【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第7回 CKD患者さんの1日に摂取可能なリン・カリウムの値は? なぜ制限するの?

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

カリウム制限とその方法

 カリウムやリンはいずれも身体にとって重要なミネラルです。通常、余った分は腎臓で排出されるのですが、腎機能が低下すると排泄が少なくなり、高カリウム血症・高リン血症となり、さまざまな症状を引き起こすため摂取を控えなくてはなりません。
 
 まずカリウムについてですが、CKDではカリウムの排泄機能低下のみならず、アシドーシスといった病態が重複する事で、高カリウム血症の発現リスクが高まることが知られています。人体では通常、尿中への水素イオン(H+)排泄と呼吸による二酸化炭素(CO2)排出により、血液中のpHは7.4程度になるよう調整されています。しかし、腎機能が低下すると尿中に水素イオンが排泄できなくなり、水素イオンが蓄積して血液は酸性となります。この状態を代謝性アシドーシスといいます。アシドーシスの状態になると、細胞は水素イオンを細胞内に取り込み、代わりにカリウムを細胞外に放出します。このことが結果的に高カリウム血症をきたすことになるため、血清カリウム値の異常がある場合は、アシドーシスの確認も必要となります。
 
 

 高カリウム血症になると神経伝達に異常をきたし、手足のしびれ、口のこわばり、脱力感、不整脈などを引き起こすおそれがあります。さらに進行すると不整脈から心停止に至る恐れがあるため注意が必要です。ではCKD患者の1日に摂取可能なカリウムの値はどれくらいなのでしょうか? 
 
 まず保存期CKDでは、低たんぱくの食事療法が実施され、肉類・魚介類などのたんぱく質の摂取が制限されることで、同時にカリウム摂取量が減ることが多く、特にカリウム制限に注意を払わなくてもよいことがあります。しかし、不適切な食事やさらなる腎機能の低下により、血清カリウム値が高値となることがあるため、その場合は、カリウム摂取量の制限が必要となります。日本腎臓学会から報告された、慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版では、「カリウムは、ステージ G3a までは制限せず、G3b では 2,000 mg/日以下、G4~G5 では 1,500 mg/ 日以下を目標とする。ただし、血清カリウム値を参考に薬剤の副作用や合併症をチェックし、必要に応じて制限することが重要である。また、たんぱく質の制限によりカリウムも制限されるため、具体的な食事指導には画一的ではない総合的な対応が必要である。」とされています。血液透析患者においては、2,000 mg/日以下、腹膜透析患者では、腹膜透析液中には血液透析液のようにカリウムが入っていないため、カリウム制限の必要はないが、高カリウム血症を認める場合には血液透析同様に制限が必要とされています。また血清カリウム値は、4.0〜5.4 mEq/L の範囲内で管理することが推奨されています。

リン制限とその方法

 次にリンについてですが、制限の必要性は、前述のカルシウムの項目で述べましたので割愛させていただき、1日に摂取可能なリンの値についてお話します。
 
 まず保存期CKDですが、現時点では、CKDのどの段階からどの程度リンを制限すればよいかについて、科学的根拠が十分でなく、設定することは困難とされており、適切なリン摂取量は提示されていないのが現状です。血清リン濃度については、日本腎臓学会のエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013版で、「保存期における血清リン値は、CKDのステージにかかわらず正常範囲(目安として2.5〜4.5 mg/dL)を保つように管理すること」が推奨されおり、血清リン濃度をみながらリン摂取量をコントロールする必要があります。また、透析患者では、日本透析医学会の慢性透析患者の食事療法基準において、たんぱく質1gあたりのリン量はおおよそ15mgと概算できることから、リンの摂取量のコントロールは、たんぱく質の摂取量のコントロールと連動すると考えられ、血液透析患者および腹膜透析患者ともに、たんぱく質(g)×15以下/dayとなっています。
 
 血清リン濃度の目標値は、3.5〜6.0mg/dLとされています。保存期CKD患者のみならず、透析患者においても、血清カリウム濃度・血清リン濃度のコントロール不良は、死亡や合併症併発の大きな危険因子です。食事療法や薬物療法を上手に取り入れることで、CKD患者の予後やQOL向上を図ります。


引用参考文献
1)日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準 2007年版
2)日本透析医学会:慢性透析患者の食事療法基準 委員会報告より 2014
3)日本透析医学会:腹膜透析ガイドライン 2009 年版                   
4)日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013

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