開放し、胃の内圧を除圧します。

注入直後は栄養剤で胃が充満しているため、逆流を防ぐために最低でも1時間は急に身体を動かしたり、緊張させないようにします。

また、呼吸状態、意識レベル、吐気などに注意し、嘔吐がみられた場合は、顔を横に向け口腔内の吸入を行います。

栄養剤の性状や量、滴下速度、腸音、バイタルサインなどは次回注入時に役立てます。

参考文献

● 医療・看護安全管理情報「経鼻栄養チューブの誤挿入・誤注入事故を防ぐ」(2002年8月15日)
http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/anzen/pdf/no_8.pdf
● 緊急安全情報「経鼻栄養チューブ誤挿入による死亡事故について」(2005年5月2日)