【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識

経腸栄養剤の選択の仕方

監修 犬飼道雄

岡山済生会総合病院 内科 主任医長

執筆 小野真由子

岡山済生会総合病院 管理栄養士

経腸栄養剤の種類と特徴

経腸栄養法(enteral nutrition:EN)に用いる製品には、医薬品と食品があります。経腸栄養剤は、原材料から天然濃厚流動食と人工濃厚流動食に分けられますが、ほとんどが人工濃厚流動食です。

人工濃厚流動食は、その組成から成分栄養剤(elemental diet)、消化態栄養剤(oligomeric formula)、半消化態栄養剤(polymeric formula)の3つに分類されます(表1)。

経腸栄養剤の種類と特徴についての表

表1 経腸栄養剤の種類と特徴

病態別経腸栄養剤の選択の仕方

原疾患の病態に合わせて経腸栄養剤を適切に選択することで、栄養状態と病態の改善が期待できます。

下痢の場合

感染性腸炎や偽膜性腸炎などの感染症、経腸栄養剤の投与速度が適切かどうかの確認が必要ですが、経腸栄養剤が原因となることもあります。

栄養剤に食物繊維が含まれていない、浸透圧が高いといった場合は、食物繊維(グァーガム分解物:サンファイバー®など)を付加するほか、高浸透圧栄養剤の変更が必要です。また、成分栄養剤は低残渣であることから、しばしば下痢の時に用いられます。

乳糖不耐症がある場合は、乳糖フリーの栄養剤(アイソカル®など)を選択します。小腸絨毛の発育や腸内細菌叢の改善には、整腸剤・食物繊維・オリゴ糖などを含む製品(GFO®、Gfine®など)が有効と言われています。

胃食道逆流がある場合

食道裂孔ヘルニアの有無、体位や投与速度などに問題がないかどうかの確認が必要ですが、栄養剤が原因となっている場合もあります。

消化をほとんど必要とせず脂肪を含まない栄養剤(エレンタール®、ペプチーノ®など)や、粘度のついた栄養剤などを選択します。

高粘度栄養剤(粘度20,000mPa・s以上)は胃食道逆流の予防効果が高いというメリットがありますが、胃ろうからしか投与できません。粘度が低下すると経鼻胃管での投与が可能になりますが、効果が減じます。

水分を制限したい場合

心不全などで水分制限が必要な場合は、1mLあたり1.5~2.0kcalの製剤を選択します。浸透圧が高くなるため、下痢には注意が必要です。

また、粘度のある栄養剤は水分含有量が少ないため、選択肢の一つとして取り入れるとよいでしょう(表2)。

水分を制限したい場合の選択例の表
表2 水分を制限したい場合の選択例

肝疾患による低アルブミン血症の場合

肝不全ではタンパク質やアミノ酸代謝異常により、芳香族アミノ酸(AAA)濃度の上昇、分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度の減少がみられます。過剰状態のAAAを減らし、減少しているBCAAを補給する目的で、BCAAを豊富に含有した栄養剤を選択します。

尿素窒素(BUN)、リン、カリウムの数値が高い場合

脱水を除いたBUNの上昇、リンやカリウム値が高い場合は、タンパク質、水分、カリウム、リン、ナトリウムを調整した経腸栄養剤を選択します(表3)。

日本腎臓学会のガイドラインでは、慢性腎臓病のタンパク質制限は0.6~0.8g/kg標準体重/日が適切とされています。

栄養剤によっては0.38~1.5g/100kcalと少ないものがあるため、過度のタンパク質制限にならないように注意が必要です。

尿素窒素、リン、カリウムの数値が高い場合の選択例の表
表3 尿素窒素、リン、カリウムの数値が高い場合の選択例

血糖値が高い場合

血糖コントロールが必要な場合に用いる経腸栄養剤は、脂質の割合を多くして(含有エネルギー比50.7%)糖質の割合を少なくしたグルセルナ®₋EXや、緩徐に吸収される種類の糖質(パラチノースやタピオカデキルトリン)を用いたリソース®グルコパルなどがあります。

これらの製品がない場合は、糖質の吸収をやわらげる目的でサンファイバー®などの水溶性食物繊維(グァーガム酵素分解物)を付加することもあります。

二酸化炭素(CO2)の数値が高い場合

炭水化物の呼吸商(RQ)は1.0に対して、脂質の呼吸商は0.7で、脂質は炭水化物に比べて燃焼した際に発生する二酸化炭素の量が少なくなります。

そのため、CO2が高い場合は脂質含有量の多い栄養剤を選択します。呼吸不全があっても、CO2が高くない場合には、一般の栄養剤を選択します(表4)。

また、呼吸不全やCOPDの患者さんでは、エネルギー消費量が通常より120~140%と増大していることを考慮したエネルギー量の設定が必要になります。

二酸化炭素の数値が高い場合の選択例の表
表4 二酸化炭素の数値が高い場合の選択例

傷を治療する場合

アバンド®はアルギニン、グルタミンやロイシンの代謝産物であるHMB(βヒドロキシβメチル酪酸)を含みます。このHMBはタンパク質合成促進やたんぱく分解抑制、過剰な炎症を調整する作用が確認されています。

また、HMBはアルギニンやグルタミンとの組み合わせにより皮膚組織の再生が期待できるといわれています。

ブイ・クレス®は鉄、亜鉛、セレン等の微量栄養素を強化した栄養剤でタンパク質合成や骨形成など多様な機能を有しているため必要に応じてこれらの補助食品を選択します。

水分含有量に注意

1kcal/1mlの経腸栄養剤の100ml中の水分量は約85%のため、水分量は100mlではなく約85mlです。2kcal/1mlの経腸栄養剤の水分量は約50%になります。また、半固形タイプの栄養剤の水分量は100g中、約75mlとなっています。

半固形タイプでもウォーターリッチタイプのものもあります。投与量と水分含有量の違いを把握していないと、気がついたときには脱水になっていたということもありえるので注意が必要です。

参考文献

●「コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック」 日本静脈経腸栄養学会編 南江堂 
●「NST完全ガイド 栄養療法の基礎と実践」 東口髙志編 照林社
●「静脈経腸栄養ガイドライン 静脈・経腸栄養を適正に実施するためのガイドライン第3版」 日本静脈経腸栄養学会編 照林社
●「改訂第2版認定 病態栄養専門師のための 病態栄養ガイドブック」 日本病態栄養学会 編 メディカルレビュー社

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