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細菌感染・炎症の検査値を読み取ろう|WBC、CRPなど

解説 山崎悦子

横浜市立大学附属病院 臨床検査部部長・准教授

【目次】


人体が病原体に感染すると、その局所臓器に炎症反応が起きます。この炎症のマーカーとして代表的なものが白血球数(WBC)、血小板数(Plt)、C反応性蛋白(CRP)です。ただし、これらの炎症マーカーは感染症に特異的なものではなく、悪性腫瘍や自己免疫性疾患、心筋梗塞などでも上昇するので注意が必要です。


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特に注目! 白血球数(WBC)

WBCは、CRPよりも炎症を鋭敏に反映するので、その疑いがある場合には最初にチェックします。そして、高値あるいは数値に変動がある場合は、必ず白血球分画をみるようにしましょう。

好中球をみるときは「左方移動」の有無がポイントです。好中球は骨髄で分化・成熟し、貯蔵され、血液中に供給されるようになっています。骨髄には、成熟した分葉核球のほか桿状核球など幼若好中球があります。左方移動とは、分葉核球の供給が間に合わず、幼若好中球の血中の割合が増えた状態をいいます(図)。それは、つまり骨髄での産生が間に合わない
ほど好中球が消費されていることを示しており、感染状態が疑われる根拠となります。

ただし、感染性心内膜炎や細菌性髄膜炎、膿瘍は左方移動を認めないことがあるため注意が必要です。細菌感染症を疑う場合は、WBCと白血球分画で左方移動の有無を確認し、CRPなどの関連項目と合わせて総合的に判断するようにします。

好中球の体内動態

異常値を読み取ろう

血液一般検査

●WBC/白血球分画

➡組織に侵入した細菌やウイルスなどの異物に対する生体防御の働きをもっています。好中球、単球、リンパ球、好酸球、好塩基球の5種類(白血球分画)からなりますが、末梢血液中のWBCの50 ~ 70%は好中球が占めているため、WBCの増減のほとんどが好中球の変動であると考えてよいでしょう。好中球は細菌などを貪食・殺菌する働きをするため、細菌などに感染すると好中球が増産され、WBCが増えます。そのため感染症の有無や程度を推測する指標として用いられるのです。

白血球分画は、WBCが基準範囲よりも高値または低値の場合に測定します。好中球は細菌貪食作用、リンパ球は免疫作用、好酸球や好塩基球はアレルギー反応にかかわるなど、それぞれ異なる働きがあるため、各分画値で疾患が推測できます。しかし、確定診断には、Pltや赤血球形態などの検査も合わせて行う必要があります。

異常値からコレがわかる!
■WBC
高値(増加)
[発熱、CRP増加を伴う]重症感染症
[貧血、血小板減少を伴う]急性白血病
脾臓機能の障害など

低値(減少)
骨髄機能の障害など

■白血球分画
高値(増加)
[好中球]肺炎や髄膜炎など細菌感染症、急性心筋梗塞、急性虫垂炎、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患など
[リンパ球]ウイルス感染症、慢性リンパ性白血病など
[単球]結核、亜急性細菌性心内膜炎など
[好酸球]気管支喘息、アトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患、寄生虫感染、慢性骨髄性白血病、好酸球増加症候群(HES)など
[好塩基球]慢性骨髄性白血病、真性多血症(PV)、アレルギー性疾患など

低値(減少)
[好中球]細胞内寄生性病原体(ウイルス、マラリア、サルモネラなど)による感染症、敗血症など

●Plt

➡血小板血栓をつくり、出血を止める働きをします。細菌感染症などの炎症性疾患では、肝臓を中心に、トロンボポエチンという血小板前駆細胞の増殖を促進するサイトカインが産生されるので、その結果Pltが増加することになります。そのため、炎症性疾患を疑う場合は、Pltも合わせてみることが大切です。ただし、血管内に何らかの病変があると、Pltは早くから減少するので、細菌感染症でPltが減少していたら敗血症を疑います。

異常値からコレがわかる!
高値(増加)
[腫瘍性]本態性血小板血症(ET)、慢性骨髄性白血病、PV、骨髄線維症など
[反応性]悪性腫瘍、感染症、貧血(鉄欠乏性、溶血性)、出血、脾臓機能の亢進など

低値(減少)
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、急性白血病、再生不良性貧血、抗がん剤や放射線による骨髄抑制、全身性エリテマトーデス(SLE)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症など

生化学検査

●CRP

➡肺炎球菌の細胞壁にあるC多糖体と結合する蛋白質の1つ。体内に炎症や組織損傷が起こると急激に増加するので、代表的な炎症マーカーとして用いられます。ただし、その上昇は炎症が生じてから2~3日後がピークとなるので、WBCの変化よりも鈍く、リアルタイムの結果を求めるには不向きです。

異常値からコレがわかる!
高値(増加)
細菌感染症、膠原病、悪性腫瘍、心筋梗塞

凝固検査

●FIB

➡血液凝固因子ですが、Pltと同様に炎症で増加する性質があります。炎症と凝固を引き起こすサイトカインが密接に関係しているので、感染症を疑う場合は、FIBが増加しているかをみます。ただし、細菌感染症でFIB低下が認められたら、敗血症からDICの合併を疑います。

異常値からコレがわかる!
高値(増加)
炎症性疾患
低値(減少)
DIC

新たな炎症マーカー「プロカルシトニン(PCT)」

PCTは比較的新しい細菌感染症の検査項目です。甲状腺で産生されるカルシトニン(カルシウム調整ホルモン)の前駆体ですが、重篤な細菌感染症の場合、サイトカインの働きの影響を受けてさまざまな臓器で産生、血液中に分泌され、血中濃度が上昇します。CRPより早期に上昇し、治療に対しても早期に反応(減少)します。細菌感染か否かの鑑別診断や、重症度評価にも用いられます。ただし、CRP同様にリアルタイムの評価には向きません。



(ナース専科マガジン2016年7月号より転載)

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