ショック時の輸液(輸液蘇生)

解説 讃井將満

自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部 部長

輸液反応性とはなにか

 ショック時には、輸液の急速投与を行います。これは、輸液によって一回拍出量が増えることにより、心拍出量が増えて、結果、酸素供給量が増えることを期待するためです。

 一回拍出量、そして心拍出量が増えるのは、心臓の前負荷が影響します。前負荷とは、心臓が収縮を開始する直前に心筋にかかる負荷のことで、静脈から心臓に戻ってくる血液の量、すなわち静脈還流量、あるいは血管内容量と呼ばれることもあります。前負荷が多ければ多いほど心筋が伸びて、その分、縮むため、心拍出量は増えてくるのです(図)。

心拍出量と前負荷の関係グラフ

 以前は、前負荷の指標として中心静脈圧(central venous pressure:CVP)が使われていました。しかしながら現在ではCVPは、輸液によって心拍出量が増えるかどうか、すなわち輸液反応性の指標としての性能は低いことがわかっています。つまり、CVPが低いときに輸液をしても心拍出量が増加しないことや、逆にCVPが高くても心拍出量が増加する場合が多いのです。実際、輸液反応性があるかないかをCVPで予測しようとしても50%の確率でしか当たらないのです1)
 


 では、輸液反応性があるかないかを判定するにはどうしたらよいでしょうか。最も良い方法は急速輸液(=輸液チャレンジ)なのです。つまり、30分間で500 ~ 1,500mLなど、非常に速いスピードで比較的大量の輸液を行い、反応があるかどうか確認するのです。図では前負荷が増加すれば心拍出量も増加することを示していますが(A点)、このカーブは最終的に平坦になります(B点)。心筋は無限に伸びるわけではないのです。注意が必要なのは、輸液チャレンジはスピードと量が重要で、100mL/h程度では決してこの判定はできないということです。
 
 もし心臓がA 点にいれば、急速輸液を行ったときに心拍出量が増加します。そのとき、輸液に反応があったと判定します。この状態は、輸液を行うことが有用であり、必要に応じて引き続き輸液を行うべき状態と考えられます。

 一方、もしB 点にいれば輸液反応性がない状態と考えられ、急速輸液を行っても心拍出量は増加しません。この状態は、輸液は無効であるばかりか、輸液を絞るべき状態と考えられます。なぜなら、前述のように等張電解質輸液剤の4分の3は間質に移動するので、繰り返し急速大量輸液を行うことにより輸液反応性の有無を確認することによって生じる肺水腫、脳浮腫、腹腔内圧上昇、患者さんの死亡率の上昇2~5)などの弊害も懸念されるからです。

輸液反応性の評価

 病棟などで実際に心拍出量が測定できないときに、輸液反応性の有無をどのように評価したらよいでしょうか。これには、血圧、脈拍数、尿量、血清乳酸値、手足の触診などがあります。

 輸液によって冷たかった手足が温かくなると、輸液の効果があったと判断できます。これは看護師ができる大切なフィジカルアセスメントですね。体幹や四肢の網状皮疹(リベドー:皮膚の色調不良領域が網目状に広がった状態)が改善するか否かも、輸液反応性の指標として利用可能です。

輸液前に輸液反応性が予測できないか

このように、輸液は薬になるだけでなく毒にもなることがわかりました。できれば輸液を行う前に輸液反応性の有無を予測したいですよね。最も良い方法が足上げ試験です。頭部を挙上させた状態から、頭部を下げて下肢を一気に上げます(図)。そうすると、下肢に貯留していた血液が心臓に戻るため、輸液を行ったのと同じような効果が得られます。これが足上げ試験です。

足上げ試験の前後に必ず血圧、脈拍数などを評価して反応の有無を確認することが重要です。その他にも、たまたま患者さんの体位を変換したときに血圧が低下したら、血管内容量は不足し輸液に反応があるだろうと予測できます。

足上げ試験の図

輸液の目的

このように考えると、ショックの輸液蘇生の目的は2つあることがわかります。①心拍出量の上昇により重要臓器への酸素供給量を確保することと、②輸液反応性の有無をチェックする、つまり輸液が必要かどうかを判定することです。だからこそ輸液前後の観察が重要なのです。

看護師の観察ポイント

ショック時の輸液では以下をみよう!
●ルートは良好か
●適切な輸液製剤か(第一選択は生理食塩水またはリンゲル液)
● 投与スピードは適切か(30分で少なくとも500mL)
●脈拍数、血圧、尿量、フィジカルアセスメント(皮膚の観察、手足の温かさ)
●観察のタイミング:急速輸液投与前と終了時(輸液開始30分後)の比較が大切


引用文献
1)Gelman S:Venous function and central venous pressure:a physiologic story. Anesthesiology 2008;108(4):735-48.
2)Boyd JH,et al:Fluid resuscitation in septic shock:a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with
increased mortality.Crit Care Med 2011;39(2):259-65.
3)Maitland K,et al:Mortality after fluid bolus in African children with severe infection.N Engl J Med 2011;364(26):2483-95.
4)de-Madaria E,et al:Influence of fluid therapy on the prognosis of acute pancreatitis:a prospective cohort study.Am J Gastroenterol 2011;
106(10):1843-50.
5)Rosenberg AL,et al:Review of a large clinical series:association of cumulative fluid balance on outcome in acute lung injury:a
retrospective review of the ARDSnet tidal volume study cohort.J Intensive Care Med 2009;24(1):35-46.



(ナース専科2016年4月号より転載)


この特集をもっと読みたい人はこちら

書籍購入サイトURL

ページトップへ