【連載】事例でみる術後リハビリテーション こんなときどうする?

【術後リハ】術前オリエンテーションを行うメリットは?

執筆 黒岩澄志

昭和大学藤が丘病院 リハビリテーション室

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術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防など)


今回は術前オリエンテーションを行った結果、術後の離床がうまくいき、早期退院につながった事例を紹介します。


事例

 術前オリエンテーションを行った結果、スムーズに術後リハビリが開始できた患者さん

 80歳女性。上行結腸がんと診断され開腹にて結腸切除術予定の患者さん。術前ADL自立で家事などを行っていた。喫煙歴なし。術前呼吸機能検査において努力性肺活量90%、1秒率88%、BMI21.5。

 入院当日、手術に対して不安の様子がみられた。話を聞くと「はじめての手術で怖いです。近所に同じような手術をした人がいるけど傷が痛くて全然動けなかったみたいです。その人は1カ月以上も入院したけど、退院後あまり動けてないみたいです」とのことであった。

 術前オリエンテーション時にいつも行っている、術後の創部を保護しながら咳や深呼吸を行う方法、疼痛が生じにくい起き上がり方法に関して説明し練習を行った。患者さんから「手術後の状態についてイメージできました。ありがとうございました。」と少し不安が和らいだ様子であった。
 


 術後翌日、術前オリエンテーションを行ったとおりに咳や深呼吸を行い、離床も行った。疼痛の訴えも少なく「手術前に練習したから少し楽に動けました」と患者さんから発言あり。術後スムーズに離床できた影響もあり、呼吸器合併症や廃用症候群は生じず術後4日目には病棟内自立歩行。術後15日目に退院となった。患者さんから退院時に、「1カ月以上入院すると覚悟していたのに思っていたより早く退院できてうれしいです。ありがとうございました。」との言葉があった。

事例について考えてみよう!

術前オリエンテーションを行って、ここがよかった!

1 患者さんの不安から術後に問題となりそうなことを抽出できた
2 患者さんに術後の状態をイメージしてもらえた
3 早期離床につながった

 2013年に刊行されたがんのリハビリテーションガイドライン1)では、開胸・開腹術の術前からの介入に関する項目は2つあります。
 
 ①開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して、術前から呼吸リハビリテーションを行うと、行わない場合に比べて術後の呼吸器合併症が減るか?⇒開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して、術前から呼吸リハビリテーションを行うと、術後の呼吸器合併症が減るので勧められる。⇒推奨グレードB

 ②開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して、術前から呼吸リハビリテーションの指導を行うと、行わない場合に比べて術後の入院期間が減るか?⇒術後の入院期間の短縮のために、開胸・開腹術を施行される患者に術前から呼吸リハビリテーションの指導を行うことが勧められる。⇒推奨グレードB

 推奨グレードBは行うよう勧められる、とされています。このことからも、術前からオリエンテーションを行う重要性が示唆されます。

 具体的な術前オリエンテーションは、施設ごとの特徴がある(例:開腹手術が多い、高齢者が多いなど)ため、その施設ごとの特徴を加味しながら行います。分量は多くなくてよいので、術前オリエンテーション資料を作成するとよいでしょう(なお、患者さんは分量が多いと読むことに負担を感じることが多く、せっかくたくさん資料を作成しても患者さんが読まずに終わってしまう、ということが起きやすくなります)。術前オリエンテーション資料は多職種がかかわって作成するとよりよいものが作成できると思います。

成功へのヒント!

痛みを感じさせない工夫をする

 筆者自身、何回か術前オリエンテーション資料を作成してきましたが、筆者の経験上、特に術前オリエンテーションをしたほうがよいと思う事柄は、

①楽に咳を行う方法
②創部に疼痛が生じにくい起き上がりの方法

 この2点です。患者さんは術後は痛い思いをしたくないと思うでしょうし、痛い思いをせずに起き上がりが可能になり離床できれば自ずと呼吸器合併症のリスクは軽減します。疼痛の訴えが少なくなると患者さんの満足度にも影響します。

まとめ

 術前からどうやって起き上がりを行うとよいかシミュレーションを行うと、患者さん自身も術後の状態をイメージしやすくなり、結果として術後の離床がスムーズにいきやすくなります。手術予定で入院する患者さんに対しては、全ての患者さんに術前から(入院したその日から)術後を想定したオリエンテーションを行う、術前から術後を意識したうえで患者さんに接することが重要であるでしょう。

引用・参考文献

1)日本がんリハビリテーション研究会 編:がんのリハビリテーションベストプラクティス.第2章 消化器がん(食道,胃,肝臓・胆嚢,膵臓,大腸)・呼吸器がん・前立腺がん.金原出版,2015,p.27-46.

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