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ポリオの現状 ~インバウンドで高まる輸入感染症のリスクと予防~

編集 ナースプレス編集部

Webサイト「ナースプレス」編集部

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Resized np gakkai report

4月14日にトラストシティカンファレンス・丸の内にて、サノフィ株式会社によるメディアセミナーが開催されました。輸入感染症のリスクとポリオの現状について、川崎医科大学小児科学教授の中野貴司先生が、ポリオ撲滅の必然性とそれが困難な理由およびポリオワクチンの追加接種の重要性について、また青森県藤崎町のせきばクリニック院長である関場慶博先生が藤崎町が全国初、不活化ポリオワクチン就学前追加接種全額公費助成の実現に至ったこれまでの活動や経緯について講演しましされました。そのセミナーをレポートします。


インバウンドで高まる輸入感染症のリスク

最初にご講演された中野先生は、まず近年の新興・再興感染症の事例を紹介しました。私たちの記憶に新しいのは、2003年のSARS(重症急性呼吸症候群)ですが、このほかにも2014年のデング熱、2015年のジカ熱も話題になったと紹介しました。

また、日本では現在は麻疹は排除国として認定されていますが、最近は輸入による感染例が増えています。その推定感染地域としてはアジア地域が多く、実際最近の事例として、インドネシアとバリ島に滞在し、帰国後山形県内で発症した麻疹患者さんから派生した、複数の感染患者さんが確認されています。

インバウンドとは、日本を訪れる外国人のことですが、昨年は日本から海外に出る人よりも、海外から日本を訪れる人が
多くなり、2016年は約2,300万の外国人が入国し、今後も増加すると考えられています。こうした国際的な人の移動に伴い、「日本では発症があまり見られない、あるいは減少してきたものの、海外では流行している感染症が、今後は日本でも流行する可能性がある」と、中野先生は注意を呼びかけました。

世界でのポリオ発生状況について

 次に中野先生は世界のポリオ症例報告発生状況について、「世界ではポリオはゼロにな
っていない」と、世界地図で発生国を示しました(図1)。中でもパキスタンやアフガニスタン、ナイジェリアが常在国で、ウクライナやラオス、ミャンマーなどは、生ワクチンが変化したワクチン由来株ポリオウイルスによる感染が報告されています。そして、これらの国々から日本国内への入国者数は2015年現在、5万3,872人であり、ポリオウイルスが国内に輸入される可能性を示唆しました。

不活化ポリオワクチンの追加接種が必要

 現在、日本では、不活化ポリオワクチン接種は、生後3か月、4か月、5~11か月、12~23か月の合計4回が定期接種となっていますが、中野先生は「先進国の多くでは、4歳以上で追加接種が実施されているが、日本ではまだ追加接種が定期接種になっていない」とし、世界各国の接種スケジュールを表で示しました(図2)。
 

それによると、日本とスペインとスロベニアだけが、追加接種をしていませんが、そのスペインも2017年から就学前の追加接種を開始することになりました。

そして、追加接種が必要な理由として中野先生は、「不活化ポリオワクチンは、接種後に徐々に抗体価が減衰するため、抗体価の維持のために追加接種が必要です。不活化ワクチンは生ワクチンに比べ、免疫期間が短く、弱いために抗体価が下がるが、就学前の5回目追加接種を行うことで、高い抗体価を維持することができます」と説明しました。

最後に、「ワクチンは低年齢ほど接種率が高いので、就学前が追加接種の時期として非常にいい」と締めくくりました。

インドはポリオ多発国から根絶国に

 次のご講演は、青森県藤崎町の関場先生です。藤崎町は今春、自治体として全国に先駆け、就学前の小児に不活化ポリオワクチン追加接種への、全額公費助成を決定しました。この背景には、若いときからアフリカで医療活動を行い、現在も国際ロータリークラブのボランティア活動として、毎年インドでポリオワクチン投与活動に参加している関場先生の働きかけが大きかったといいます。

 関場先生は、まずはポリオの感染経路をイラスト(図3)で示し、「ポリオに感染すると四肢に麻痺を起こすことがあり、重篤な場合は呼吸筋の麻痺が起こり死亡する場合もある。治療法もなく、40歳以降になってポストポリオ症候群なども起こる」と説明しました。

 次に、国際ロータリークラブが参加している「ポリオ根絶プログラム」の、インドでの予防接種活動について紹介しました。インドはかつては世界で最もポリオが多く発症していましたが、国際ボランティア活動により、2011年1月に最後の患者が発生した後、2014年にポリオ根絶国になりました。関場先生は、このインドのポリオ根絶までの道のりや、国境でのポリオワクチン接種活動の継続(図4)、インドでの予防接種スケジュールを紹介しました。

追加接種の全額公費助成を決定した青森県藤崎町

 続いて関場先生は、日本のポリオワクチン接種の現状について話しました。現在、ポリオワクチンは4回までは定期接種ですが、5回目の追加接種は任意接種になっています。「任意というとお母さんたちは、やらなくてもいいと思ってしまう」と、関場先生は任意接種の問題点を指摘します。その他にも、任意接種では費用の負担もあるので、「接種費用について、公費助成があると接種率向上の一助となる」というのが、関場先生の考えです。

 また、関場先生は定期接種化されていないおたふくかぜワクチンとB型肝炎ワクチン(2012年当時)について、「2012年より藤崎町町長にかけ合った結果、公費助成を行うことになり、接種率が各段と上がった」と話しました。
 日本では2012年まで生ポリオワクチンでしたが、やっと不活化ポリオワクチンに切り替えられました。不活化ポリオワクチンは、接種後に徐々に抗体価が減衰するためそのため現在の4回接種では、抗体価が下がるので、抗体価の維持の為に追加接種が必要です。

最後に関場先生は、「日本にも海外からポリオウイルスが輸入されるリスクがある。ポリオが世界から根絶されるまで、ポリオの予防接種をしっかりと行い、日本の子どもたちを守っていくことが大切で、国がやらなければ、藤崎町のように自治体が行う必要がある。各自治体が動けば、国も重い腰を上げるのではないか」と訴えました。