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【連載】山内先生の公開カンファランス

第120回 【解説編】誤嚥性肺炎で入院してきて、胸痛を訴える患者さん

解説 山内豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/米国・登録看護師、診療看護師/保健師

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事例
[Yさんより提供された事例]
80歳代で誤嚥性肺炎で入院してきた男性患者さん。あるとき、胸痛を訴えたため、
12誘導心電図、バイタルサイン、その他身体所見を確認しましたが、特に誤嚥性肺
炎以外の症状はみられませんでした。
その後、特に胸痛に関する疾患が見つかることもありませんでしたが、誤嚥性肺炎の治療も終わり、そろそろ退院または転院となったときに、また胸痛の訴えがありました。
→あなたなら、こんなときどう対応する?


なぜそう判断したのかを言語化して整理する

 今回の質問ですが、Q 1は特に悩まずに答えた人が多いのではないでしょうか。どれを行うかと聞かれれば、すべて行ったほうがいいに決まっています。ですから、Q1の回答で一番多かったのは、1~3すべて行うという選択肢でした。それ以外を選んだ人たちは、どれも行うとよいが、あえて1つ選ぶならという観点で選択してくれたのでしょう。

 Q 1を聞かれたときに「どれもしたほうがいいのに、なんでこんなことを聞くのだろう」と思いませんでしたか。今回は、どれを選ぶかよりもどれも実施したほうがよさそうなものばかりのとき、どう優先順位をつけていくかを考える機会にしてほしいと思い、この事例を取り上げました。あと10分後に申し送りが始まってしまうとしたら、なにを優先して、なにを後回しにしますか。または、申し送りを遅らせても行ったほうがよいと判断することもあるでしょう。そして、なぜそう選択したのかを言語化して説明できるでしょうか。

 臨床では事例のように、どれもしたらよいという状況に出合うことは多いですよね。そのとき、時間が無限にあるのであれば、1つずつ行えばよいのでしょうが、実際には限られた時間、限られたリソースの中で、どれを優先して行っていくかを取捨選択していかなければなりません。

 こういった状況では、まず、やるとよいことをリストアップし、さらに、優先順位をつけて、どこまでやるのかを決める、という流れでケアを実施していますよね。選ぶための情報収集が第1段階、第2段階でその情報をもとになにを選び、なにを捨てるのかを判断していくという流れになるはずです。

 臨床推論の授業でも、『選ぶ』ということは『ほかを捨てる』ことで、そのときに決断できるための情報をもっていないと、立ち止まってしまうと伝えています。そして、臨床推論とは普段、無意識に判断して処理していることについて、意図的に考えて進めることを指します。直感や経験で判断していることについて、なぜそうしたのかを言語化して整理することが大切です。


事例つづき
12 誘導心電図、バイタルサイン、呼吸音などを確認したところ、異常はみられませんでした。精神的なものではないかと考えています。


「ある」ということに引きずられない

 再度、胸痛の訴えがありましたが、特に異常はなかったということです。私たちは、どうしても「なにか変わったことはないかな」「なにか所見がないかな」と異常がある、というあるある情報を探してしまいがちです。この事例がもし、「最初に胸痛を訴えたときに心電図に異常がありました」とあったら、次に胸痛を訴えたときも、それに引っ張られてしまう人もいるでしょう。クリティカルシンキングは他人についてするよりも自分に対して行うほうが難しいものです。常に本当にそうなのか、それだけなのかという視点はもっていてほしいですね。

優先順位は環境や状況で変わる

 今回の事例で考えてほしいと思ったのは、優先順位をどうつけるかです。優先順位をつけるにあたって、やるべきことをリストアップすることは必要条件ですが、それだけでは必要十分条件ではありません。状況に応じて、リストにある項目の順番を変えられることが求められます。ACLSのように、どんな患者さんに対しても同じ判断基準で、同じ順番で
実施するものは、1度覚えてしまえば機械的にできるようになります。でも、急変などではない場面では、80歳の患者さんと20歳の患者さんでは優先すべきことが変わることもあります。さらに、患者さんのおかれている状況や病院の特徴によっても変わるというのは、実際に働いているみなさんもよくわかっていることではないでしょうか。実務は段取りです。患者さんと病院の環境やスタッフの状況を踏まえて、どうするのがよいのかを考え、そのときには自分に対してのクリティカルシンキングも忘れずにケアをしていくとよいでしょう。



みんながどうアセスメントしたか知りたい方はこちら
■第119回 誤嚥性肺炎で入院してきて、胸痛を訴える患者さん