お気に入りに登録

【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第9回 CKD患者さんへの食事指導を円滑に行なうための工夫(フードモデルなど)

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

Ckd%e9%80%8f%e6%9e%90 icon

わかっていてもできない人が多い食事療法

 CKDにおいて食事療法は核といっても過言ではありません。しかし一方で、食事とは生活の中での大きな楽しみのひとつでもあります。この「食」は非常に個別性が強く、食事に関する価値観、各家庭や生まれ育った環境、地域性によりさまざまであるため、「食」を変えることは非常に困難です。また、多くのCKD患者さんは、疾患に関する知識や食事療法の必要性への理解が不足し、「食」を変えることができないという方は少なく、“わかってはいるけどできない” 患者さんがほとんどのため、さらに困難を極めます。

 まずは、この「食」という習慣を変えることは簡単なことではないということを、私たち医療者は理解しておかなければなりません。そして、その習慣が変えられない患者さんを「自己管理ができない人」という疾患や治療主体の考えで決めつけるのではなく、「さまざまな環境が影響し、食事の管理がうまくいかない事情を持つ人」という“人”を主体とした視点で患者さんを捉えます。そして、この人がうまくいかない事情は何かを探っていきます。

知識がないためうまく行かない場合のアプローチ

 まず、知識がない場合は、正しい情報を適切な時期に提供します。具体的に何をどのようにどれくらい行うべきか、またその理由はなぜか、そうすることでどのような状態が期待できるか等、患者さんの理解度、ステージに合わせながら行っていきます。

 そこで、患者さんに具体的に指導できるツールのひとつとして、『フードモデル』があります。フードモデルとは栄養指導に活用される実物大の三次元(立体)の食品模型のことをいいます。 二次元(印刷物・画面)の媒体と違い、具体的な量を示し、『さわる』ことができます。 このことにより、相互の量的な把握や共有がしやすく、指導者にとっても、患者さんにとっても、わかりやすい栄養指導媒体です。

 栄養指導の際、「そんなに食べていないのに」「きちんと食べているのに」などの言葉をよく耳にします。これは、患者さん本人の認識と実際の食事量や内容にズレが生じていることが原因となっているため、このような認識のズレを修正するためにも、このフードモデルを使い、再確認することも栄養指導には有用な手段です。

技術がないためにうまくいかない場合のアプローチ

 次に、技術がないために食事の管理がうまくいかない場合、例えば調理をしたことがない方に、いくら調味料や材料の測り方、減塩レシピなどを説明しても「そんなの自分にはできない」と思われてしまえば、改善行動には繋がりません。そのような場合は、市販品を紹介するのもひとつの手段です。

 現在、さまざまな会社から低たんぱく加工されたお米や乾麺のうどん、パスタ、ラーメンなどが市販されています。また調味料も減塩醤油や、減塩や低たんぱくに調整された出汁割しょうゆ、CKDステージに合わせた、カレーやパスタソースなどのレトルト食品も豊富に発売されています。さらに最近では宅配弁当も、たんぱく質・塩分・水分・カリウムを、医師の指示書を元に個別対応する会社も多くなっています。

 このように患者さん自身が、「これならできそう」と思える指導が重要となります。

意欲・きっかけがないためうまくいかない

 最後に、意欲・きっかけがないために食事の管理がうまくいかない場合は、行動変容ができるようなかかわりが必要です。そのためには、患者さん自らが行動を変えようと思い“それならできそう”と思えることを一緒に考え、実施できるよう支えるという姿勢が大切です。

 では、行動変容支援のポイントを具体的にお話します。まずは、現在どんな小さなことでも、努力していること・できていることを承認・称賛します。もしデータ的に、何一つ承認できる材料がなかったなら、通院できていること・食事指導を受けようとしていることを承認・称賛してください。これも充分、自己管理ができている行動です。患者さん自身が「できている自分」を再認識できるような働きかけをします。そして、なぜ通院できているのか・なぜ食事指導を受けようとしているのかを聴くことで、患者さん自身が「今のままの状態を変えようとしている」ということに気づいてもらいます。

 次に、現在困っていること・行動変容を妨げている原因や状況を話してもらい、それらを否定せず共感しながら、患者さんが抱いている不安を言葉で表出できるよう促します。このように、本人の持っている情報を本人に整理してもらいながら、現在、患者さんのおかれている状況や、今後起こりうるリスクについて、検査データなどを用い、科学的事実を伝え、今が行動変容のチャンスであることに気づいてもらいます。

 その際、一方的に沢山の情報提供を行うと逆に反発心が高まりますので、データの見方など科学的事実を伝え、残念にも合併症に至った例や成功例を紹介し、今がチャンスであることに気づいてもらいます。その後、最初の一歩が踏み出しやすくなるように、自分で短期目標を決めてもらいます。私はいつも患者さんに「あなたの1番、譲れないものは何ですか?」と問います。すると「3時のおやつ」「晩酌」「漬け物」などの答えが返ってきます。その1番を変えることなく続けていくために、自身で何かできることはないかを話し合います。患者さんの価値観を尊重しながら、患者さん自身が自分にあった方法を選択し、行動変容に繋げられるよう支援していく姿勢は栄養指導には必要不可欠です。


【引用参考文献】
足達 淑子:行動変容をサポートする保健指導バイタルポイント.医歯薬出版,2007.
松下 明:行動変容のステージモデル 無関心期・関心期(その1).週刊医学界新聞 2010;第2886号.