【連載】訪看ステーション「よつば」の公開カンファレンス

CASE14 不定愁訴が多いが、対症療法薬の管理も困難

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

困難事例14 不定愁訴が多く内服管理が困難なケース


70歳で左肺がんで左開胸手術を実施したAさん。その後、術後の後遺症かははっきりしないものの、8年経過している現在も左肩の強い凝りが続いている。
また不定愁訴が多く、市販薬の風邪薬を追加で飲むことが多々あり。
Aさんからの繰り返される不定愁訴に対し、医師が新しい薬を処方すると、本人が希望したにもかかわらず不安があるようで、自己判断で調整されたり、市販薬を追加してしまう。


カンファレンスの理由

不定愁訴が繰り返されるため、医師が新しい薬が処方するが、Aさんは新しい薬にも不安があるらしく、自己判断で調節したり市販薬を追加してしまう。
そのようなAさんに対し家族も困っており、薬の管理が難しいと感じ、どうしたらよいかをよつばスタッフで、カンファレンスすることとなった。


ほのかのイラスト
ほのか:肩凝りがひどくて眠れないとのことで、先生に報告して薬を出してもらいました。
Aさんに「どんな薬なの?」と聞かれたので、「筋肉の緊張を緩める薬なので肩凝りにも効くと思いますよ」とお話ししたんです。するとそれが裏目に出てしまったようで・・・。
フラフラするのは、その薬のために緊張が緩んで力が入らないんだと言い出されて、自分で薬を抜いてしまわれて。

かなのイラスト
かな:私も訪問でみていますが、客観的にみるかぎり足のフラつきは以前からで、特に変わりはないようにみえました。ただ、ごく稀に実際にそのような副作用もあるようなので、いったん中止にしてもらったんです。
そしてまた先生にお願いして、別のお薬を出してもらうことにしたんですよね?

ほのかのイラスト
ほのか:はい。今度は神経痛を緩和する薬でした。そのときもどんな薬なのかと聞かれたので、「神経痛に効く薬ですが、肩凝りにも効果があるから先生が出してくれたんですよ」とお話しをしたんです。
でも、内服後しばらくするとご家族に、また新しい薬が始まったから具合が悪くなったとお話しされていたみたいで。
ご家族は「肩凝りは後遺症だからもう我慢するしかない」と思われているようで、Aさんは「誰も私の痛みなんてわからないよ・・・」と落ちんでいました。

りんのイラスト
りん:私が訪問したとき、ご家族にお会いできたのですが、Aさんは体調が悪くなると何でも新しい薬のせいにしたがるので、薬の説明をしないほうがいいのでは、とも言われました。
どうせ一包化されていてわからないだろうから、こっそり薬の調整をしてくれたほうがいいとも言われました。
でもAさんは、ご自身で薬の数を数えられるくらい、しっかりされている方ですから、聞かれたら嘘をつくこともできませんしね。難しいところですよね。

ほのかのイラスト
ほのか:頑固な肩凝りの訴えは、結局、何を処方されてもあまり効かないみたいです。困りましたね。


その後、さらにいくつかの薬を試したあと、最終的には、肩凝りにも風邪にも効く薬として葛根湯を処方され、Aさんは納得したようにみえた。
しかししばらくすると、やはり肩に鉛をぶら下げているように重くてつらいと訴えるようになり、市販薬を重ねて飲み始めた。
この繰り返しには家族も困っており、再度、どうしたらよいかを考えるためにカンファレンスが開かれた。


りんのイラスト
りん:Aさんはもしかしたら、誰かに自分の想いを聴いて欲しいだけなのかもしれないと思うんです。
Aさんはご家族と一緒に住んでいらっしゃるので、メンタル面のサポートはご家族がいるので安心かなと思っていたのですが、どうやらそうでもないのかもしれません。

かなのイラスト
かな:というと?

