【連載】訪看ステーション「よつば」の公開カンファレンス

CASE15 乳癌オペ後の自宅でのリハビリ継続の難しさ

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

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困難事例15 放射線治療を挟んでリハビリの継続が途絶えてしまったケース


82歳独居の女性のBさん。1年以上前から胸のしこりに気がついていたが、家族に心配をかけたくないために、症状を隠し、受診せずに生活を続けていた。その結果、腫瘍はカリフラワー状の自壊創へと巨大化し、痛みを我慢できなくなったため2016年に受診、左腋窩に転移のある進行性の局所乳癌と診断された。
Bさんからは「もう歳だし死んでもかまわないと思っていた」と発言があり、術前は生きる意欲がなく無気力であった。しかし手術により巨大な腫瘍が除去されると、前向きな発言が聞かれるようになってきた。そこで自宅でのリハビリをサポートするためと、創の処置のため、訪問看護が開始となった。


カンファレンスの理由

退院直後は特別指示書が出たため、毎日看護師が訪問し、創の処置と左腕を動かすリハビリを継続できていた。Bさんは痛いながらもなんとか動かし、腕の可動域は160度程度まで拡大してきていた。しかしその後、放射線治療により1カ月程度の休みがあり、訪問看護がなくなった間、Bさんは全く自主的なリハビリをしなかったため、可動域は100度まで下がってしまった。
そこで再度リハビリを目的として訪問看護が再開になったが、前回とは異なり特別指示書はなく週1回の訪問しかできないため、どのようにかかわれば自主的なリハビリを継続できるようになるか、カンファレンスすることとなった。



さき:放射線治療が開始になる直前までは、看護師と一緒に痛いながらも頑張ってリハビリしていたのに、やっぱり1人になるとできなかったんですね。こんなことなら放射線治療中も細々とでもリハビリを継続するために訪問していればよかったですね。


りん:そうですね。ご本人からも最初は、放射線治療が始まっても不安だから訪問は継続してほしいと強い希望があったのですが、実際に治療が開始されたら、毎日の通院と治療の緊張で疲れてしまい、とても無理だったようです。
そこで、リハビリの必要性を再度お話しし、ご自分のペースでリハビリを継続していただくようにお伝えし、治療の間は、訪問をお休みとしました。でも、独居では声をかけてくれる人もいないし、自主トレーニングを継続する気力もなかったのかもしれませんね。


さき:全然上がらなくなってしまった腕をみて、先生が「リハビリは継続しないと!今が1番大切な時期なんですから」と喝を入れて下さったのですが、「頑張らなきゃ」とリハビリを張り切った次の日に痛みが強くなり、そこをかばうように前傾姿勢で生活していたら、ぎっくり腰になってしまって・・・。
もともと痛みに対してはとても敏感な方みたいです。


ほのか:なるほど。1人ではなかなかリハビリができないので、看護師に来てやってほしいと言われているのですが、実際に訪問して開始すると「痛くなるからもう終わりにしましょう」と早々に切り上げてしまわれるのは、そのためなのですね。
実際、約1カ月動かしていなかったことで、オペ後の皮膚のひきつれが強くなり、痛みと重苦しさも出てきています。さらには放射線治療後の影響か、チリチリする痛みも加わり、オペ直後よりもリハビリをすることに恐怖心が強くなっているようです。


りん:そうでしたか。リハビリは無理してやってしまうと逆効果ですからね。
ケアを始める前にはしっかりクリームを塗り込んで皮膚を柔らかくしてからゆっくり動かすこと、それからリンパマッサージをすることが大切です。
少しずつでよいので、毎日継続してくださいとお伝えしてきたつもりですが、焦りと不安と痛みのなかで恐怖心のほうが強くなってしまった感じですね。けれど今は、ケアの継続がとても大事な時期ですし、ご本人にも諦めてほしくないですね。
週に1回でも訪問したときに、無理のないかたちで実施し、痛みの少ないリハビリを実感してもらうことで、恐怖心を取り除いていけるとよいですね。


ほのか:そうですね。訪問したときに皮膚を柔らかくして、じっくリハビリをするだけでも20度近く腕の上がりは変わるので、それも実感してもらいたいと思います。


さき:本当ですね。ほかにできるアドバイスとしては、日常生活動作のなかで、自然に腕を上げることを意識してやってもらうなどですね。洗濯物を干すとか、頭のカーラーを巻くとかなどです。


りん:それはぜひ伝えて促していってください。オペ直後のBさんには、その意識はあって、自主的に腕を上げる動作ができていたようなのです。それを思い出してもらうのもいいですね。


ほのか:固くなった皮膚を柔らかくすることと、恐怖で固くなった心も同時にほぐしていくことが目標ですね!わかりました。焦らずに取り組んでいきたいと思います!


こうしてケアの方向性が決まり、週1回の訪問が再開された。
まだ先は見えていないが、よつばスタッフの皆で同じ方向を向き、Bさんに向けてケアを続行していくこととなった。


次回は、モルヒネへの恐怖心から疼痛コントロールが図れないケースを紹介します。



ステーション「よつば」スタッフプロフィール

りん(所長)
訪問8年目(看護歴32年救急他)在宅ケアでの創意工夫の才能はピカイチ。勉強家で人情が厚く面倒見がよい。スーパーポジティブ思考の持ち主。
さき
訪問6年目(看護歴28年オペ室他)
神社仏閣巡りが趣味の歴女。またDIYも得意。面白き事もなき世をおもしろくが座右の銘。夢への妄想パワーは半端なし。
たーちん
訪問11年目(看護歴33年):スーパーグランマナースで超自由人。しかし可愛い笑顔で憎めない。利用者さんの為ならエンヤコラ。テニスから茶道までサラリとこなす我がステーションの親分的存在。
ほのか
訪問1年8カ月(看護歴15年小児科他)老若男女に好かれる天性の明るさの持ち主。癒し系キャラ。現在、スポーツクラブのZUMBA(ダンス)にハマっている。
かな(主任)
訪問5年目(看護歴16年。NICU他)思い込んだら一直線。やや天然ボケあり。訪問看護と猫と執筆活動(この原稿含)と音楽活動をこよなく愛している二児の母。