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【連載】事例でみる術後リハビリテーション こんなときどうする?

【腹部に術創がある患者さんの術後リハ】患者さんの背景から必要なことを見極める

執筆 黒岩澄志

昭和大学藤が丘病院 リハビリテーション室

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 今回は直腸がんに伴いストマ造設術を行った患者さんについて解説いたします。症例は58歳男性、現在仕事をしており直腸がんと診断され人工肛門造設術を行う患者さんについて考えていきましょう。


事例
腹部に術創がある患者さん

 58歳男性。直腸がんと診断されハルトマン手術予定の患者さん。術前ADL自立、職業は自営業。喫煙歴なし。術前呼吸機能検査において努力性肺活量103%、1秒率95%、BMI22.5。
 術前オリエンテーションとして、術後の創部を保護しながら咳や深呼吸を行う方法、疼痛が生じにくい起き上がり方法に関して説明し練習を行った。

 術後翌日、術前オリエンテーションを行ったとおりに咳や深呼吸を行い、離床も行った。疼痛の訴えは認めるものの自制内、術後の経過は良好であった。術後スムーズに離床できた影響もあり呼吸器合併症や廃用症候群は生じず術後4日目には病棟内歩行は自立。

早期に病棟内ADLが獲得できた影響もあり、早期からストマ指導に重点を置くことができ、患者さん自身で手技やその他注意点を取得することが可能であった。術後15日目に退院となった。退院後は、可能な範囲から仕事復帰を行った。


事例について考えてみよう!

術後に実現しなければいけないことはコレ!

1 患者さん背景から術後に必要なことは、ストマ管理と指導、復職の実現
2 1を実現させるためには、呼吸器合併症の予防と早期のADL再獲得が必須*

 今回の患者さんは特にストマ管理と指導、復職がポイントになります。そのストマ管理と指導、復職に目を向けるためには呼吸器合併症予防と早期ADL再獲得が重要です。

 呼吸器合併症を来してしまったり早期離床が図れなかったりすると看護ケアとして「ストマ管理と指導」より「呼吸器合併症」「早期離床」に手がかかってしまいます。また、その影響で入院期間が長くなってしまうことが予測されます。58歳男性であるとまだまだ働き盛りであり家族の収入を支える立場であると考えられ、早期退院が図れないと患者さんの家族にも負担がかかってしまうことは想像に難くないでしょう。そうならないように、術後の患者さんには呼吸器合併症予防と早期離床のために術前から適切なケアを行うことが望ましいでしょう。

成功へのヒント

腹筋群をできるだけ収縮させないで行える方法を伝える

 今回の患者さんは腹部に術創がある患者さんです。術前オリエンテーションとしては、腹式呼吸・腹部に創部があると想定し、特に次のことに重点をおいて行うとよいでしょう。**
①腹部に枕やタオルをあてた状態での深呼吸や咳の練習

②早期離床のための起き上がり練習
 もちろん呼吸介助やハフィングの指導も行って構いません。腹式呼吸では実際に患者さん自身が胸部と腹部に手をあて、呼吸時の胸部と腹部の動きを感じながら行うとよいでしょう(図)。腹部に術創がある患者さんは腹筋群に力が入りにくいため、十分な咳ができないことが予測されます。そのため、術前から咳の指導を行っておくとよいでしょう。


 
 また、私達は普段起き上がる際には腹筋群を使用して起き上がることがほとんどです。術後腹部に術創があると腹筋群を収縮させたときに疼痛が増強してしまい、離床阻害因子となります。そのため、術前から腹部に負担のかからないよう、腹部をねじらないような起き上がり方法を指導しておくと、術後スムーズに離床できることが多いです。
 
 もし離床時疼痛の訴えが強い場合は、過介助で構いませんので腹部に負担をかけないように離床を行うとよいでしょう。一度鋭い痛みを経験すると患者さんは離床意欲を失います。

まとめ

 手術目的で入院される患者さんにはそれぞれ異なる背景があります。今回の事例ではストマ管理と指導、復職が特に重要です。これらケアを重点的に行うことができるよう、呼吸器合併症予防と早期離床を行うことができる環境を作っていけるとよいかと思います。


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