【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識

腹腔穿刺・胸腔穿刺とは?

監修 犬飼道雄

岡山済生会総合病院 内科 主任医長

執筆 奥谷大介

岡山済生会総合病院 外科 医長

【目次】


腹腔穿刺・胸腔穿刺とは

腹腔内に針を刺すことを腹腔穿刺、胸腔内に針を刺すことを胸腔穿刺といいます。穿刺により、以下のことが可能となります。

  • 内容物を採取することで性状の確認や診断をすることができる 
  • 内容物を排出することで腹部膨満感や呼吸困難感などの軽減を図ることができる
  • 薬物を注入することで治療ができる

なお、腹腔穿刺では貯留内容物が液体であるのに対し、胸腔穿刺では空気の場合もあります。

腹腔穿刺・胸腔穿刺の流れとケア

腹水穿刺・胸水穿刺の概念や流れを理解し、穿刺前・中・後にするべきことをイメージします。

穿刺前

穿刺前に行うことは大きく2つあります。1つは患者さんが安心して検査・治療を受けられるように環境を整えることです。患者さんや家族に具体的な流れや方法を説明し、寄り添う姿勢を示すことが重要です。もう1つは必要物品の確認と準備することです。必要物品の一例を以下に示します。

◆必要物品の一例

超音波診断装置、滅菌手袋、穴あき滅菌ドレープ、局所麻酔薬、注射針、注射器、穿刺針、三方活栓および接続チューブ、廃液用容器など

穿刺中

腹腔穿刺、胸腔穿刺にはそれぞれ特有の手技がありますが、どちらの手技にも基本となるポイントを解説します。

1)バイタルサインのチェックや一般状態の確認を行い、適切な体位をとります。腹腔穿刺では基本的に仰臥位(図1)をとりますが、場合によっては座位(図2)または側臥位にすることもあります。

胸腔穿刺ではファーラー位(図3)のほか、オーバーテーブルに枕を置き、枕を抱きかかえるようにする方法(図4)もあります。

適切な体位がとれていることを確認できたら、医師が超音波検査で穿刺部位を決定します。

腹腔穿刺を行う際にとる体位

腹腔穿刺を行う際にとる体位の説明図、仰臥位
図1 仰臥位

腹腔穿刺を行う際にとる体位の説明図、座位
図2 座位

胸腔穿刺を行う際にとる体位

胸腔穿刺を行う際にとる体位、ファーラー位
図3 ファーラー位

胸腔穿刺を行う際にとる体位、オーバーテーブルと枕を使用した体位のとり方
図4 オーバーテーブルと枕を使用した体位のとり方

2)処置用シーツを敷き、皮膚を消毒します。局所麻酔の後、穿刺針で穿刺します。穿刺針の先端が腔内の適切な場所にあることを確認したら、穿刺針が抜けないようにテープで固定します。三方活栓、輸液セットなどで除水ルートを接続し、排液用容器を設置します。医師の指示により必要な検体を採取します。

1)と2)を行う際に看護師に求められる重要な役割は、穿刺による除水がスムーズに行えるように介助することと、患者さんの苦痛への配慮や状態観察です。状態観察では適切なタイミングでの声かけやSpO2値の測定が有効です。

3)穿刺針の抜去を行い、排液内容物の性状と量を記録します。処置時に汚染した部位を清拭し、寝衣を元に戻して安楽な体位にします。さらに、バイタルサインもチェックします。

穿刺中・後の観察のポイント

急激な排液や大量の排液により血圧低下や脈拍の変動を伴うことがあります。そのため、穿刺中は顔色、脈拍、呼吸状態、血圧などに注意します。
 
腹腔穿刺では、腹腔内圧が上昇していた状態から除水による静脈圧の著しい低下が起こるためショック状態に陥りやすくなります。胸腔穿刺では短時間に大量の内容物を除去することによる肺水腫のため呼吸困難、咳き込み、胸部不快感が出現することがあります。

また、穿刺自体による臓器損傷で合併症が生じることもあります。腹腔穿刺では腸管損傷による腹膜炎、胸腔穿刺では肺損傷による気胸がそれぞれ起こりえます。

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