りんのイラスト
りん:ご家族は、昔から繰り返し聞かされている不定愁訴に慣れてしまって、Aさんの肩凝りのつらさを「また言っている」と受け取ってしまっているようです。そんなご家族の様子をみていて、Aさんは寂しいのではないかと思うのです。
確かに自分が家族の立場であれば、毎日同じ訴えを聞かされているうちに慣れてしまうのも無理はないかなと思うのですが、Aさん本人にとっては時間が経っても変わらず痛いのですから、聴いてもらいたいと思うのではないでしょうか。

ほのかのイラスト
ほのか:実際にAさんの肩はガチガチに凝っていますものね。
でもゆっくりお話しを聴きながらマッサージをすると、一時的にとはいえ筋肉が緩くなり、「楽になったよ」と笑顔がみられ、急に起き出してきて、ご飯を食べ始めたりされるんです。
実際のところ、マッサージだけでそんなに効果があるとは思えないので、メンタル的な問題も大きいのかなとは思っていましたが。

かなのイラスト
かな:私たちがまだAさんの訪問に入り始めたばかりの頃は、マッサージをしても、後日、逆に調子が悪くなった言われたことがあり、受け入れが悪かったような記憶があります。
でも、だんだんAさんとの信頼関係ができてきてからは、マッサージを喜んでくださるようになり、最初は強く拒否していたお風呂も、最近は沸かして準備して待っていてくださるようになりましたよね。
関係性ができてきたことによって、Aさんも変わられましたよね。

りんのイラスト
りん:思うに、自分の訴えを親身に聴いてくれて心を許している人に、痛いところをさすってもらうことが、Aさんにとっては不定愁訴の1番の薬なのかもしれません。
後遺症などによって、どうにもならない痛みを抱えている方は数え切れないほどいらっしゃいますが、身近にいる家族にとって、その痛みへの共感は、重くなりすぎて疲れてしまい、親身になってあげられない現実もあると思うんです。
家族に囲まれていてもわかってもらえないという孤独な気持ちになり、薬に頼りたくなるのではないかなと。

かなのイラスト
かな:なるほど。第三者だからこそ優しく親身になれるということもありますね。そういう意味では、定期的に看護師が訪問して傾聴することは、意味があるともいえますね。

たーちんのイラスト
たーちん:不定愁訴のなかには、大事な病気のサインが隠されているので、毎回真剣に向き合うことが大切です。Aさんの主治医も根気よく向き合ってくれていますよね。
医療従事者の向き合う姿勢は、利用者さんにとって「この人は真剣に自分のことを考えてくれている」という安心感から不安の軽減につながり、訴えが少なくなるケースもありますからね。

りんのイラスト
りん:私たちにできることは限られているかもしれませんが、第三者だからこそできる、利用者さんとご家族へのサポートをしっかりしていきたいですね。


次回は、乳がん術後のリハビリ指導が難しかったケースについてご紹介します。



ステーション「よつば」スタッフプロフィール

りん(所長)
訪問8年目(看護歴32年救急他)在宅ケアでの創意工夫の才能はピカイチ。勉強家で人情が厚く面倒見がよい。スーパーポジティブ思考の持ち主。
さき
訪問6年目(看護歴28年オペ室他)
神社仏閣巡りが趣味の歴女。またDIYも得意。面白き事もなき世をおもしろくが座右の銘。夢への妄想パワーは半端なし。
たーちん
訪問11年目(看護歴33年):スーパーグランマナースで超自由人。しかし可愛い笑顔で憎めない。利用者さんの為ならエンヤコラ。テニスから茶道までサラリとこなす我がステーションの親分的存在。
ほのか
訪問1年8カ月(看護歴15年小児科他)老若男女に好かれる天性の明るさの持ち主。癒し系キャラ。現在、スポーツクラブのZUMBA(ダンス)にハマっている。
かな(主任)
訪問5年目(看護歴16年。NICU他)思い込んだら一直線。やや天然ボケあり。訪問看護と猫と執筆活動(この原稿含)と音楽活動をこよなく愛している二児の母。


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