お気に入りに登録

【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識

誤嚥を防ぐポジショニング

監修 犬飼道雄

岡山済生会総合病院 内科 医長

執筆 助金 淳

日比野病院 診療技術部リハビリテーション科 主任

Icon

ポジショニングで大切なことはおもに2つ

食事のときのポジショニングで大切なのは、1)姿勢が安定していること、2)身体がリラックスしていることです。患者さんが、基本姿勢がとれているかチェックしてみましょう。

いすの場合

ポジショニングの基本

正しい座位とは、下半身と体幹を安定させることで上肢や頭頸部などがリラックスした状態になり、食物の取り込み・咀嚼・嚥下がスムーズに行える姿勢(ベンチ座位、いす座位)です(図1)。

高齢者は筋肉減少から座位の不安定を招きやすいため、床面には足底、座面には両坐骨をきちんとつけて、筋肉の相互作用で下半身を安定させます。下半身が安定することで上半身がリラックスし、両手、口、のどが働きやすくなります。


図1 いす座位

車いすの場合

足底が床につかない

食事の時はフットレストから足を床におろします。身体よりサイズの大きな車いすを使用する場合は、車いすに足台を利用して、臀部が前滑りになることを防ぎます。

両坐骨や背中がつかない

サイズが大きい車いすは前滑りになりやすく、姿勢が前後左右に傾いて全身に余計な力が入ります。また、数年も使えば背もたれにも座面にもたわみが出てきます。背もたれがたわめば前滑りになりやすく、座面がたわめば、身体が傾きやすくなります(図2)。

前滑りの防止や姿勢の保持には、硬めのクッションを使うと効果的です。ほかに、適切なサイズの車いすを選択する、両足を床面につける、足台を使用するなどして身体を安定させます(図3)。

図2 座面のたわみによる傾き

図3 前滑り防止と姿勢の保持

座面高とアームレストの高さが合わない

低床車いすでは、机やテーブルと高さが合わないこともあります。また、アームレストの位置が高い場合、手の可動域が制限されることもあります。

その場合は、クッションで座面高を上げることも考えます。ただし、左右の安定の弱い患者さんでは、アームレストが低くなることにもなり、側方へ転倒の危険性があります。

側方への転倒防止対策として、両体側や両骨盤部で側板との隙間を埋めるように、枕などを用いて上体を安定させる工夫が必要です。

頭部が後屈し、口が開いたままになってしまう

臥位から座位への移行期の患者さんで、頭部が後屈し、口が開いたままになっている患者さんでは、頭までサポートできる背板(バックサポート)を用意します。

ほかに、背板の腰椎部を膨らませて腰のくぼみをサポートし、坐骨支持を強調するランバーサポートクッション、背中を包んで状態を安定させるクッションなどを用いるのもよいでしょう。

これらのクッションを使って上体を安定させ、両足を床に着けた状態で様子をみます。

上半身が前に倒れるようであれば、大きめの抱きクッションや、車いす用のカットアウトテーブルを用いて両肘で身体を支えます。

頸が安定しない場合は、背板の高いヘッドレスト付きの車いすを選択します。このとき、ヘッドレストは頭を包みこむような形状だとより安定します。

頭位は軽く顎を引くぐらい(下顎-胸骨間約4横指を目安)に設定します。唾液嚥下を観察し、頭位が適切か否かを確認します。

頭や上体が安定しない

頭や上体が安定しない、あるいは起立性低血圧を起こしやすい患者さんでは、背中から頭までを支えるリクライニング車いす(図4:左)を選択します。

リクライニング車いすは背もたれを倒せる機能があり、ストレッチャーのように平らにできるものもあります。ただし、臀部の前滑りを招きやすいので注意が必要です。

臀部の前滑りを防ぎたい場合は、背もたれの角度はそのままで座面角を変えることができるティルト車いす(図4:右)を使用します。

また、リクライニング車いすとティルト車いすの機能を合わせた、ティルト・リクライニング車いすもあります。

使用方法は、まずティルト0度、リクライニング0度の状態で患者さんを移乗します。次にティルト機能を使って臀部を座面奥にしっかりと落とし込むようにしてから、リクライニングを行います。最後にヘッドレストを頭頸部が軽度顎引き姿勢になるように調整します。

背板や座シートの張り具合を調整できる背張り調整機能のあるものでは、ティルトを行った状態で背張り調整を行うとよいでしょう。


図4 リクライニング車いすとティルト車いす

>>次ページは、ベッドの場合について解説します。