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【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第8回 CKD患者さんの1日に摂取可能なナトリウム(塩分)・水分量は?なぜ制限するの?

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

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塩分と水分がどう腎臓に影響するのか

 腎臓は余分な水分や電解質(ナトリウム、カリウム、ミネラルなど)を排泄し、身体のバランスを保っています。腎臓の糸球体では1日に約150Lもの原尿が作られ、その原尿は尿細管を通過する間に約99%が再吸収され、1日約1.5Lが尿として体外へ排泄されます。電解質では、ナトリウム、カリウム、リンなどが腎臓で調節されています。また腎臓はナトリウムと水分の排出量をコントロールすることにより血圧を調整する働きも担っています。血圧が高いときは、ナトリウムと水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、ナトリウムと水分の排出量を減少させることで血圧を上げます。さらに、腎臓は血圧を維持するホルモンを分泌し、血圧が低いときに血圧を上げます。
 
 このように腎臓はナトリウム・水分の排泄や、ホルモン分泌を調整しながら血圧を正常に保っています。しかし、腎機能が低下すると、ナトリウム・水分が溜まりやすく、また血圧を調整するホルモンバランスが崩れ、高血圧になることがあります。また腎臓の糸球体は無数の細い血管(末梢血管)からなっており、腎機能が低下し血圧が上がると、これらの末梢血管の抵抗が大きくなります。すると糸球体の細い末梢血管は硬く血液が流れにくくなり、さらに腎機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
 
 日本腎臓学会のエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013版においても収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに末期腎不全の発症は20〜30%上昇。さらにCKDを伴わない高血圧患者を対象とした観察研究でも、降圧が不十分な患者では腎機能障害が進行。高血圧はCKDの発症・進展に影響を及ぼす、と報告されています1)。そのためにもCKDでは、塩分・水分の制限を行い、血圧を適正に管理することが重要となります。
 
 では1日に摂取可能な塩分(ナトリウム)量はどれくらいなのでしょうか? 前述したガイドラインにおいて、CKDの食塩摂取量として、ステージを問わず6 g/日未満、3 g/日以上が推奨されています。しかし、日本人の平均的な塩分摂取量が11~12gと言われていることを考えると、その半分以下にしなければならず、厳密な管理が必要となります。最近では食品に栄養成分値が表示されることが多くなったため、食塩量を把握しやすくなりましたが、食塩量ではなくナトリウム量で表示されている場合もあるので、その際は食塩量に換算する必要があります。下記にナトリウム量からの食塩量換算式を記します。

ナトリウム(g)×2.54=食塩(g)

 普段、何気なく食べている食品、特に加工品には食塩が多く含まれているため注意が必要です。

水分と塩分の制限はどちらか一方だけではダメ

次に水分量についてお話します。前述したガイドラインにおいて、保存期CKDではCKDステージG1,G2では、水分負荷は腎機能保持に有効とされるが、CKDステージG3以降では、水分負荷が腎機能増悪の危険因子であるとする報告もある。脱水は、CKDのいずれのステージにおいても腎機能を悪化させる危険性があるため、適切な水分量の維持が重要である、とされ1)、CKDのステージや尿量・不感蒸泄など、個々に合わせた適切な水分量のコントロールを行い、脱水や体液過剰にならないよう十分な注意が必要です。透析患者では、日本腎臓学会の慢性腎臓病に対する食事療法基準 2007年版において、腹膜透析患者では、「尿量+除水量/ml/day」血液透析患者では、「できるだけ少なく(15ml/kgDW/day以下)」とされています。

 そこでCKD患者に限らず、水分制限をする際、塩分を制限せずに水分だけを制限しようとするのは無理な話です。なぜなら塩分を多く摂取すると、血液中のナトリウム濃度が高まります。このナトリウム濃度を正常に戻すためには、水分で薄めなくてはいけません。逆に、たくさん水を飲むと血液中のナトリウム濃度が低下するため、しょっぱいものが欲しくなります。このように、人間には体液の成分に異常を来すと、正常に保とうと自己防衛反応が働くようになっているため、我慢することはできません。水分制限するためには塩分制限が、塩分制限するためには水分制限が必要不可欠と言えます。

 高血圧・体液過剰、また脱水はCKDを進行させるだけでなく、心血管合併症や死亡の大きなリスクとなっています。CKD患者の安定した生活を続けていくためには、水分・塩分の適正な管理を行うことが重要です。


引用参考文献
1)日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013
2)日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準 2007年版