【連載】学会・セミナーレポート

訪問看護への一歩を踏み出そう! 病棟看護(キュア)と訪問看護(ケア)の違いを知ろう!

講師 多江 和晃

Life On Vital Element株式会社 代表取締役/看護師

Tae

講師 砂子 奈未

Life On Vital Element株式会社 在宅・施設訪問看護リハビリステーション 自由が丘本店 管理者

Sunako

講師 三森 夕里江

Life On Vital Element株式会社 在宅・施設訪問看護リハビリステーション 新宿WEST支店 チーフ

Mitumori

講師 印牧 桃子(カネマキ モモコ)

Life On Vital Element株式会社 在宅・施設訪問看護リハビリステーション 旗の台支店 チーフ

Inmaki

協力 Life On Vital Element株式会社

LE在宅・施設 訪問看護リハビリステーション

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ナース専科とLife On Vital Element株式会社(以下LE社)は2017年2月12日、「病棟看護(キュア)と訪問看護(ケア)の違いを知ろう!」と題した訪問看護入門セミナーを共催しました。首都圏を中心に多くの訪問看護リハビリステーションを展開するLE社の代表取締役である多江和晃先生が、「訪問看護業界の実際と魅力」について講演したほか、訪問看護の具体例としてケーススタディを3つ紹介しました。


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セミナーには訪問看護に関心をもつ若手看護師が集まった

第1部 地域包括ケアで求められる訪問看護の重要な役割

福井赤十字病院に初の男性看護師として入職し、その後順天堂大学医学部附属順天堂医院などを経て、2007年にLE社を興した多江和晃先生。多江先生は「“廊下が道路で自宅が病室”といわれる在宅医療が国の方針によって推進され、今後ますます訪問看護が重要性を増す」と強調します。

背景には、日本における65歳以上の高齢者数が、2010年は4.4人に1人だったの対し2030年には3.2人に1人になるという超高齢社会の到来があります。「医療費や介護費が増大し、このままでは日本の医療・介護は崩壊する」と多江先生は指摘します。

そのリスクを避けるために厚生労働省が推進しているのが、「地域包括ケアシステム」です。退院がゴールだったこれまでの医療から、“ときどき入院、ほぼ在宅”への転換を目指し、住み慣れた地域で、高齢者が自分らしく最期まで暮らし続けることを支える役割を果たすためのものです。「訪問看護は地域包括ケアの要として期待が大きく、業界の未来は明るい」と多江先生は展望を語ります。

今後の訪問看護市場にも触れました。訪問看護ステーションの数は、2012年には約5,000カ所でしたが、この5年で9,000カ所まで増加しているといいます。こうした状況から、訪問看護ステーションの競争が激化し、今後は大手企業だけが生き残り、淘汰の時代へと突入すると多江先生は予測します。

LE社はそんな中、原則として“365日24時間”の運営はしない方針を掲げても、成長を続けているといいます。「訪問時以外に何が起こりうるか予想して対策をあらかじめ講じておくことで、急な呼び出しを防ぐことができます。活用者さん*のニーズを満たすだけでなく、看護師の過重労働を防ぎ、医療費の削減に貢献することにもつながります」と自社の取り組みを強調しました。
実際に、LE社での訪問看護の様子を動画で紹介。いきいきと働くスタッフの姿に参加者の皆さんも興味深くスクリーンを見つめていました。


これからの社会構造の変化と訪問看護師の必要性について語る講師の多江先生

*LE社では、ご利用者様のことをご活用者様と呼んでいる

第2部 病棟看護と訪問看護の違いを具体例に沿って実感

次の講演では、LE社の3人の訪問看護師が実際の事例を紹介。 訪問看護で必要とされる姿勢や注意点などを述べました。

自由が丘本店に勤務する砂子奈未先生は、糖尿病を患った85歳の男性の退院直後から現在までの在宅療養について紹介しました。

砂子先生は、「ご活用者様は、ご家族とも高齢であるため自宅でのんびり過ごしたいという意向があり、それに沿った介入を心がけた」と言います。認知症の症状もあり、日常生活面や服薬の管理がうまくいかないことが予測されたため、介入当初はヘルパーとも連携し、血糖値測定やインスリン自己注射の手順を記載したパンフレットを作成し、指導していきました。

在宅看護の場合、「周囲への聞き取りなどを進めながらご活用者様にとっての“強み”を見つけることが重要」と砂子先生は指摘します。この事例では、同居する長女がケアの一端を担うキーパーソンでしたが、在宅介護は長期にわたることが多く、活用者さんの状態は徐々に変化するため、経過に合わせて上手に生活を続けていく方法を模索していくことが必要ですと砂子先生は言います。

次に、新宿WEST支店に勤務する三森夕里江先生は、アルコール依存症の既往歴をもつアルツハイマー型認知症の70歳代男性の事例を取り上げ、病棟と在宅看護の違いについてレクチャーしました。

ご活用者様には当初、外出拒否、受診拒否、食事拒否といった気力低下やうつ症状が見られ、看護師の介入にも消極的でした。「まだ死ねないの」が口癖でしたが、話題を巧みに切り替え、屋外歩行を促すことで、徐々に活動量を上げていくことに成功。その結果、精神面での安定が図られ、趣味だったベランダ菜園を再開するまでに至ったといいます。

認知症の場合、「回復を目指すのではなく維持を目的とし、その人独自のペースに合わせて見守っていくことが最も重要」と三森先生は話しました。

3事例目は、旗の台支店でチーフを務める印牧桃子先生が、42歳子宮頸がんの女性のがん性疼痛管理と終末期を約1カ月間支えたケースを紹介。QOLに沿った看取りについて話しました。

ご活用者様は、がんの診断を受けても積極的な治療を望まず、診断から5年後にがん性疼痛にて入院。経口摂取困難からCVポートの造設や小腸瘻の造設を行ってから退院したため、自宅での介入を開始しました。

医師とこまめに連携し、疼痛コントロールを中心としたターミナルケアを実施。同じくがん患者でもあるというご主人との1年目の結婚記念日までは生きていたいとの希望を叶えるために、スタッフ全員で命をつないでいきました。そして記念日の朝、活用者さんは息を引き取られました。印牧先生は、「訪問看護師として大事な役割を果たせたと思う」と感慨深く当時を振り返りました。

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写真は第3部のグループワークの様子

第3部 グループワークで訪問看護師になってみる

セミナーの最後は、参加者全員が5~6人のグループに分かれて、グループワークを実施しました。

グループごとに、訪問看護師になったつもりで、「アルツハイマー型認知症の90歳独居女性」のケースから起こりうる問題点と介入策について、模擬カンファレンスを実施。予定されていた時間では収まらず、時間を延長して討議が重ねられました。

最後に要点をまとめてグループごとに発表しました。多江先生から、「地域包括ケアにおける看護師としての視点をもち、活用者さんや家族にとって何が本当の安心につながるのかを考えていけたのではないか」との講評があり、参加者の皆さんにとっては、訪問看護の端緒に触れた一日となりました。

その後は、質疑応答と講師を交えての懇親会が開かれました。参加者同士、情報交換したり、セミナーについての感想を語り合ったりと、和気あいあいとした雰囲気に包まれた会でした。

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講師も交えた懇親会では訪問看護についての質問が飛び交った


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